慈濟傳播人文志業基金會
執刀の後に省みること
鄭立福医師の著書『刀下春秋(メスを手にした歳月)』では
複雑で困難な様々な治療過程が見られる
鄭医師と患者との間の交流や医師としての用心なども
 
台湾では美容形成外科病院が乱立するためか、整形外科に対して一般の人が持つ印象といえば、隆鼻術、豊胸、目袋や皺の除去といった、顔などの美容整形を連想するだろう。しかしそのような美容整形は整形医学全体から見れば、ほんの小さな一部分に過ぎない。
 
整形医学では先天性奇形、腫瘍切除と復元、火傷の植皮、顔面外傷、口蓋破裂(みつくち)の復元、皮弁復元(血流のある皮下組織や深部組織の移植方法)、性転換手術などは専門の整形外科医による治療が必要である。花蓮慈済病院では。人々に整形外科について正しく認識してもらうため、二○一七年に「整形・復元外科」と名を改めた。
 
花蓮慈済病院に二十年以上も勤務している鄭立福医師は、整形と復元の担当医師として無数の患者を診ているだけでなく、台湾の医学界のために優秀な若い医師を育成している。患者からは情け深い患者中心の治療を行う「仁医」と言われ、学生の間では臨床経験が豊富で、授業に熱心で、ユーモアのある良師益友と慕われている。
 
著作『メスを手にした歳月』には、彼と患者との間に発生した事柄が生き生きと書かれている。血管断裂、足の切除、指の切除、糖尿病による足の切除、毒蛇に噛まれた時の処置、皮膚糜爛、褥瘡、傷跡の萎縮、肘トンネル症候群、血栓による筋肉糜爛、橈(前肢内側)神経損傷などの症状についてだけではない。最も重要なこと、すなわち目に見えない患者との触れ合いの数々、また医師としての心構えが伝わってくるのだ。
 
 
 
作者・鄭立福
インタビュー・葉文鶯
発行者・慈済道侶叢書出版
サービスセンター
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整形と復元科医師がメスを持って疾病と向かい合わねばならない時、大部分は複雑である上に多くの困難を控えている。その中でも糖尿病患者の足のケアは積極的に血管処置を行う必要があり、下肢血流が改善するようにさらに皮弁(血流のある皮膚皮下組織や深部組織の移植方法)の復元と高圧酸素治療などと配合して、糖尿病患者が足を切除せずともよいようにしている。
 
「この足は私自身の足であり義肢ではないのです」と、右足の踝を大理石の板に押しつぶされて骨折した六十過ぎの男の人が言った。当時、右足には傷口がなく、三カ月後骨折は徐々に回復していたが、左足に不思議な傷口が現れた。二カ所の病院を回って診察を受けた結果、筋肉が腐乱していることが分かり、切開して洗浄した。膝のくぼみにある膝裏側の動脈が切れたことによるもので、大理石に押しつぶされた時、同時に左足の腿の裏側も圧迫を受けていたのを、ただの鈍痛として見過ごされていたのだ。
 
この患者は旧暦二日に、花蓮慈済病院へ受診にきた時には感染指数が高く、当直をしていた鄭医師はただちに筋肉膜を切開して壊死した肉を取り除き、徹底的に洗浄した。しかし三日経っても傷口は相変わらず黒く、左足はこれ以上維持できないので切除する可能性があると言われ、本人と家族は悲しんでいた。
 
その夜の回診の時、鄭医師は「壊死組織をもっと洗浄すれば、この足は切断しないですむのではないか」と考え、患者に「明日の切断はしないことにしましょう」と言った。その実、患者の傷口はひどく糜爛して膿は悪臭がひどいので、やはり切断して感染を防ぐことが最も早い方法ではなかろうか、しかし患者の生命にかかわるほどではないのだから、軽々しく切断に踏み切らなくても、と考えていた。そのように一週間に一度の洗浄手術を行った結果、三回目の手術の後になんと生機の現れである肉がついてきたことを発見したのだった。
 
それ以外に、毒蛇が出没する農村や田舎では蛇に噛まれた時にどの科で診察を受ければいいのかが問題となっていた。毒蛇に噛まれた時は通常急患センターにかかり、毒蛇の種類によって適切な血清を注射してから整形外科へ行く。なぜかというと百歩蛇に噛まれた時は、すぐに筋区画症候群を発症するし、コブラに噛まれた時は組織壊死と細菌感染の恐れがあるため、血清の注射が一刻を争うからだ。その後、整形外科で傷口の洗浄と植皮等の治療が行われる。
 
鄭立福医師の著書には、読者が整形外科の治療の真実に触れながら疾病を認識できると同時に、衛生教育についても分かりやすく書かれている。また、文章には鄭医師の患者に対する誠意が溢れていて、一読に値する一冊だといえる。
(慈済月刊六一三期より)
NO.257