慈濟傳播人文志業基金會
青空環境保全ステーション
水も電気もトイレもなければ、屋根さえもなかった。
ボランティアは大地を守るため、暑さや苦労を耐え忍んだ。
 
「師兄、師姐(師兄、師姐は慈済の男性、女性ボランティアの呼称)。皆さん、ちょっと手を休めて朝食をとりましょう。今朝の献立は、蒸焼き饅頭と里芋餅、それに豆乳やコーヒーもありますよ。召し上がってください。休んでからトイレへも行ってらっしゃいね!」。環境保全ボランティア陳栄金隊長と廖秀美組長は丁寧に呼びかけていた。ところが、いくら声をかけても皆は自分の居場所を離れようとしなかった。
           
「一度立ち上がってお水や食事をとると、また戻らなければなりません。そしてしばらくするとまたトイレに行きたくなるので、このように往復すれば二十分間を費やしてしまい、仕事するのに時間がもったいないわ! むしろ、分別の作業を早めに済ませてから水分補給した方がいいのではないですか? なにしろここに朝日が差し込むと、暑くて仕事ができなくなりますから」と、動きが少々鈍くなったお婆ちゃんがつぶやく。
 
 

三無し一欠け

 
「三無一没有(三無し一欠け)」というのは、水なし、電気なし、トイレなし、さらには屋根さえもなかった環境保全ステーションのことである。そのような悪条件が彰化芬園郷社口環境保全ステーションの特徴と言えよう。ボランティアは夏の炎天下の元で作業を行っていても、皆は清らかな心で、清々しく感じている。冬は、厚手のコートを身にまとっても震えるほど強力な寒気にさらされても、ボランティアの情熱的な心は太陽のように温かで天気に左右されることがないのだ。
 
環境保全ステーションの空地は、心ある方が無償で貸してくれたものである。ボランティアたちは、限られた貴重な空間を有効に利用していた。空地には廃棄されたコンテナーがあり、そこに回収した古着などを収めていた。プラスチックや紙類や缶類などを地面に鉄板で仕切って分別した。鉄板の高さが人より高いので、小柄な師姐はもちろんのこと、師兄でも力を込めないと籠に分別済みの回収物を入れることができなかった。
 
環境保全ステーションは場所が狭いだけでなく、電気のないことがもっとも大きな試練であった。電気がなければ給水もできない。皆が手を洗うため師兄が他所から運んできたきれいな水を小さなタンクに入れて対応していた。幸い、ステーションより五、六十メートル先に一軒の漢方薬の店があり、店のトイレを借りることができた。たとえ店内が客でいっぱいであっても、ボランティアが出入りして、異臭が漂ったり、汚れた靴の足跡が残されたりしても、店主は嫌な顔を見せず、皆が用を足すため快く使わせてくれていた。
 
朝の五時を少し回ったころ、静まりかえった環境保全ステーションには小さな街灯がともっていた。近所の人はまだ起きていないので、早めにやって来た年輩のボランティアたちは、忍び足で作業をし、できるだけ音をたてないように分類をしていた。ところが、日が昇ってくると、皆はまるで太陽とかけっこをするかのように、さらにスピードアップしなければならない。幸運にも傍に一棟三階建ての建物があり、その建物の陰のおかげで少々日差しを遮ることができた。
 
このような環境で作業をするため、皆が大量の回収物をごく短時間のうちに手早く、しかも正確に分別作業をし終えることができるのは、日ごろからの訓練の賜物だと思った。
 
●心ある人が空地を環境保全活動の場として貸してくれた。回収トラックが回収物を載せて何度も出入りし、短時間の間に回収した全ての物資を分別している。
 

旧正月三日目の約束

 
環境保全ステーションでは、毎週月曜日と木曜日が小規模回収日で、毎月二週目の日曜日が大規模回収日となっている。また、その空地は月曜日の夜になると夜市に様変わりし、さまざまな屋台が並ぶ。彼らの商売に影響しないよう、回収物の整理分別をその日のうちに済ませなければならない。
 
回収の日になると、ボランティアたちは早朝から蟻の軍団のようにせっせと作業を行い、手早く分別整理を終えてから地面をきれいに清掃する。それから、侯麗珠師姐が運転する回収トラックがゆっくりバックしながらステーションに入ってくる。そのトラックに載せてあるのは回収物ではなく、皆の体力を補うため師姐が家で調理した料理と薬膳スープである。料理の匂いが辺りに漂い、皆の食欲をそそる。
 
トラックのボディーが食事のテーブルに変身した。皆は整然と列をつくり、手を合わせて仏に供養してから順番に食べ物を取り、思い思いの所に腰を下ろして食べていた。不平不満はなく、「美味しかった。お腹いっぱいになったわ!」という称賛の声だけがあがった。仕事についても、皆は奉仕の苦労を語らず、ただ「こんなに速く片付けられるなんて、私たちはすごいでしょう!」「今日は早めに来て自分の仕事ができて良かったわ!」と自分の仕事ぶりを満足する。
 
ボランティアたちのおやつと昼食については、調理できる師姐たちが順番に準備しているようだ。お家で調理してステーションまで運ぶから、当番の人は、皆に熱々を美味しく食べさせるため、調理時間をうまく調整しなければならない。
 
時には朝から雨の日もあった。作業をいくら止めさせようとしても、ボランティアは回収の決意がかたく、レインコート姿で作業を続けた。時々、「せっかく来たのだから仕事をしないと、もったいないわ! それに、ここで人とおしゃべりをしながら分類整理をすると運動にもなるのです。まして、今日のうちに済ませておかないと明日にはもっと量が増えてくるでしょう」と言う年輩のボランティアたちの言葉には感動せずにはいられない。
 
また、旧正月三日目には毎年恒例の集まりがある。たいていの人はまだお正月気分だったが、ボランティアは自分の知り合いや隣近所の人を誘って社口環境保全ステーションに集まり、そこで王有信師兄は慈済歌曲を流しながら、皆は楽しく気持ちよく分別をしていた。道路にあふれていたほど大量にあった回収物の整理分別が、わずか三、四時間後の午前十一時前には全て済まされた。
 
その環境保全活動には、毎年延べ六、七十人が参加した。「たとえ三十分や一時間だけでも、自分が新年早々地球を守るチャンスを逃したくない」と思っているのだろう。
 
●回収トラックのボディーが料理を載せたテーブルに変身。皆は整然と列に並び、手を合わせて供養の歌を唱える。
 

我々は家族

 
環境保全ステーションの皆は、一つの家族のようにお互いに関心を寄せ合っていた。誰か来ていない人がいれば、組長は必ずどうしたか尋ね、もし組長が気づかなければ、誰かが組長に報告する。欠席の理由を了解したうえ、まずは電話で無事かどうかを確認し、必要な場合には自宅を訪ねる。
 
陳栄金隊長は、「時々ボランティアのメンバーから私に、『しばらく来てない人がいるみたいよ。訪ねてみませんか』と言ってくることがあります。ここ三カ月の間、二人の常連ボランティアが二回だけ休みました。ところが、その一人を訪ねに行ったら、既に亡くなっていたことが分かりました。『人生は無常』とは言え、もっと関心を寄せていれば、そのような残念なことは起きなかったでしょう」と遺憾の意を表した。
 
「環境保全ステーションの基盤をしっかりと築いてくれた先輩の師兄、師姐に感謝すべきです。環境保全のために力を尽くしただけでなく、ボランティアの輪も広めてくれました。ボランティアは、回収作業にどんな困難があってもどうにかやり遂げますが、むしろ心配なのは、働く機会を逃すのでは、ということかもしれません」と陳栄金隊長はボランティアたちへの感謝の気持ちを語った。
 
ボランティアの陳秋燕は、「社口環境保全ステーションの年配者がもつ不撓不屈の精神を私たちは見習うべきです」と話す。かつてある年配ボランティアに、「手元の仕事が終わらないと席を立たないのはなぜでしょうか?」と彼女が聞くと、「膝がよくないので立ったり座ったりするのは面倒くさいです。終えるまで一気に続けた方がいいですよ!」と明快に答えた。
 
ある年配のボランティアは、早朝バスで来て、回収を終えたら歩いて帰るようにしていた。その理由は、歩いて来ると時間がかかって回収の作業がなくなるのが心配だから、バスで早めに着くようにしているのだ。一方、作業を終えたらステーションで食事を頂いてお腹いっぱいになるので、食事の支度を急ぐ必要もなく、ゆっくり散歩しながら家路に着くのだという。
 
「環境保全ステーションは団結心が強く、互いに固く結び合っています。回収日になると、皆は心を一つにして協力し合い、作業が全部終わってから一緒に『下校』するようにしています。しかも、雨の日も風の日も、常に全員集合なので本当に偉いです」
 
ボランティアたちは、汗でびっしょりになっても、または、雨の日にレインコートの下に来た服まで濡れても、なお作業の手袋を脱ごうとしない。陳栄金隊長と廖秀美組長は、心を痛めながらも感動していた。「近い将来に、屋根がついていて、電気や水があり、台所とトイレもあって、それに皆が勉強できるような設備を整えた環境保全ステーションになるように」と心の中で願をかけた。皆さんもその念願がかなうように一緒に祈願してほしいと思う。     
     
(慈済月刊六二〇期より)
No.264