慈濟傳播人文志業基金會
部族の子  医者になり故郷へ戻る
自分はここで成長し、故郷に帰って奉仕している。王傑熙は誰よりも現地のことを考え、子供たちを励ましている。どんな困難があっても、人生の中でどんな可能性をも諦めてはいけない。
 
 
見晴らし奉仕隊の設立から三年目の二○○八年、医学部の新入生の王傑熈が参加した。入学手続きに行った時、掲示板に見晴らし奉仕隊のポスターがあるのを見て彼は驚きを隠せなかった。なぜなら彼の故郷は見晴村であり、彼はそこで育ったのだ。
 
当時、彼の両親は出稼ぎに行っていて、姉兄妹や従兄弟たちと見晴村の祖父母のもとで生活していた。父母が休暇で帰って来た時だけが一家の団欒だった。そして、小学校に上がった時に初めて父母のもとで暮らし始めた。
 
彼が初めて故郷へ奉仕に行った時、自分は「カッコイイ」先輩を気取っていたが、子供たちと一緒にいると二十年前の自分に戻ったかのような気がした。今このいたずらっ子たちがしている遊びはすべて、以前の自分がやっていたことなのだ。子供たちはいたずらがしたいのではなく、無邪気でその実、感情が豊富なだけだということを彼は理解していた。
 
彼の小学校のクラスメートに作業員なので故郷に残した娘の世話を他人にまかせている人がいた。彼と母親が時々、絵本やクレヨンを買い与えているうちに、その子に絵の才能があることを見出した。しかし子供たちの趣味と理想は往々にして現実と環境に左右されてしまうことを彼は知っていた。
 
「手伝ってあげたい、しかし能力には限りがある」。これが彼の奉仕隊員として感じる無力感だった。そうであっても、彼が奉仕隊として関わることで故郷の子供たちを導く以外に、外部の人たちに社会問題と家庭の仕組みを見せることもできると考えた。「この問題は自分の故郷だけでなく、ほかの貧困地域にも言えることです」と言った。
 
彼は、貧しいからといって寄付を募るだけではなく、社会が貧困の原因を理解して、社会の仕組みを変えることによってこのような家庭の崩壊が避けられるのではないかと思っている。自分は故郷で成長し、今は帰ってきたので、同じ境遇の子供達を思い遣り、導こうと話しかけた。自分の両親は出稼ぎに出て苦労し、家庭環境は良くなかったが、それを乗り越えて大学を卒業したのだと子供たちに伝えた。
 
彼は必ずしも勉強だけすれば成功するとは限らないが、「学業は完成させなければなりません。その過程で絶えず自分を探して見つめながら、どんなに辛いことがあっても諦めずになりたい自分に成ってほしいのです」と子供たちに言い聞かせた。
 
王傑熈は最初、輔仁大学医学部に合格していたが、台北の生活費が高いことを考慮して、先住民公費生試験のある、慈済大学医学部の試験を受けて合格した。
 
五年生と六年生の実習の時によく部落から来た患者に出会った。なつかしく思ったが、なぜ病院に来たのだろうか?もしも病院のベッドに横たわっている患者が、家族や知り合いなら、自分はどう感じるだろうか?と思った時、プライマリ・ヘルス・ケア(基礎医療保険)を彼は志した。
 
部落の人々は病気に対する常識に欠け、軽い病気を見過ごし重病になっている。「私が台北や台中の病院で実習していた時、軽い病気でも診察に来る人が多かったのですが、故郷の人たちは肺結核になって数週間も咳しているのに、診察に行こうとせず、病院に行った時はすでに敗血症になっていたりするのです」と彼は感慨深げに言った。
 
山間部のような場所であっても、衛生教育と基礎サービスによって予防を進めることができ、家庭医学科は正に住民にとって大きな助けになっている。これが彼を家庭医学に投入する願力になり、この機会にプライマリ・ヘルス・ケアを学んで実力をつけようと強く決心したのだった。
 
●見晴らし奉仕隊は地域の人々に衛生教育を行い、健康相談を受け付ける。
 
彼にとって見晴らし奉仕隊に参加した経験が、大きな啓発となり、今の彼を支えているのだという。見晴らし奉仕隊の家庭訪問では、医療を行う前に先ず彼らの生活環境、言語、文化を理解することになっていた。もし彼らの生活習慣を理解せずに基礎医療行為をすれば、様々な問題に遭遇していただろう。
 
子供たちと一緒にいるともっと多くのことをしてあげたいと思うそうだ。容易なことではないが、これは自分が学ぶ機会であり、また挑戦でもある。診察室で患者と向かい合った時、患者は医師に問題の解決を求め、医師は患者の病状を理解して治療し、さらに彼らの生活にも気を配る必要があると語る。
 
奉仕される側だった子供が、見晴らし奉仕隊の役割の関係で、今は指導者に変わった。以前は大勢の奉仕隊の先輩たちに教えられていたが、今は自分がその一員として伝承していることに感動を覚える。彼は子供たちが成長して自分を発見し、強くなって故郷に尽くすことを願っている。
(慈済月刊六二八期より)
NO.277