慈濟傳播人文志業基金會
大林慈済病院 災害支援医療から地域の長期介護まで
 甚大な水害を被った嘉義県にある大林慈済病院は、地元である被災地で九日間連続で診療支援を行った。地元住民が水害でなくした常用薬を処方するほか、清掃や救済活動の時に負った捻挫や切り傷、肩や腰の痛み、皮膚病などを治療した。
 
 そして引き続き、救済中に見つけた一人暮らしのお年寄りたちの長期介護を手配して、地元住民を守る体制を整えた。
 
「町内の皆さん、慈済が龍山宮脇の町民会館で無料診察を行います。保険証は要りません。早く集まってください!」と布袋東港町で町内放送が流れた。
 
七十五歳の邱お婆さんは重い足を引きずって医療ステーションに入って来た。眩暈と目の痛みを訴え、膝あたりまで浸水した自宅のことを思うだけで目が赤くなった。「しばらくは悩みが多くて眩暈が出やすいかもしれませんが、洪水は仕方ないことなので、気を楽にして下さい」と大林慈済病院の林名男副院長はお婆さんの手を取り、優しく話した。
 
「年寄り一人で暮らしているからねぇ……」。お婆さんは、家財道具は全部水に浸かり、マットレスが何日経っても乾かないことを考えると、心が晴れないと話した。子供とは同居しておらず、毎日血圧を測って電話で子供にその数値を報告はしているが、その数字の意味をはっきり知らない。
 
「気を楽にしてください!」。林名男はお婆さんの訴えに耳を傾け、優しく慰めてあげた。
 
●嘉義県布袋で医師が住民の足を詳細に診察した。大林慈済病院は8月25日から9月2日まで延べ203名の医療スタッフが診療支援活動に参加、延べ816名に奉仕した。
 
六十六歳の顔さんという女性は、連日長時間水につかって家の整理をしていたのが原因で、十本の指の付け根が黒くなった両手を広げて見せ、軽く触れるだけでも激痛が走ると訴えた。林名男医師は軽く彼女の指を触って詳細に診察した結果、細菌感染していると診断し、塗り薬だけでは治癒できないため、飲み薬を処方することにした。彼女には持病の糖尿病があるため、看護士の洪婷妮は薬を塗りながら、絶対に汚れた水に触れないよう、再三注意を促した。
 
薬局には薬を調合する時に使う椅子が置かれていたが、薬剤師は一度も座ることはなかった。医師の診察が始まってから、薬剤師の李紀慧は心配してずっと側についていた。体と気持ちの不調という二重の「病状」を抱えたおじいさん、おばあさんを薬局に案内し、椅子に座らせてから、渡した薬の中身と飲み方を丁寧に説明した。お年寄り達が涙を拭き取る姿を見ると、彼女は立ったりしゃがんだりして、付き添いながら背中を撫でてあげた。そしてお年寄りたちの気持ちが落ち着くのを見て、ゆっくり医療ステーションから送り出した。
 

タイムリーな治療以上に後遺症の予防に努める

 
二十六日午前、雨が降り止まない中、大林慈済病院の頼寧生院長、簡瑞騰副院長、そして数名の看護師は車一杯の薬品を携えて、嘉義県布袋鎮公民館での無料診療に向かった。
 
●慈済ボランティアは被災地の視察と家庭訪問をした時、医療を必要とする人がいたことを知り、医療ステーションに送迎した。
 
布袋に向かう国道八十二号線の東石道路はまだ冠水していた。皆は「人間ナビ」と呼ばれるケースマネジャーの蔡淑蘭の案内を頼りに、布袋鎮にたどり着いた。蔡淑蘭は布袋生まれだが、生まれて初めて、こんなに多くの軍用車が生まれ故郷を走っているのを見て悲しかった。
 
布袋鎮役場と向かいの警察署の二階に布袋、義竹、東石からの住民が避難していた。外で暮らしていて、両親と同居していない子供たちは両親がどこに避難したかが分からず、所在を聞き回っていた。町役場に避難していたお年寄りの多くは何日も着替えがなかったので、大林慈済病院は健診センターから着替えを届けた。
 
二十七日、大半の地域から水は引いたが、嘉義県の沿岸地帯には依然として水に浸かっている村があった。嘉義県衛生局は大林慈済病院、嘉義長庚病院、衛生福利部朴子病院、台中栄民総病院湾橋分院と医師組合、看護師組合を動員して、手分けして六カ所の避難所で、週一回の施療を行っている。大林慈済病院は順次、東石郷と布袋鎮の十八の役場や寺院の集会場で施療を行っている。
 
●東石郷掌潭村ではやっと水が引き、大林慈済病院の施療チームが掌潭村保安宮で住民に施療を施した。(撮影・張菊芬)
 
周辺地域で安心家庭訪問活動を行っているボランティアは順次、医者にかかれない住民を車で医療ステーションに送ったり、医師による往診を手配した。七十八歳の余お爺さんは清掃中に腕を怪我して出血が止まらなくなったため、ボランティアが大至急、医療ステーションに連れて行き、傷の手当てをしてもらった。待機している車が往復することでお年寄りたちは早く診察ができた。
 
家庭医学部の孔睦寰医師によると、災害発生から一週間が経ったが、外来の内容が変わり始めた。常備薬をなくした住民や怪我のほか、ストレスによる高血圧や糖尿病の症状が進行した患者が増えた。医療チームが今後立ち向かう任務は、伝染病やその他の身体的、精神的な問題の予防である。
 
「診察に来る住民の症状は、浸水した時に慌てて避難する際に受けた外傷や、長い時間水に浸ったために起きた皮膚の爛れや爪垢症のほか、その後の家の清掃による筋肉痛などが加わった」と毎日診察している簡瑞騰副院長が言った。また、医者は診察する時に、傷口が悪化したり熱が出たら、すぐに病院に来るよう注意を促している。
 
●診察に来る患者の症状は清掃や家具の運搬による筋肉痛、外傷、ストレスで悪化した高血圧や糖尿病の症状のほか、情緒不安定もあり、心理カウンセラーが相談にのった。

医療現場でカウンセリング

 
沿岸部の村民はお年寄りが多い。とくに一人暮らしで家族や親戚が側にいないお年寄りが、突然災難に遭遇すると、情緒が不安定になりやすい。多くのお年寄りが水に浸かった恐怖から不眠症になったり、将来に対する不安を抱えていた。
 
「一番大きな悩みは何ですか」
「水が引かないので、家をどうしたらいいのか分からないのです」
 
九十六歳で、一人暮らしのお婆さんは、洪水のことを思い出すと、悲しくなって涙を流した。「もう大丈夫ですよ。過ぎたことだから」と大林慈済病院人文室の葉璧禎主任がお婆さんを抱きしめながら慰めた。
 
お年寄りの気分が落ち込んでいるのに気づいた時、ボランティアはただちに彼らを連れて心理カウンセラーと協力してカンセリングを行い、軽い会話を交わしたり、お年寄りの話を聞いてあげることで、鬱積した不安が解消されるのを期待した。
 
九日間の施療で、慈済病院と慈済人医会は嘉義地区の住民延べ八百十六人に医療を施した。大林慈済病院の職員とボランティアが布袋と東石の被災者を訪問し、支援を要する高齢者のデータを整理して、在宅介護士の協力を得ながら長期ケアを行う。
 
●今回の無料診療を通して気づいたことは、将来に向けた田舎の一人暮らしの高齢者の傷の手当てや慢性病の管理などの問題である。大林慈済病院はボランティアと一緒に地域社会に関心を寄せ、住民の健康を守ることに力を尽くしてゆく。
(慈済月刊六二三期より)
No.264