慈濟傳播人文志業基金會
医者としての感慨

 私たちを育んでくれた大地を癒す

教育は人生を変える大切な一歩である。教育が成功すれば、人は疾病を予防することができ、将来、国を変えるチャンスが掴める。        
 
大林慈済病院整形外科
許宏達医師
 
朝早く起床したので外は涼しかった。辺りに薪を燃している匂いが漂い、許宏達の心を暖めた。「そう、この匂いだ。帰って来たのだ」。八歳の時に南アフリカに移民し、学校も医者になったのも全て南アフリカで、れっきとした南アフリカ人だと自分は思っていた。三十歳近くになって台湾に戻り、その二十年後、再び彼を育てたアフリカの地に足を踏み入れた。子供の頃の思い出が走馬灯のように蘇った。モザンビーク・ベイラ市に着いたその日、アフリカの人が習慣的に燃やす木の匂いをかいだ時、本当に故郷を思う気持ちになった。
 
「アフリカという土地は、これほど多くを私に与えてくれましたが、私にできるお返しはほんの僅かでしかないのです」。大林慈済病院整形外科に勤めている許医師は、同僚の医師達がシフトの変更をしてくれたおかげでモザンビークへ奉仕に行くことができたことをとても感謝している。しかし、施療が始まると心が痛んだ。アフリカを離れて二十年になるというのに、数多くの伝染病は依然として存在している。例えばエイズだ。
 
「学校に行くことができず、基本的な教育が不足しているのです。彼らの考え方と衛生条件が変わらない限り、これらの病気はなくならないでしょう」。許宏達はアフリカ人は教育が不足しているために、たくさんの人が性病に罹っていることに注目した。台湾では滅多に見られないが、アフリカではかなり蔓延している。
 
なぜアフリカには孤児が多いのだろう。彼らの両親の大半がエイズで亡くなっている可能性がある。「あそこの四十%は子供で、この子供達から教育を始める必要があります。教育が成功すれば、疾病を予防する能力を得られるのです」。
アフリカ人の人生を転換させるのは長期的なプロジェクトである。「證厳法師はそこに学校を建設することを決めました。これはとても重要な第一歩です」。許宏達は子供達が教育を受けることを切に願っている。そうすれば将来国を変える可能性が生まれるからだ。
 

一生、小児科医にはなれない

 
モザンビークの国土は帯状の形をしており、中部のベイラ市で使われる言葉は南アフリカとは全く異なる。許宏達も途方に暮れていると、幸いにも現地の三、四年生の医学生が通訳をしてくれた。診察を待っている人は非常に多く、一人の医師が複数の診療科を診なければならず、内科、外科、婦人科、小児科の全てをこなす必要がある。許宏達は幸いに南アフリカで診察した経験があったので、これらの疾病にも向き合うことが出来た。
 
一日目の施療の時、五歳ぐらい女の子が来た。遊んでいる時に友達に石を投げられて眉の横を怪我したのだ。整形外科専門の許宏達は数名の医療スタッフと一緒に傷口を縫い合わせた。麻酔注射を打ったその瞬間、女の子は一度うめき声を出しただけだった。「実は麻酔を打つ時はかなり痛いのですが、彼女は泣きもせず、縫合に協力的でした。本当に勇敢でした」。許宏達は子供達の運命を受け入れた忍耐力を見て、もし、その女の子が自分の娘だったら、大泣きしていただろうと言った。
 
お腹が大きい子供達を見ると許宏達は気が重くなるという。彼らは主食のトウモロコシ粉を食べて腹いっぱいになればそれでいいと考えているため、蛋白質が不足して栄養失調になっているのである。水分が腹部に蓄積してだんだん膨らんでいるのだ。
 
インターンだった時のことを思い出した。田舎へ診察に行ったある日、骨と皮ばかりの女の子が連れて来られたことがあり、早朝に看護師が慌てて駆け込んで来て、女の子の呼吸が止まっていると報告したので、皆、急いで応急手当をしに行った。主治医も来ていたが、「もう救う必要はありません」と一言言った。「どうしてだろう?」と許宏達はとても困惑した。「餓死だからです」と主治医が答えた。
 
その答えを聞いて胸いっぱいに悲しみがこみあげてきた。子供好きな彼はその後、小児科医にはならないと決めた。「結局自分達は何もしてあげられなかったのです…」。その時の事を思い出すと許宏逹は目頭が熱くなった。
 
アフリカから台湾に戻って慈済病院に勤めてから、彼は頻繁に施療と往診に参加しており、多くの身寄りのない一人暮らしの老人や病床に臥した病人に寄り添っている。彼には台湾と海外の区別はない。「私はただやるべきことをやるだけです」。
 
許宏達はインドネシアと四川省の施療にも参加したが、モザンビークは大いに違っていた。「先ず、私は『故郷』に戻って人々を助け、私を育んでくれたこの土地で役に立てたのです」。アフリカの人々の人生を転換させたいという法師の発願を聞いた時、そこで育った彼は絶対に機会を逃さないと心に決めた。
(慈済月刊六三二期より) 
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