慈濟傳播人文志業基金會
微笑みを待って
金さんは心の苦しみを言葉にできず
だんだんと寡黙になっていった
ボランティアが環境保全に誘ううち
笑顔がこぼれるようになった  
 
慈済の烏日連絡拠点で粽のいい匂いが漂う季節になりました。毎年端午の節句の前にボランティアは菜食の粽を作って、地域の警察とケア対象家庭に贈ります。粽を包む葉っぱを洗っていた金さんも、初めて菜食の粽を作ります。楽しくて、たまには自分から人に話しかけることもあります。
 
金さんはあまりしゃべりません。いつも眉間にしわを寄せ、目の周りにはくまがあります。でも、笑うと、顔のしわが自然になくなり、明るくきれいに見えます。実は慈済の団体に入る前は、少しも笑わない人でした。
 
 

家族を心配して痩せていった

 
二〇一六年一月、慈済の調査チームは金さんの苦境を知り、生活費を援助する以外に、毎月自宅を訪問ケアしました。「こんにちは。私たちは慈済ボランティアです。ちょっとお邪魔します。お元気ですか」。金さんの家に入った途端、線香の濃い煙が鼻につんと来て、苦しくなりました。神棚に渦巻線香が置いてあるのに、窓を閉め切っていて、狭いリビングルームは、風通しが悪かったのです。
 
「神様に拝むのはいいことですが、窓を開けましょう。そうしないと、線香の煙は肺や呼吸器の害になりますから」。ボランティアの廖さんは説明したが、金さんは分かっているのかどうか、ぼんやりしていました。
 
幸いに金さんの次男の澤さんが家にいて、「お母さんはいろいろな悩みがあるのです」と説明してくれました。金さんのご主人が長期にわたって肺結核の治療のため入院しており、病状が良くならないのだそうです。金さんは家賃を払えないことや、子供のことを心配するようになりました。どうしたらよいか考えあぐね、いつも神様に線香を上げて、夫が元気に戻るように、家族が無事であるようにお祈りしていたのです。
 
治療の甲斐なく、ご主人が二〇一六年に亡くなってから、金さんは不眠症になり、昼間は一日中ぼーっとして元気がなくなってしまいました。お正月に脳膜髄炎に感染し、睡眠不足の上食欲もなくなって体調を悪くし、急に痩せてしまいました。
 
ボランティアたちは金さんの様子を知ると、「資源回収ステーションにいらっしゃい。日向ぼっこしたり、人と話したり、ビニール袋を分類する作業を手伝ってください」「気分が良くなると体も健康になりますよ」と彼女を励ましました。
 

仲間がいるから楽しい

 
普段、金さんの生活は家にいるほかは、市場に買い物に行くだけで、どうやって人と付き合えばいいのか、全く分かりませんでした。ある日、娘夫婦が実家に戻って来た時、金さんは娘に言いました。「師姊(女性の慈済ボランティアの呼称)に資源回収に誘われたけれど、どこにあるのか分からないの」。娘夫婦は金さんを慈済九徳資源回収ステーションに連れて行きました。金さんは皆に挨拶し、一緒に資源回収の分類をしました。仏号を唱えるバックミュージックを聴きながら両手を動かしていると、心の中に少しの悩みもなくなったことを感じたそうです。
 
初めて資源回収をしたその日、疲れたけれど気分爽快で、夜は安眠できました。それ以来、彼女は毎日熱心に資源回収ステーションに行き、笑顔を見せるようになりました。資源回収ステーションは彼女の唯一の活動の場、大好きな場所になりました。
 
今年の五月の中旬、慈済の烏日連絡拠点で灌仏会を行った時、ボランティアの張秀金さんが金さんを食事の準備に誘いました。ボランティアたちはお互いに協力し合って、たくさんの食事を作ります。金さんはその温かい雰囲気が大好きなのだそうです。
 
金さんは息子二人、娘一人を育てました。長男の志さんは幼い時にお父さんの暴力を受けて、重度の精神障害者になりました。自己管理はできるけれど、外で働く力がありません。暴力を受けたせいで心を深く傷つけられ、家に閉じこもるようになりました。ケアチームのボランティアは、毎月金さんを訪問しますが、志さんに会ったことはありません。金さんは長男の悲しいできごとを話しません。ボランティアたちは、リビングルームで金さんと話すことによって、部屋の中にいる志さんにも、寄り添っているのだと感じてもらいたいと思っています。
 
五月の下旬、慈済ボランティアは菜食の粽を持って金さんの家を訪れました。ちょっと前のような濃い煙だらけの家ではなく、風通しが良く、さわやかな家に変わっていました。皆が家族のように楽しく話し合っていた時、ボランティアの劉さんが金さんに聞きました。「最近よく眠れますか」。金さんは、「はい。資源回収が終わって帰ると、疲れているからすぐに寝ます。もう余計なことを心配しなくなりました」と明るく笑って話してくれました。
 
「お母さんはとても変わりました。今ではよく寝て、よく食べます」。次男の澤さんは、嬉しそうにボランティアに言いました。お母さんが普通の人と同じような生活に戻ったことを、澤さんは不思議なことだと思っています。
 
「金さん。これは昨日あなたも一緒に包んた菜食の粽ですよ。新鮮なうちに食べてみてください」。金さんは粽を受け取って、「ありがとう」と何回も言いました。昔ながらの粽が、端午の節句の喜びだけではなく、金さんに温かい気持ちまで伝えているような気がしました。菜食の粽を食べながら、金さんも慈済ボランティアの温かい人情を味わったことでしょう。
(慈済月刊六〇八期より)
NO.251