慈濟傳播人文志業基金會
佳民小学校で  育まれる集落の未来
児童数わずか五十名ほどの佳民小学校は、
集落の文化を伝承する重責を担うことになった。
祖先の霊に見守られた学校で未来の希望が織られていく。
 
「ここは原住民の学校です。すべての児童は原住民で、九十パーセントが佳民集落に住むタロコ族なのです」と花蓮県佳民小学校の游彦中校長先生が話してくれた。
 
普通は原住民の子どもを各学校に振り分けて就学させるのだが、一九三四年に創立したこの佳民小学校は、もともと原住民の子どものために誕生したのである。
 
●再建前の佳民小学校。老朽化した教室はよく雨漏りがした。
 
慈済が支援して建設する建物は洗い出しの素朴なグレーを基調としているが、ここでは黄建興建築士が地域の文化を考慮して、タロコ族がよく使う黒、赤、オフホワイトの三色に近い石を加えている。多少手間がかかっても、染色加工が施された石ではなく、環境汚染の心配がない自然建材を使用している。
 
●吹抜けの廊下は、雨の日には運動場として使用できる。天井に透かし彫りでほどこされた星、月、太陽の図案は、大自然と共に生きる原住民の哲学の理念を象徴する。
 
学校で一番高い建造物は「祖霊の眼」というトーテムで、モザイクで仕上げた。花蓮県原住民新部落発展協会の古雲珍理事長は、「祖先の霊の目は年配のタロコ族にとって、まるで祖先に見守られているように重要な意味があります」と説明した。
 

伝統工芸の機織りを

授業に取り入れる

 
小学校では普通水曜日の午後は授業がない。しかし、佳民小学校の女子児童は、午後一時半から三時半の間に、もう一つの勉強である伝統工芸の機織を習う。
 
昔、タロコ族の母親は、娘が嫁に行くときは「地機」(伝統的な脚のない原住民の織機)を使って布団を織り、嫁入り道具として持たせた。近年その伝統工芸の伝承は次第に途絶え、とりわけ佳民村に住む婦女子は、機織りがほとんどできなくなってしまった。
 
三年生から六年生の女子児童に機織りを指導するのは、昨年佳民小学校を定年退職した陳美恵さんである。うまくできない子は「おばちゃん!」と声をかけて助けを求めていた。
 
●5年生の林筱涵が機織りに真剣に取り組んでいる。上下の糸を入り交ぜて織ると、きれいなトーテム模様ができあがる。
 
取材の日は、ちょうど年に一度のコンクールに参加するため、グループに分かれて練習をしている最中だった。整経(布織の準備工程)から綁綜銧線(機織りで一番大切な綜銧という縦糸を交互に上げ下げする道具で、横糸を編むための重要な働きをする)をしっかりと結び、決められた長さの帯を織りあげる。コンクールでは、すべての作業を四時間以内に終えなければならない。
 
昨年は、十二のタロコ族集落の中で、陳美恵さんが指導した子どもたちが、金賞、銅賞、佳作の好成績に輝いた。また今年は、花蓮県秀林郷が主催した感謝祭の機織りコンテストでも金賞、銀賞、佳作と良い成績を獲得した。そのような優れた伝統工芸の指導者が漢民族の先生であることに審査員は驚嘆した。
 
「科学技術のない昔、原住民の祖先はすべてのトーテムと編み方を脳に刻みこんで覚えていました。実は私の方が深く感心しているのです」と陳美恵さんは謙虚に述べた。「二十年以上もの間中断していたコンクールを復活させた役所にも感謝します。そのおかげで、子どもたちは自らの文化を理解し、基礎を固めることができました。卒業してからももし興味があれば、さらに深い技法の研究もできるでしょう」
 
●機織り機に糸を結びつけ、トーテム模様を織り上げる技を習得する。コンクールへの参加で、自然と集落の文化や伝統を理解するようになった。
 
陳美恵さんは、子どもが織ったタロコ族のトーテムの鉢巻を手に、「一見簡単そうな一本の機織りの中でも、メリヤス編み、ガーター編み、斜紋編み、インターシャ編みなどの技があります。子どもたちが織った帯を加工して、様々なトーテムのブレスレットに作り直したものもあります。佳民小学校ではそれを外国から参観にこられた来賓に記念品として贈呈しています。また、新入生は入学の時に、織帯に刺繍のある佳民小学校のオリジナルバッグがもらえますよ」と丁寧に説明してくれた。
 

慈済大学の学生が

勉強に付添い

地域で補習を行う

 
女子児童が機織りコンクールの練習に励む一方、図書館も活気に満ちていた。慈済大学人類発展学部の謝頴慧先生が学生たちを引率し、マンツーマンで子どもたちの宿題や勉強を指導している。
 
毎週水曜日午後に行われる学習指導の企画は、すでに四年目に入った。また、花蓮県原住民新部落発展協会では、地域で夜間の補習も行っている。
 
●花蓮県原住民新部落発展協会の林秀瑛幹事長は、自宅の空き部屋を子どもたちのために開放し、宿題や勉強の指導拠点に変身させた。
 
佳民小学校の游彦中校長は、「佳民小学校の子どもの半数は貧困家庭です。担任の先生は、時々親の役割をも担わなければなりません。時には親の代わりに病気の子どもを医者へ連れていくこともありますよ」
 
昨年、佳民小学校は「総統教育賞」に余欣茹を推薦した。彼女の成績はクラスでトップから三番目だったが、今年秀林郷が主催した作文コンクールでは金賞に輝いた。さらに、バドミントンチームのキャプテンと打楽器チームの副キャプテンも務める。
 
「慈済新芽奨学金」を受けている余欣茹の兄と姉は慈済科技大学の看護学部に在学している。自分の将来について、好きなスポーツを選ぶか、あるいは進学するか、それとも兄や姉のように看護師になるのか、決心がつかないようだ。「私はまだ小さいので、そこまで考えていません」と、彼女はにっこり笑って言った。
 
「子どもたちの将来に扉を開いてあげれば、もしかするとチャンスをつかむことができるかもしれませんよ」。まさに游彦中校長の言ったとおりだ。さまざまな授業や活動を子どもに体験させ、その中から自分に合った技能や趣味を見つけだす。そして、それをなしとげようと力を尽くしていけば、たとえ不毛の地でも花が咲きほこるだろう。
(慈済月刊六一三期より)
 
●佳民小学校の全員が新しい校庭で記念撮影。児童数はわずか50名だが、先生たちは学校が児童にとって第二の家であるようにと願い、子どもたちの成長を愛情深く見守る。

 

NO.254