慈濟傳播人文志業基金會
マスクでケアする
台湾は一月二十一日に初めて新型コロナウイルスによる感染症例が出現し、それに連れてマスクが品薄になった。緊迫した状況を緩和しようと、慈済ボランティアが動き出した。一貫した考え方は「必要とするところなら、どこにでも出向く」である。
 
私が台南白河のマスク工場に着いた時、空は真っ青に晴れていたが、周りには人影はなかった。工場に入ると内部規定に従って真っ白な防塵服と帽子を着ると、エアーシャワーを浴びて外部から持ち込んだ塵を吹き飛ばしてから清潔な製造区域に入ることができた。
 
その区域内はかなり雑音で喧しく、機械が絶えず「ピーピーザーピーピー」という音を発して耳に付いた。ハイピッチの音は途切れることなく私の鼓膜を刺激したが、働いている従業員や慈済ボランティアは気にする様子もなく、数時間にわたって防塵服と顔に密着したマスクを着け、テキパキとマスクの品質検査やパック詰めを行っていた。
 
●マスク工場の従業員の指導の下、ボランティアは防塵服を着て、消毒した手で慎重にマスクのパック詰めを行なっていた。
感染拡大の予防として、政府は一月三十一日から数回に分けて台湾全土の六十六の工場を徴用し、二十四時間体制で生産し、軍隊が「防疫を作戦と見なし」、全力で支援した。台南市白河区にあるこの工場も政府に徴用され、製造ラインを増設して昼夜を問わず稼働している。慈済ボランティアも要請を受けて生産に加わり、二月十日から軍隊と工場の日程に合わせて投入し、日々の生産量を達成している。

マスク製造に参加できるのは幸せ

「特に難しいことではありません。何か活動に参加できるだけで幸せです。だから行動すればいいのです」。こう言ったのは官田区から来た楊秋絨さんである。今年六十八歳だが、かなり若く見え、以前、美容師だった時の話をしてくれた。今は主に家で孫の面倒を見ている。彼女は一九九五年、既に委員の認証を受け、今年二月上旬、マスク工場が人手を必要としていると聞いて直ちに応募した。
 
しかし当時、どこで、何をするのかは分からず、人手を必要としていることだけ聞いて、「私ならできます。要請されれば直ぐに行きます。社会に奉仕したいという思いだけです」。
 
楊さんは笑顔で今やっている仕事を紹介してくれた。実は簡単な仕事で、マスクの品質を検査してパック詰めするだけである。機械の操作など専門作業は工場の従業員が行い、皆、持ち場は決まっている。ボランティアは交代で作業に参加し、すぐ慣れてくれる。毎日違った人が来るため、このような技術を求められない仕事が割り当てられるが、彼らはそれを厭わない。
 
同じ動作を一日中やっているが、彼女はとても楽しいそうだ。というのも、これまでの人生では工場で働いたことがなく、真新しい経験だと思う一方、思っていたよりも面白いのだ。彼女はちょっと手を止めて頷きながら言った。
 
「本当にこんな機会でもない限り、こうやって工場で手伝うことなどなかったでしょうから、この縁を大切にしたいのです。人助けできる能力があるということは嬉しいことです」。
 
彼女の精神を見て、私は台湾各地の裁縫手芸をしている慈済チームと住民ボランティアのことを思い出した。彼女たちも今回の感染症のために頑張っているのだ。彼女たちはマスクが手に入らない台湾の現状で、静思精舎の中でも裁縫が得意な德佩師父と相談して設計し、布製のマスクとカバーを作り出した。特にそのマスクカバーは中に医療用マスクを入れることでマスクの使用時間を延ばすことができ、感染症予防物資の節約になると同時に、重複して洗うことができるため、環境にも優しいのである。
 
●台南白河のマスク工場は従業員と軍隊が主力で、ボランティアは日中の生産に参加している。皆テキパキと品質検査をしていた。

【布製のマスクカバーとマスクを作る必要性】

・医療用マスク不足の予防。第一線の医療人員に安全且つ十分な防護物資を与える。
・医療の必要がある人や病気の人に医療用マスクを十分使用してもらう。
・マスクカバーに医療用マスクを入れて使うことで使用時間を延ばすことができる。一時的なマスク不足を解消してパニックを回避する。
・何度も洗って使用することができ、医療用ゴミを減らすことができる。

大衆を利することだけを考える

台南善化手芸工房でマスクの裁縫を教えているのは六十歳の蔡月麗さんである。彼女はさっぱりした気性で、裁縫が趣味である。十二年前に同じ趣味を持つ仲間と手芸工房を立ち上げた年長ボランティアだ。
 
蔡さんはシャッター製造会社の社長夫人だったが、会社に行かなくなってから殆どの時間を工房で教えている。以前のことを振り返ると、毎日午後四時に会社に顔を出すが、他の時間はショッピングや友人とお茶を飲んでいた。しかし今、工房に時間を割くようになってから少しずつ自分の心の持ち様を調整するようになった。
 
「環境は人を変えます。このかた自分がここに出入りするようになり、ましてや人にものを教えるとは、人生で思ってもいませんでした」。
 
手芸工房でボランティアするのはとても良い時間の使い方だが、それは一歩ずつ縁に沿って歩んできたのだという。マスク作りのように難しいことではないにしても細心の注意を払う必要がある。
 
彼女は、人に教えるという責任は思った以上に重大で、もしいい加減に間違ったことを教えれば、全員が間違ったままになってしまうと考えている。
 
「私は先生ではなく、中心になってやっているだけです」とマスクの見本を取り出しながら説明してくれた。工房の人たちは本当に裁縫が上手である。「互いに助けたり学んだりして同じ方法で仕事しているだけで、そうすれば同じ品質のものができるのです」。
 
工房に来るボランティアの多くは既に裁縫関連の仕事はしていないが、技能だけは残っており、ちょっと練習すればいいそうだ。法師が常々言っている「行動する中で学び、学ぶ中で目覚める」というのはこのことだと彼女は言った。
 
「今、人生で一番楽しいのは人と分かち合うことと学ぶことです。この世には私たちよりも苦しい人がいっぱいいます。考え過ぎず、人生に価値を持たせるべきで、そうしてこそ、年を取った時に喪失感を味わうことはないのです」。
 
●善化区の手芸工房で、蔡さんはミシンの前に座り、ボランティアに布製マスクの裁縫手順を説明した。皆、感染症に少しでも役立とうと、労力やミシンの貸し出しを申し出た。

【誰が布製マスクカバーとマスクを作るのか】

・2月初めから台湾全土の慈済拠点でボランティアたちが生産を始め、会員に配っている。各地の手芸工房にはミシン類や熟練した人たちが揃っているが、そこにアパレル関連の業者がミシンの貸し出しを行なって職人も参加している。2月10日から3月15日までに全台湾で延べ9千百人が投入し、8万7千枚あまりのマスクが生産された。
 
・製造工程は設計、裁断、生地のアイロン掛け、ミシンによる縫製、品質管理、製品のアイロン掛けなどに分けられ、ボランティアたちが流れ作業で行ない、長期間の使用に耐えられるよう品質を重視すると共に、人心の安定に役立つよう願った。

自分に適した仕事を見つけ、心込めて行う

新北市三重区の手芸工房には中国江蘇省無錫市から来た七十歳になる賴瑞徴さんがいる。彼女は春節前、花蓮で慈済栄誉董事の認証を受けた後、證厳法師と共に正月を過ごしたことがないため、静思精舎に十日ほど滞在することにした。彼女は精舎のために何かしようと思い、尼僧たちの掃除や畑仕事を手伝った。初め、彼女は手袋をはめずに畑仕事したため、両手がブヨに噛まれて饅頭のように腫れ上がったことを思い出して笑った。
 
「初めは二月七日まで滞在し、九日に中国に帰る予定でしたが、運悪く新型肺炎の感染が拡大して故郷の家族から帰らない方が良いと言われたので、台湾に残ることにしたのです」。ボランティアがマスク作りを呼びかけているのを聞いて、彼女は裁縫は苦手だったが、他にも仕事があるだろうと思って参加することにした。
 
二月十日から彼女は殆ど毎日、台北市三重区の慈済センターに行き、不合格マスクの解体作業の責任者として仕事をした。初めのうちは昼間から延長して夜の八時に帰っていたが、三月に入ってからは生産量が安定し始めたので、早く帰れるようになったそうだ。
 
彼女によると、布製マスクを作るには細心の注意が必要で、ミシンを扱う人も大変だが、解体する人は一針ずつの作業がもっと細かく、布を傷つけないようにしなければならない。初めは彼女もイライラしていたが、仕事しながら證厳法師の開示を聞き、法師がいつも口にしている「心して」という言葉を思い出すと、次第に自分の仕事をやり通すことができるようになり、楽しくなった。
 
また、中国の家族とは海峡を挟んだ両岸に分かれているが、距離はあまり感じない。というのも、毎晩八時にオンライン読書会で会っているからだ。そして、法師の「きっちり仕事するのは功名のためでも功徳を得るためでもなく、自分の本分と思って、誠意のある無私の心で奉仕すべきです」という話に言及した。それは心して物事を行い、感じ取り、慈悲喜捨の心で奉仕し、行動することである。
 
新型肺炎の感染症はまだ特効薬がなく、マスクを買うために薬局の前で並ぶ人々の長い行列が毎日のように見かけられる。台湾全土の慈済ボランティアが心を一つに力を合わせて「布製マスク」を作ることで、医療用マスクを第一線の医療人員や医療を必要としている人に使ってもらうことは、それを必要としている人と争って買わずに済み、社会の負担を減らすことになるのだ。一人でも多くの人がマスクを譲れば、それだけ感染のリスクが減るのである。
 
●大愛感恩科技公司が提供した防水生地を使って、手芸工房は丁寧に紺色の裏地と白色の表地のマスクを作っている。
(慈済月刊六四一期より)
 
 
 
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日本支部 菜食に共鳴し、手作りマスクを贈ろう
 
日本支部では「菜食に共鳴し、手作りマスクを贈ろう」と題した活動を始めた。最も必要な時期にマスクやマスクカバー作りを呼びかけることで、地域住民に思いやりと愛を広げている。
 

手作りマスクとマスクカバーの作成

 
  マスクの作成を決めた後、元々裁縫師だった劉月英師姐と河村師姐は、先ず生地屋に行ってマスクの生地を探したが、選ぶだけで二時間余りも掛かった。その後、布施恵師姐と山田智里師姐が最良のマスク作りの方法を討論した。(撮影・河村吉美)

劉月英師姐‥目も疲れますが、本当に楽しいのです。(撮影・徐嘉德)
布施恵さんは普段、夫の病院経営にも関わっているが、マスク作りのために早朝から夜までミシンで裁縫し続けた。「主人が一切の家事を引き受けてくれたことに感謝しています。意外にも小さなマスク一つで裁断、切り取り、アイロン掛け、縫製など少なくとも一時間半は掛かるのです。手間は掛かっても、それを使う人が安心して喜ぶのを想像するだけで、自分も内心喜びが湧いてくるのです」と笑顔で言った。(写真の提供・布施恵)
 
ご提案:
外出先から帰宅してマスクを外した後、窓際に置いて日光に晒せば、
殺菌作用があるのと同時にマスクを温めることができる。
(撮影・布施恵)
NO.281