慈濟傳播人文志業基金會
駅ロビーに日曜病院
日曜日の台北駅ロビーの一角には外国籍労働者のための移動病院が開設される。二ヶ月に一度、すでに十五年も継続している。受診する数の制限はなく、通訳ボランティアも付いているため、言葉の不自由もない。
 
●外国人労働者が受付に列を作り、慈済ボランティアと各診療科の看護師たちが丁寧に説明していた。
 
「私は一生懸命おばあさんを介護しているのですが、いつもおばあさんに罵られます。私が物を盗んだと言って……」。台北駅の外国籍労働者健診エリアで、心療内科の李嘉富医師が労働者のシー(Shi)の悩みに耳を傾けていた。在宅介護師のシーは熟睡できず、気持ちが沈む状態が続いていた。「私のどこがいけないのでしょうか」と彼女は李嘉富医師に尋ねた。
 
「おばあさんには病気があるからこそ、あなたの手伝いが必要なのです。おばあさんは記憶力が低下していて、自分で置いた物を移動させたことを忘れてしまい、家にはあなたしかいなかったため、あなたが盗ったのだと思って怒ったのです」と李嘉富医師は彼女を諭した。
 
心療内科の診療に訪れる労働者はいずれも仕事によるストレスを抱えている。李嘉富医師はまず話を聞いて、彼女らのわだかまりを見つけ出し、じっくり話し合ってストレスを取り除いていく。また簡単な検査機器で自身の心身状態を理解してもらっている。
 
台北慈済病院心療内科の李嘉富医師は外国籍労働者の健診に携わって十年以上になる。二○○一年、国防医学院で教鞭をとる妻の陳嘉琦と共にアメリカで研修した際、見知らぬ海外で苦労を味わった。台湾に戻ってから慈済人医会による外国籍労働者や移民を対象にした奉仕活動が行われることを知ると、彼は直ぐに賛同し、二○○四年から現在まで活動に参加し続けている。
 
●長年、外国籍労働者の施療に携わってきた台北慈済病院心療内科の李嘉富医師は、新北市庁舎での健診で外国籍労働者の話に耳を傾けていた。(撮影・張嫦娥)
 

仕事上のストレスを思いやる

 
台北市中山北路にあるセントクリストファーズ教会には休日になると決まって外国籍労働者が集まってくる。二○○四年から、慈済人医会は台北市労工局と協力して外国籍労働者の健診と相談を開始した。休日の教会の外では、医師や看護師、ソーシャルワーカー等の専門スタッフが寛いで談笑する東南アジアの人々の間を行き来する。李嘉富医師が診察する時、陳嘉琦は現場で衛生教育のビラ配りをする。
 
長年、外国籍労働者の心身の施療に携わってきた李嘉富医師は、高齢者や病人を介護する外国籍労働者は体力を使うだけでなく、生活や言葉、文化の違いに直面し、その精神的ストレスは計り知れないと話す。心療内科を訪れる労働者は医療サポートを求めて来るとは限らず、誰かが関心を示し、心に溜まったストレスを発散できることを望んでいるのだ。
 
「彼らは毎日、仕事でミスをして解雇されまいかとビクビクしているのです。角度を変えて見れば、彼らがこんなにも心を込めて私たちの家族を介護してくれているのですから、私たちも同じような心で彼らに接すれば、彼らはきっといっそう努力してくれるでしょう」と李嘉富医師が言った。「労働者の心身ケアがなされていない場合、何か問題が起きた時には社会がその責任を負わなければならなくなります。彼らに『異郷が故郷になった』という思いを持ってもらうことは社会皆の責任だと思います」。
 
心療内科の問診中、李嘉富医師はストレスを緩和する方法を教えると共に、在宅ケアボランティアと労働者の交流を呼びかけている。在宅ケアボランティアは専門的なトレーニングを受け、長年高齢者の在宅ケアに携わってきており、台湾のお年寄りの気質を比較的よく理解している。その高齢者ケアの経験を話すことで、移民労働者たちの仕事のストレスを減らすことができれば、お年寄りとの関係をより良いものにすることができるのである。
 

筋肉のコリは漢方医が専門

●針灸に馴染みが薄かった外国籍労働者も、医師の施術で症状が緩和すると再診を希望するようになる。
 
駅ロビーの北門の近くは行き交う人が多く、柱に「漢方医学」の看板が掛かっていた。邱偉源医師は初めて針灸治療を受ける労働者の男性に針を刺しながら、「痛くない、痛くない……OK、痛くなかったでしょう?」と話しかけていた。傍の通訳ボランティアも気遣いの言葉をかけた。
 
心療内科の医師が労働者の精神的ストレスを緩和する以外に、漢方医が行う針灸や推拿、湿布も筋肉のコリをほぐすと多くの人から歓迎されている。
 
「仕事のため、彼らは毎回、施療に来ることはできません。しかし、針灸を施すと『あれ、痛くなくなった』と驚くことがよくあるのです。彼らの反応で体が楽になったことが分かります。これが何より嬉しいことです」と漢方医の陳秀鑾医師が言って微笑んだ。
 
台北駅外国籍労働者健診で漢方科が設置された当初から陳秀鑾医師は参加しているが、ここに集まる在宅介護に従事する人はインドネシア人が最も多く、フィリピン、ベトナム、タイからの人もいることを知った。台湾で長く働いている人は多くが簡単な中国語を話せ、医師やボランティアとコミュニケーションを取ることができる。言葉が通じなくても、通訳ボランティアのサポートがある。
 
土城に住む陳秀鑾医師は施療の時はバイクで往復する。彼女は労働者健診施療を自分の務めだと思っており、「労働者の健康を守り、彼女たちが元気で高齢者を介護することができれば、双方が喜ぶはずだと思います」と言った。
 

口腔のトラブルを歯科医が解決

 
健診現場では、歯科チームの人数が最も多く、患者の数も一番多い。椅子をずらっと並べた施療では毎回、少なくとも五、六名の医師が約七十名の患者を診療する、と歯科助手の游春美が言った。歯科助手も各種機器、薬品、衛生機材やマスク、手袋などの消耗材の準備に忙しい。
 
●使命に忠実な後方支援チーム。歯科の水道電気配線仮工事は複雑で、専門性が要求される。医師が診察の際、移動の邪魔にならないようボランティアたちは慎重に配線した。
●機械配線チームのボランティアは無料診療現場で事前に設備を組み立て、終了後は慎重に分解する。それは正に「先頭に立って、最後までやり遂げる」姿である。
●設備の整った歯科診療室は施療の診療科の中でも一番忙しい。医師と助手が労働者の口腔問題を解決している。(撮影・蕭耀華)
 
歯科医は歯のスケーリング、虫歯治療、抜歯など口腔の問題を解決する以外に、衛生教育も行っている。「歯石がひどい上に虫歯にもなっていましたよ!」治療が終わり、医師から鏡を渡された労働者は鏡に映った自分の真っ白な歯を見て嬉しそうに笑い、医師のアドバイス通りに毎日歯磨きすることを約束した。
 
ボランティア医師たちは無料診察するだけでなく、必要な備品も提供して治療に当たり、無料奉仕でも忍耐強く続け、いい加減に済ませることはなく、行動で誠実な心を表している、と游春美が言った。
 
游春美は主婦だが、慈済に参加して初めて「仕事」するようになった。毎日、煩雑な物事を処理しなければならないが、体は疲れても心が疲れないと言う。「海外の施療活動に参加した際、患者さんがとても多く、全ての人を診療する時間はありませんでした。ある医師が涙を流しながら『苦難に喘ぐ人が多過ぎて、一、二ヶ月留まったとしても、全ての人を診ることはできません…』と私に言いました」。医師の慈悲心に深く感動した彼女は、それ以上泣き言は言わず、逆に奉仕できることに感謝した。
 
経験豊富な看護師の張永隨は各診療科を巡回し、人手が足りないところを手伝った。台大病院に勤務していた時に北部慈済人医会に加入し、外国籍労働者の健診に携わって既に七、八年になる。退職後は台北駅施療健診で看護師連絡窓口を受け持っている。
 
現在、歯科には専属チームがあり、一般診療科の看護師はアテンダントで、眼科の場合は検査機器を使用できなければならないと張永隨が説明した。各診療科にはそれぞれ専門性があり、誰でも務まるわけではない。充分に適切な人材を確保するのは容易ではなく、彼女もプレッシャーの大きさから辞めようかと考えたこともあるが、後に「奉仕の機会を与えてくれた外国籍労働者に感謝しなければ」と考え方を改めた。
 
「誘い合って皆で善行することに法悦を感じ、外国籍労働者をサポートして困難を解決できれば、嬉しくなります。高齢の自分がまだ、良能を発揮できることに充実感を覚え、脳の退化を防ぐことができるのです」と彼女は心から言った。
 
 
外国籍労働者の健診者数が多い診療科
●漢方科‥針灸、推拿で肉体労働による筋肉のコリをほぐすことができる。
●歯科‥母国では歯のスケーリングや口腔治療は贅沢である。
●眼科‥長期間、スマホを使って家族と連絡していることが視力に影響している。
 
 
外国籍労働者の医療アクセス上の問題
●仕事のない休日は診療所や病院も休診する。
●医療スタッフとの間に言葉の壁がある。
●保守的な国柄のため、特に女性は病気を隠し、診察を避けがちになる。
 

産婦人科だけの特別診察

 
東南アジアは比較的保守的な国柄であるため、産婦人科に来る人は多くない。それでも産婦人科の頼英明医師は長年、施療現場で時間を厳守して持ち場を離れず、問診に来た女性労働者たちに衛生教育の常識を提供している。
 
「パップテストは必ず受けなければいけません。子宮頸がんを早期に発見できるからです。炎症があった場合は外用薬や坐剤で治療できますが、その他の症状が出た場合は直ちに病院で精密検査を行えば、病気をこじらせることはありません」と頼英明医師は強調する。
 
外国籍女性労働者に寄り添うために、彼は医学用語を各国の言語でノートに書きとめ、問診時に患者に見せる。そうして問診すると、彼女たちの問題をおよそ把握することができる。外国籍労働者の施療活動に参加して長い頼英明医師は、彼女たちが介護する高齢者への労りの気持ちがよく分かる。数年前、彼自身の母親が病気になり、外国籍介護師にケアを頼んだことがあり、いっそう彼女らの苦労を理解するようになった。
 
「異郷で働き、病気になった際には誰かにケアしてほしいと願うものです。同胞であろうとなかろうと、医師なら必要とする人をケアしなければなりません。たとえちょっとした一言でも、人に温もりを与えられるのです」。
 
頼英明医師の問診後、数名の女性労働者はボランティアの車に乗り、永和区方面へ向かった。車が成功路にある産婦人科の前に停まり、中に入ると既に数名のフィリピン、ベトナム、インドネシアの女性労働者が診察を待っていた。
 
休日にもかかわらず、薛俊福医師と診療所の看護師は忙しく患者に対応していた。台北駅の施療会場にはパップテスト関連の設備がないため、薛俊福医師は労働者を自分の診療所に転送させたのである。台湾にやって来た労働者たちは、風土や飲食物に慣れなかったり、生活上のストレス、緊張などから生理不順を起こすことがあると薛俊福医師は言う。
 
●女性の外国籍労働者に産婦人科の検査が必要だが、台北駅はオープンスペースの上、関連機器がないため、看護師とボランティアが付き添って薛俊福医師(右から三番目)の診療所に行って検査を受けた。
 
検査後、今後連絡が取れるようにと、薛俊福医師は患者に机の上書かれたQRコードをスマホにスキャンしてもらった。「今日、パップテストを行い、外用薬をお渡ししました。また、二回分の座薬の使用方法をよく覚えておいてください」と丁寧に説明した。
 
ある労働者は、介護しているおばあさんから指輪をもらったが、本物かどうか分からない、と薛俊福医師に話した。彼は、「本物かどうかは関係ありません。おばあさんの心遣いですから、大切にしてください」と言った。
 
薛俊福医師は、「労働者たちは遠路海を越え、自分の家庭や子ども、両親を残して台湾で私たちの面倒を見てくれているのです。彼女たちを思いやり、尊重して接してあげるべきです。そうすれば、彼女たちもきっともっと私たちのために努力してくれるでしょう」と言った。
 
薛俊福医師の診療所を後にし、ボランティアは労働者たちを連れて台北駅に戻った。施療は既に終了し、皆で後片付けをして帰るところだった。温かな思いやりや愛の心は冷めることはない。最後は皆二ヵ月後の再会を約束して家路についた。
 
2019年度外国籍労働者に対する施療活動 北部
 
台北市
日程:4月28日、6月16日、8月11日、10月20日、12月8日
   12:00~16:00
場所:台北駅西一門口から北三門口
 
新北市
日程:4月14日 (タイ)、6月9日(フィリピン)、9月29日 (インドネシア)
   12:00~15:30
場所:新北市庁舎広場
(変更があった場合、市政府ウェブサイトで告知)
(慈済月刊六二八期より)
NO.269