慈濟傳播人文志業基金會
長期介護のネットワークをつなぎ 豊かな老後生活を
台湾の八割以上の高齢者は、家族と一緒に老後を過ごしたいと思っている。しかし、少子高齢化が進むなか、介護の問題は核家族が直面する試練となっている。
 
夜が更けてきた。義母の「私は苦しいのよ……。死なせて……」という悲鳴を聞くと、月は切なくて眠れない。義母の横で寝ている義父も、毎夜の叫び声に堪えられなくなって怒鳴ったが、うめき声は一向に小さくならず、義母はかえって一層かん高い声を上げるのだった。月は心の中で嘆息をもらすばかりで何もできなかった。
 
義母は十年以上前にパーキンソン病を発症した。最初は食べ物を呑み込むのが困難なだけで、日常生活に支障はなかった。息子達は母親を交代で介護することを決め、一カ月半ごとに義母が月の家に泊まりに来ている。
 
義母が美味しいものが好きなことを知っていた月は、義母が喜びそうなおかずを作ってあげるが、義母は「なぜ自分の食べ物が皆と違うのか」と言って怒った。
 
トイレットペーパーの減りが早く、トイレのゴミ箱に大量の濡れたトイレットペーパーを発見したことから、義母が失禁することが分かった。また、トイレに間に合わずに下着やシーツを汚すことがしばしばあったため、月は成人用の紙オムツを用意したが、義母に拒否された。そして、入浴のことについてもよく意見が合わなかった。
 
義母の身体は日増しに衰え、妄想するようになった。自分のお金を家族が盗んだと疑い、それを取り戻そうと家中の引き出しや息子の財布をひっくり返し、お金を見つけては自分のものだと言い張った。言い争っても無駄なので、皆、自分の財布を隠すしか方法がなかった。
 
月は、義母の介護を義理の姉妹と交代で担い、息抜きができることはラッキーだと思ってはいるものの、自分の当番が回ってくると大きなストレスを感じていた。
 

我が家のお年寄りと

よそのお年寄り

 
厚生労働省の統計によると、台湾の老年化指数は百を突破した。高齢者の人口が初めて年少者の人口を上回ったのである。老年化指数が百を突破した自治体は、二〇一一年では五つだったが、今は十五の県と市に急増した。中でも嘉義県と雲林県が最も高くて深刻であった。
 
●大林慈済病院長期介護センターの訪問ヘルパーが、転んで骨折した葉おばあさんの世話を行う。(撮影・顏霖沼)
 
それは台湾社会の高齢化がますます進んでいることを意味している。老化で生活能力を失った人々の介護の問題は、各家庭が直面しなければならない課題になっている。福利衛生署は、台湾における要介護人口のうち六十五歳以上の高齢者が七十六%を占めている、と推測している。
 
現在台湾の状況では、平均して五・六人が一人の高齢者の面倒を見ている。中華民国家庭介護者ケア総会の調査によると、六割の家庭は自らの力で家族を介護し、三割の家庭は外国人労働者を雇い、わずか一割の家庭が政府の長期介護福祉を利用していることが分かった。
 
親の介護のために仕事を辞める子世代もあるが、介護と経済面の二重のストレスに息をつくこともできない。そのうえ、家庭に対する道徳観が拍車をかける。そのような見えないストレスが積み重なっていくと心身の健康が蝕まれてゆく。
 
そこで、政府は新たに長期介護政策を推進し、各地域で統合された介護サービス体系を打ち出した。それは、高齢者が住み慣れたところで老後を安心して暮らし、介護者にも息抜きができるように、長期介護サービスを郷鎮や町に普及させることであった。
 
長期介護の繋がりをずっと保っていくためには、医療と地域と家庭が十分に連携されなければならない。花蓮を例にとると、人口の構成は高齢者が多く、生活の利便性も都会に劣るため、慈済慈善志業発展処は地域社会と共にこの問題に取り組み、地域のケア拠点を設けた。
 
 
●台湾高齢化社会の特質
 
  • 長 寿
2015年、平均寿命が男性77‧01歳、女性83‧6歳に更新された。
  • 高齢者の増加
高齢者が子どもより多い。2018年には高齢者が総人口の14%を越え、高齢化社会に突入する。
  • 速い変化
2026年には高齢者の人口が20%を超え、欧米より早く超高齢化社会に突入する。
  • 高学歴
高齢者の学歴は高く、自立性も高い。
  • 少子化
少子化で扶養する比率が悪化する。2016年にはすでに約5・6人の子世代が1人の高齢者を扶養している。扶養する人の数値は日本、マレーシア、韓国、シンガポールよりも低くなっている。
 
要介護1程度の高齢者に、近くの地域の合同センターや慈済のリサイクルセンターに来てもらう。そこで、医者と看護師が医療に当たり、病気を早期に発見したり、リハビリのニーズに合わせたスケジュールを組む。高齢者に身体能力を維持・向上させる体操を教えたり、また、脳の働きを促進する「楽智クラス」も開設している。
 
この計画は四年前から実行に移され、花蓮からスタートして徐々に台湾全島に広がっている。おかげで、高齢者は家にこもって「テレビに縛りづけ」という光景がなくなった。今では、高齢者は誰かの付き添いで運動したり、手工芸をしたりして、老化防止に効果を上げている。
 
老化を遅らせたり、寝たきりになる時間を減らすのが、高齢者ケアの最も重要な目標である。台中慈済病院副院長の荘淑婷は、「専門スタッフが適時に支援するのは、高齢者の健康に有益であり、介護している家族も息抜きができる」と話す。「お年寄りを介護施設に預けるのは倫理に反する行為だと思われがちですが、現在の高齢者施設での介護方式は昔と違うのです」と指摘した。
 
台中慈済看護ホームでは、高齢者一人一人のニーズや状況に応じて、介護の方法を調整し、専門的な研修を受けた看護師や介護士が看護・介護に当たっている。高齢者の世話を全てやってあげるのではなく、付き添いながら高齢者に生活の自立能力を身に着けさせていくのである。たとえば、食事を自分で食べることや、オムツを使わないようにすることを最終的な目標としている。
 
高齢者の介護は、すでに核家族にとっての問題だけではない。医療機関と地域が共同で介護ネットワークを構築することで、高齢者が安心して老後の生活を送り、介護をする家族もストレスを軽減でき、家族として一緒に過ごせることを期待している。
(慈済月刊六一〇期より)
NO.251