慈濟傳播人文志業基金會
マレーシア 最悪の事態を想定して、最良の準備をする
マレーシアでは新型コロナウイルスの感染症例が横ばい状態から急激に増えたため、全国の病院は次々と緊急事態に突入した。医療スタッフは皆、最悪の事態を想定しているが、先ず直面したのは防護設備の不足だった。
 
マレーシアの慈済ボランティアは善念を結集して、新型コロナウイルスが拡散しないよう祈りを始めていたが、まさかウイルスが徐々にマレーシアに近づいてきていたとは誰も考えていなかった。三月初め、衛生総指揮者であるヌオシーシャンさんは、マレーシアは既に感染症の第二波に入っていると公表した。毎日、ウイルスの感染者が凄まじい勢いで増え続けた。マレーシア各地の病院は相次いで緊急事態に突入し、医療スタッフは最悪の事態を想定して、ベストを尽くして戦いに備えなければならなかった。
 
慈済クダ支部の荘菀佳副執行長は、クダ州中央病院の腎臓専門医で、新型コロナウイルス防疫チームの対策員でもある。彼女の任務は医療用品を充分に確保することで、その任務で一つだけ要求されるのは使命を間違いなく果たすことである。
 
●荘医師(右から1人目)はボランティアと、ステープラー、接着剤、スポンジ、粘着テープ、透明プラスチックシートを使って改良された防護フェースシールドを製作していた。支部以外では、少人数の近所のボランティアたちが集まって、流れ作業で分業している。また、あるボランティアは自ら工場の空きスペースを製作に提供していた。(写真提供・慈済クダー支部)

お金があっても買えない 

病院では、医療スタッフが毎日使用するマスクと手袋を確保するために、適量のストックをしている。しかし、防護フェースシールドだけは普段使う機会が少なく、争って買う商品でないため、メーカーは大量に生産していなかった。
 
防護フェースシールドが医療スタッフにとってなぜそれほど重要なのか?普通はマスクと防護服などと一緒に使用され、ウイルスを含んだ粘液または体液が医療スタッフの目や鼻、口にかかるのを防ぐからだ。とりわけ、PCR検査で鼻や喉から粘膜のサンプルを採取したり、重症患者に気管挿入を行う時、フェースシールドは感染のリスクを大きく下げてくれる。
 
救急外来であっても重症者治療室であっても、全ての防護用具は一回で使い捨てになる。感染症が発生してから防護フェースシールドの使用は大幅に増え、メーカーは供給に応じ切れなくなり、品薄になっただけでなく、価格も三リンギット(約七十八円)から十六~二十リンギット(約四百十六円~五百二十円)に値上りした。
 
防護フェースシールドはお金が有っても買えないほどの「ヒット」商品となり、荘医師も心配でならなかった。病院の医療関係者は仕事の合間に、透明なフェースシールドを手作業で製作していたが、供給が間に合わないため慈済に応援を求めた。慈済ボランティアは直ちに動き出し、医療スタッフを応援しようと全面的にサポートを開始し、無色透明なフェースシールドの製作に取り掛かった。
 
知らせがクダ中央病院に届くと、医療チームは喜びに躍り上った。荘医師は防護フェースシールドの作り方を学んだ後、慈済ボランティアと意見を交換しながら改良を重ねた。また防護フェースシールドの品質と衛生面の向上を考慮して、彼女は慈済の静思堂で作業することを提案した。感染拡大防止のために参加者の数を一日十人に制限したが、一日当たりの製作数は千三百枚を数えたので、とりあえずクダ中央病院の不足状態は緩和された。
 
しかし三月中旬、政府は行動規制を発令した。民衆の行動を制限し、ソーシャルディスタンシングを行うことで感染の拡大を抑えるものであり、ボランティアも外出することができなくなった。するとクダ州衛生局の副局長は直ちに慈済ボランティアに通行許可証を発行してくれたため、ボランティアは安心して静思堂で防護フェースシールドを作り続けることができた。
 
慈済が中央病院に防護フェースシールドを寄付したという善行は、瞬く間に市中に広まった。多くの政府系診療所や民間クリニックは、新型コロナウイルスによる肺炎の治療は行っていなかったが、ウイルスは相手を選ばないため、誰が感染者か判別出来ない状況下では医療関係者は常に危険にさらされているのである。
 
ある政府の保健所に勤めている慈済ボランティアは慈済に、同僚のために三十枚の防護フェースシールドを提供してくれないかと電話で聞いた。荘医師は、その保健所が遠隔地にあって往復に相当な時間が掛かることを考慮して、一度に百枚提供することにした。また、そのボランティアを通じて、他の政府系保健所も防護フェースシールドが必要なら地域や人種、数量を問わず慈済は無制限に供給すると伝えた。
 
それ以後、政府系保健所の関係者から防護フェースシールドの作り方について問い合わせが相次いだため、慈済クダ支部の撮影チームは製作過程を撮影して配信し紹介した。
 
ある日、荘医師は個人のクリニックや歯科医院から、「スタッフが感染を恐れて出勤しないため、既に十四日間も診療を停止しています。安心して再開できるよう、慈済から防護フェースシールドを提供してもらえないでしょうか」という電話を受け取った。
 
防護フェースシールドを受け取った医師たちは感激し、何度もお礼を言った。「人を助けるのであれば、十分かつ徹底的に助けなければなりません。慈済人のコミットメントが医療スタッフの強力なバックアップになることを願っています」という證厳法師の言葉を荘医師は伝えた。
 
防護が一層増えれば、より安心である
 
文・鍾詠名、劉寶聆(マラッカ慈済ボランティア)  写真の提供・鍾詠名
 
 
三月二十五日の夕方、慈済ボランティアの梁佩君さんが中央病院に防護服のサンプルをもらいに行った時、そこで看護スタッフが家庭用ミシンを病院に持ち込み、靴カバーやキャップなどの保護用具を応急的に製作しているのを見て、心を動かされた。
 
 病院からサンプルと材料を受け取った後、クルアン市の慈済ボランティアは直ちに製作過程について話し合った。その仕事を受け持った徐國貞さんは翌朝早速、自分の縫製工場から数人の従業員を動員して生産チームに参加した。職人の徐さんは「初めて国のために貢献できるのです。こんなチャンスはめったにありません。これらの防護服で医療スタッフを保護するガードをもう一層厚くして、より一層安心してもらえることを願っています」と心境を語った。
 
 サイズの計算から型紙作り、裁断、縁取り、縫製、包装まで八時間で百三十二枚が完成し、一日のうちに防護服の最初のロットが納入され、医療スタッフの士気を高めた。
 
(撮影・鍾詠名)
(慈済月刊六四二期より)

 

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