慈濟傳播人文志業基金會
喜捨の心を以て人生を変える
幼少時に吃音を発症し、言葉がうまく話せなかった子が成長し、後貧しくともアメリカへ留学して医学を志しました。葛済捨氏―その半生の中で四つの役割を演じてこられたのです。医師、実業家、マネーコンサルタント、そして慈済の専業ボランティアー「まるで四人分の人生を経験したかのようでした。それぞれの挑戦は魅力に溢れ、どの次元でもすべて貴重な人生の体験でした」と彼は語っています。
 
妻の慈喜に感謝しています。彼女が出版を励ましてくれなければ、この本が完成することはありませんでした。ライターの茹菁さんの努力と配慮にもお礼を言いたいと思います。彼女の百時間以上にわたるインタビューにすばらしい文筆も加わり、やっとこの本を皆さんにお見せすることができたのですから。
 
作者・鄭茹菁
発行者・慈済伝播人文志業基金会
定価・250元
振り替え口座・19924552経典雑誌
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私は極めて平凡な人間です。今まで大きな出来事などありませんでしたし、ただその時その時やるべきことにベストを尽してきただけですから、何か読者に与える啓示があるとは思っていません。しかし、この本のおかげで私は自分の一生を振りかえり、改めて人生観に向き合うことができました。
 
今までの私は、医師であり、実業家であり、マネーコンサルタントでもありました。でも、最も重要なのは、二十年以上慈済ボランティアをしてきたことです。このような人生の転機はいつも自然に訪れましたし、苦しい感じが何もなく、しかも大勢の支援者と良いタイミングで出会うことができたので、その結果は非常によいものでした。
 
その最も重要な要因は即ち、道を変えた時に考え直さないこと、いったん目標を設定したら全力で全うしていくということに尽きます。
 
四十歳になった年、中年の危機が訪れ、人生の目標を失ってしまいました。目標の立て方を間違えたのではありません。立てた目標は皆自分自身と家族のためだったのですが、その後気がついたのは、もっと目標を大きく、苦しむ衆生も含めて立てていれば、生き甲斐に満ちた人生になるのだということでした。自分の良能を発揮すれば、暮らしを充実させることができますし、さらに生命の価値を高めることになるのです。
 
一九九八年に中国貴州省が霜で被害した際、被災者に食糧と物資を配付したことをきっかけに、私は慈済国際災害支援活動に参加しました。これほど苦しんでいる人々と出会ったのは初めてでした。改めて自分の幸福に気づき、もっとこの幸せを大事にすべきだと痛感しました。
 
それから自己中心的だった自分の人生観を変えようとしました。以前は周りの人が私のストレスの原因だと思っていたのですが、震災後、それらの人たちこそ私の願いを達成させてくれる支援者であることがやっと分かってきて、深く感謝したのでした。
 
そして心から感動を覚え自発的に奉仕できるようになりました。このような「福を知る、福を惜しむ、さらに福を植える」という人生体験は、お金では買えない人生の悟りであり、この深い感謝の念こそ、私が慈済で学んで得た貴重な宝なのです。
 
「人生は十のうち八か九は、 思い通りにならないのが常であって、その他の一か二に目を向けるべきである」と言われています。私たちは物事に対して全力を尽くし、結果がどうなるのか誰にも分からないので、喜びの心で向き合う方がよいのです。
 
喜びの心は自分が選んだ気持ちであり、人生観なのです。皆がもしも「自発的に取り組み、喜んで受ける」という気持ちでお互いに交流していけば、この社会はもっと安らかになるし、人々の人生ももっと円満になるでしょう。
 
●2013年5月、葛済捨氏と孫慈喜氏はハイチ共和国ポルトプランス(Port au Prince)の大愛モリンガ(Moringa)農場を訪問。
 
専業ボランティアを志願した当初、「正気とは思えない、こんなことを決めるなんて。本当の理由は何だ」とある弁護士の友人に聞かれ、「私はもうたくさんもらったのだから、これからはお返しだ」と何も考えずに答えました。
 
一年後また同じ質問を聞かれて、「初めは自分でお返しにいくのだと思っていたが、その後、勉強しにいくのだと気がついた。お返しと同時にいろいろな人生の道理も学ぶことができるのだから」と私は答えました。私たちは苦難に出会った後で、もっと謙虚になるべきだと分かるのです。報いを求めないからこそ、世に染められた考えを取り除き、真に清らかな喜びが得られるのです。
 
歩いてきた道を振り返ってみれば、人間の一生は心念が拠り所になるのだと私は深く感じています。皆さんもこの道理を理解し、自分の考えを見直してみてください。皆さんのご多幸を祈ります。
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