慈濟傳播人文志業基金會
ボランティア仲間が 健康を守る
各地域に点在する慈済の思いやり拠点に敷居はない。
高齢者が興味のある場所の扉を叩き、
活動に参加しさえすれば、たくさんの喜びを得られる。
心が楽しければ、身体も健康になる!
 
「大股で前に進み、ふり返らない。勇敢に前進し、自分の自由を追い求める。何もかも見抜いても歌い足りない。何もかも見尽くしても踊り足りない。見抜くだけでは足りない、足りない、足りない……」
「慈済宜昌地区思いやり拠点」のドアを開ける前から、中から軽快なエレキギターの旋律が聞こえてきた。中国の有名なバンド、鳳凰伝奇の「自由自在」という曲である。入り口に立った私は思わず携帯電話を取り出して住所を確認した。もしかして場所を間違えたのだろうか、それとも時間を間違えたのか、と思ったのだ。
 
●「慈済宜昌地区思いやり拠点」で真剣に活動に参加する高齢者たち。自らが教室参加者を世話するスタッフとなって、老後の生活を互いに労わり合っている。
 
中に入ってみると、慈済ボランティアの沈秀華を先頭に、数十人の七十代、八十代のおじいさん、おばあさんが音楽に合わせて身体を動かしていた。身体のあまり自由でない高齢者は、そばで別のボランティアに付き添われ、リズムに合わせて拍子を取っていた。誰もが生き生きとし、活力にあふれており、私が抱いていたデイケアセンターや高齢者教室に対する印象を覆した。
 

共同飲食から

地域の思いやり拠点へ 

花蓮県吉安郷の「慈済宜昌地区思いやり拠点」は、慈済基金会慈善志業発展処(以下、慈発処と略称する)の花蓮県における二番目の正式な地区拠点である。慈済ボランティアと地域ボランティアを結びつけ、六十五歳以上の高齢者向けに毎週一回の高齢者教室を開催している。毎週火曜日の午前中はとくににぎやかになる。誘い合って来る高齢者もいれば、家族に車で送られてくる人もいる。
 
地区思いやり拠点のはじまりは、慈発処の仲間が家庭訪問を行った際、花蓮の多くの集落で一人で暮らすお年寄りが、一日中家の中にいて、食べる物といえば三食とも缶詰やインスタントラーメンであることに気づき、「高齢者共同飲食」の推進を開始したことにある。慈済基金会が食事代を補助し、地元の人々やボランティアに昼食の準備に協力してもらった。
 
高齢者たちの外出意欲が高まると、慈発処は高齢者に食事前に身体を動かしてもらおうと、健康促進教室も始めるようになった。
 
こうした基礎の下、徐々に現在の社区思いやり拠点が形成されていった。拠点では健康体操やグループ活動、共同飲食などのほか、事故の発生を防ぐため、思いやりネットワークを結びつけ、定期的に高齢者の生活状況を知るため訪問したり、高齢者教室を欠席した人がいれば家に電話をかけたりして、一人一人に気を配る。
 
「私たちが行っているのは予防的な慈善活動です。第一に身体機能が低下するのを予防し、次に認知症を予防します。台湾の六十五歳以上の高齢者は三百万人近くに達し、そのうちの四分の一の人に認知症の傾向が見られます。四分の三の人は健康、亜健康(病気と健康の中間)の状態にあり、慢性疾患の可能性があったとしても、まだ自立できています。こうした高齢者が慈済地区思いやり拠点の優先的なサービス対象者で、よく練られたカリキュラムに参加して、老化を予防します」と慈発処主任の呂芳川は語る。
 
●年に一度の体力測定で、受講者たちがボランティアのサポートの下で握力と腕や手の柔軟度を測定する。高齢者が日常生活をスムーズに送り、転んで怪我をしたり、寝たきりになったりするのを減らすには、充分な体力が必要である。
 
冒頭の「自由自在」という歌は、「健康促進教室」の健康リズム体操だ。これ以外にも全身健康体操、伝統養生体操など、各拠点のボランティアが参加者の好みに合わせて選択する。
 
慈発処は慈済大学、慈済科技大学、慈済医療志業と協力し、専門講師を招いてカリキュラムを作成し、三年の時間をかけて修正を繰り返し、健康促進、高齢者教室、コミュニケーション、良能の発揮という「四大核心」教室を作り上げた、と呂芳川は言う。
 
健康促進分野では、二十九種類の健康体操ビデオを整理し、高齢者教室では書道教室、素朴芸術、記憶ゲームなど、九タイプ総計九十八種類の活動を用意した。教室は現在も増加中である。
 
毎年、地区思いやり拠点では、高齢者向けに知能健康促進測定、体力測定、視力検査、聴力検査という四つの測定を行っている。
 
慈発処の地区思いやり拠点は、花蓮にはすでに四十カ所が存在する。各拠点の成果が高く、また政府が長期ケア計画を推進していることもあり、多くの郷や鎮から提携の申し入れがある。今年三月より、台湾全国各地に続々と拠点が新設されている。
 
さらに現在、二百カ所以上の慈済環境保全ステーションとも提携している。呂芳川は、環境保全ボランティアが地球を守るだけでなく、同時に自身の健康にも気を遣い、各地区の高齢者たちが近隣でサービスを受けられるようになってほしいと語る。
 

学びの興味を刺激する

 
しかし、たくさんの資料を準備するだけでは拠点のスムーズな運営には至らない。宜昌地区を例に取ると、地区発展協会理事長の黄志源のサポートと協力のほか、多くのボランティアにも協力を要請した。中でもとりわけ重要な役割を演じたのが、ステーション長の沈秀華と羅明珠だった。
 
活動のたびに羅明珠は黙々と厨房で数人の仲間と六、七十人分の昼食を準備した。一方、沈秀華はマイクを持って高齢者を楽しませ、活動の雰囲気を盛り上げた。まさに一内一外、一静一動であった。
 
この日の高齢者教室は「環境保全クリエイティブアート」。講師の陳美正が赤い紙切れをつめた袋を見せる。それは慈済のストラップ製作で出る切れ端で、形は不規則であり、以前は資源回収に回すほかなかった。しかし先生の器用な手にかかると、あっという間に画用紙の上の真っ赤な花に変わった。先生の号令で、皆が一斉に手元の紙切れ、カラーペンを利用して心の中の風景を表現し始めた。
 
「さぁさぁ、お義母さん、何を描いたんですか?」。沈秀華がマイクを傍の参加者に向けた。彼女の姑の陳菜おばあさんで、得意気に画用紙を持ち上げた。上のほうに真っ赤な花が二本、カラーペンで萼や明るい雲も描かれていた。
 
沈秀華は参加者を指名し、皆が交代で自分の作品を紹介した。風景を表現した人もいれば、動物の絵や抽象画を描いた人もおり、中には自画像だと言う人もいて、その創造力の豊かさは決して若者に負けない。
 
隅の席に座った鐘欽栄は、妻の劉意貞にサポートされながら、ゆっくりゆっくりと自分の心の中の花畑を表現していった。交通事故で脳を損傷し、手足や身体のさまざまな場所の反応が一般人より遅い彼にとって、この教室はやや難度の高いものだった。
 
「ここに来るのは楽しいです。私はこんな身体ですが、それでも私を避ける人は誰もいませんから。いつも教室ではたくさんのことを学んでいます」。沈秀華は鐘欽栄が以前話した言葉を紹介する。そしてこれこそが彼女が拠点でボランティアをする理由である。
 
 

●誤字探しの活動では、いち早く答えようと皆が瞳を凝らしてモニターを見つめる。「人」と「入」という字のような難しい問題でも、おばあさんは正解し、ボランティアたちは口々に賞賛の声を上げる。あちこちから笑い声が絶えず、次はもっと難しい問題を出そうと約束する。

 

地元で健康に老後を送る

 
一年が過ぎ、お互いの絆が強まってくると、もともと参加者であった高齢者の中には、スタッフとして教室のために働きたいと願う人も出てきた。「高齢者はケアを受ける人だとは限らない」と呂芳川は気づかされた。
 
「宜昌村の高齢者は地区発展協会の呼びかけで、隔週で地域を清潔に保つため街の清掃を行っており、将来は学生も一緒に参加してもらう計画です。また、地区が細長い形をしているので、佳民村の高齢者は、『幸せ共同飲食』の後、毎回ルートを分けて、外出できない一人暮らしの高齢者へ弁当を届けるなど、ボランティアとともに近所の人々のお世話をしています」。こう呂芳川はつけ加えた。
 
お互いに助け合う中で、高齢者たちは自身の価値と尊厳を見出し、近所の人々とともによりよい地区を作り上げようとしている。家で黙々と老後を送るのではなく、老いても安心できる場所があり、老いても能力を発揮できる環境を作り上げるのだ。これはまた、慈済地区思いやり拠点が広めたい概念でもある。老後の人生は人生の下り坂などでは決してない。若い頃と同じように、輝かしい人生の光景を描き出すことができるのだ。
NO.251