慈濟傳播人文志業基金會
住宅改修
弱者世帯の住まいに安全性の向上を
 
貧しい一人暮らしの高齢者や弱者世帯の住宅改修は、慈済が半世紀をかけて行ってきた慈善志業の重要項目の一つだ。高齢社会への道を急速に駆け上がる台湾では、家屋の老朽化も著しい。如何に生活環境を改善して高齢者の転倒を防止するかが益々重要だ。
 
住み慣れた田舎の家を離れたがらないこと、または和式トイレのままだと立ち上がる時に大きな負担になること、或いは一人暮らしなので電気をつけずにいて室内が暗いこと等により、高齢者の住宅内での事故が起こりやすくなっている。
 
生活環境にどれほど見えない危険が隠れていても、高齢者は面倒をかけるのを恐れ、現状を変えたがらない。ボランティアたちは都会のコミュニティや山間部に深く入ってケアし、お年寄りが安全に住めるよう小規模リフォームを行っている。
 
●慈済がケアしているこの家庭はトイレが屋外にあるが、電線が強風で切断されたため電気がつかなくなった。台中のボランティアたちは電柱に絡んでいたドラゴンフルーツの枝を切り、新たに電線を引いて問題を解決した。
2020年上半期の台湾における慈済慈善志業の主要データ
*事故と災害への支援件数
合計135件、投入ボランティア数:延べ1,347人、
延べ支援世帯:319世帯。緊急慰問金寄贈:113世帯
 
*全台湾の慈済各拠点社会奉仕チームへの申請受件数:7,109件
全ての案件は、訪問ケアボランティアが家庭訪問した後、社会福祉ボランティアと共同で支援計画を立てる。
 
*長期援助:延べ55,411世帯、
訪問ケア:延べ73,944世帯、
緊急援助:7,252件、
住環境改善:290件、就学支援:3,120件

住民の意見は尊重するが、安全が第一

半世紀にわたり、慈済は貧困者や病人などの弱者世帯の住宅を修繕してきた。高齢化社会における課題に対応して、慈済はもっと地域を理解して慈善奉仕したいと思っている。近年は「事故防止」の観点から「居住安全改修奉仕」プロジェクトを進めている。村長や里長(台湾の里は市区に属する行政区分)からの報告と案内で、高齢者や心身障害者の為に住居の修繕を行って、安全に生活できる環境を整えている。
 
新北市役所社会局と民政局の協力の下に、慈済は、高齢者が人口の三割近くを占めるほど高齢化が進んだ新北市平溪区に入った。五月中旬、ボランティアたちは薯榔町の潘隆裕(パン・ロンユー)町長と区役所社会人文課の高淑蓮(ガオ・シューレン)さんの案内で、最初の家庭訪問を行った。
 
詹お爺さん夫婦の六人の子供は全員家庭を持っており、お爺さんは生活に困っていない。住んでいる平屋は山林と微風に囲まれ、屋外に坐って涼みながら世間話をするのが老夫婦の日常である。家庭訪問した時、人に迷惑をかけたくないからだろうか、老夫婦は恥ずかしそうな表情をしたが、ボランティアの「老婆心」のこもった説明を聞いて、やっと転倒防止の為に浴室に手すりを取り付けることを了承した。
 
屋内の照明を明るくし、手すりを取り付けたことで、新北市在住の李お婆さんは安心して暮らせるようになった。
左官工事専門のボランティア・李世傑さん(左)は手すりを取り付ける前に、浴室の配線と水道の位置を確かめてから穴を開けた。詹お爺さんは入り口から好奇の目で見ていた。
 
子供たちと別居している李お婆さんの家に来た時、ボランティアたちはお婆さんの生活習慣に合わせて、転倒リスクの高い場所を予測して手すりを取り付けた。また、床と敷居の高低差で転ぶことがないようステップを付けるつもりだったが、「生活習慣を変えることがリスクを呼ぶ場合もあるのです」と慈済基金会社会福祉人員の陳志明(チェン・ジーミン)さんが強調した。それで生活に影響を及ばさないことを前提に、施工する前に何度もお婆さんと話し合った。
 
七月中旬、ボランティアたちは、日が高くなる前に薯榔里の六世帯に手すりを取り付けに行った。詹お爺さんの家に着くと、左官工事専門のボランティア林世傑(リン・シージエ)さんが探知機を使って浴室の壁の中にある配線と水道管を避けながら、便器と洗面台の横に手すりを取り付けた。二時間後に李お婆さんの家に着いて車を止めると、玄関口で待っているお婆さんが見えた。修繕チームは、先ず屋外にあるトイレに手すりを取り付け、古くなった照明設備を取り替えると、お婆さんがいつも電気をつけるため高い所に上らなくてもいいようにスイッチの場所を変えた。「あなたたちは本当に気が利きますね」と、手すりに掴まる「初体験」をしたお婆さんは、笑顔で喜びを表した。
 
「高齢者居住安全改修奉仕」は、高齢化が進んでいる台中市北屯区東山町でも行われた。五月末、慈済ボランティアを含む百人余りが東山地域振興協会のイベントホール前の広場に集まり、七組に分かれて十九世帯を訪問して調査を行った。案件の多くは山奥や狭い路地の在住者だったので、邱財源(チウ・ツァイユエン)里長と区役所の劉村栄(リウ・ツンロン)が道案内をしてくれた。
㊟里は台湾の行政区画。
 
午後、曲がりくねったデコボコの山道に車を走らせた。ボランティアは車から降りると、苔で滑りやすくなった斜面を苦労して登り切って初めて徐お婆さんに会えた。こんなに多くの人が訪れて来たのは久しぶりなのか、お婆さんの口元は終始笑顔に溢れていた。彼女は子供と同居しておらず、築五、六十年の平屋に一人で暮らしていた。
 
この平屋は林の中にあって北向きのため、日当たりが悪く室内は薄暗くてジメジメしていた。陽が差さない日は、室内はもっと薄暗くなり、連日雨になると、長年修理していない屋根は雨漏りが酷くなる。トイレは三十数メートル離れた斜面の上に作られており、小さな橋を渡らなければならない。途中には照明も手すりもなく、夜は暗闇の中を手探りで行くしかない。一度、お婆さんは夜トイレに行く途中蛇に噛まれたことがあった。安全を考慮して、母屋に近い風呂場にトイレを設置することを修繕ボランティアの葉文安(イエ・ウエンアン)さんが提案したが、使い慣れているからとお婆さんに退けられた。
 
2020年上半期の台湾における住環境改善案件の統計
*数字は慈済が長期ケアした弱者世帯の住環境改善案件290件と「地域社会が高齢者を支え合う-高齢者居住安全改修」特別案件を含んでいる。
*主な高齢者居住安全改修項目:手すりの設置、バリアフリースロープ工事、照明の改善、洋式トイレ、バスタブ撤去、床の滑り止め工事。台湾全土から137世帯の申請に対して、ボランティアが家庭訪問したのは127世帯、居住安全改修工事を実施したのは96世帯。

ちょっとした修繕で転倒防止効果大

台北でも台中地区でも、慈済の住宅改修奉仕を辞退する高齢者は少なくない。「土地柄が保守的で、なるべく人に迷惑をかけたくないのです」と邱里長が正直に言った。最初に住民を慰問した時も、高齢者たちの保守的な観念と内向的性格からよく「門前払い」を食らっていたが、ボランティアたちを励まして、何回か足を運んでいるうちに、心を開いてくれるようになった。
 
六月中旬、ボランティアたちが再度徐お婆さんを訪ね、娘さんにも工事の計画を説明した。ボランティアたちの情熱と粘り強さでやっとお婆さんの警戒心が解け、改修奉仕を受け入れてくれた。ボランティアは屋根を直し、お婆さんの寝室の横にトイレ付きの浴室を作る計画を立てた。
 
他の地域に比べて、台南地区の改修申請件数は三倍の速さで増えている。全台湾の居住安全改修プロジェクトを統括する慈済基金会慈善志業発展部のスタッフによると、町長とボランティアたちの懸命の説明を受けた後、自分の子供に迷惑をかけることや「貧困者」のレッテルを貼られることを心配して改修の受け入れを渋っていたお年寄りたちが、一人ひとりと考え方を変え、「申し込み」をするようになったそうだ。何故なら、自分の安全を守れば子供たちも安心すると分かったからだ。
 
慈済のほかにも、台湾には多くの社会福祉機構が同じように居住安全改修支援をしている。そのうちの一つである衡山基金会は、多くの精神障害者を援助して自立のための生活力を育む過程で、彼らが病のために自立する力がなくなり、居住環境が乱れていることに気づいた。その為、二〇一四年五月に「衡山慈善団」を発足し、心身障害者などの弱者世帯の住環境の安全改修に取り組んでいる。
 
 
台中市北屯区東山町の9割は山岳地帯だ。徐お婆さんのトイレは30メートル離れた斜面の上に建てられている。用を足す時は鉄の橋を渡らければならず、途中には照明も手すりもない。5月下旬、ボランティアたちが訪れて修繕の下調べを行った(上の写真)。六月に再訪問し、修繕ボランティアの葉文安さん(下の写真・左から1人目)と訪問ケア幹事の蔡明模さん(右から2人目)、町長(右から3人目)はお婆さんの寝室の横にトイレを建てられないかを話し合った。(撮影・劉金龍)
 
またエデン基金会は、二〇〇九年より弱者世帯の住宅改修支援を始めた。一人暮らしの年配者や老夫婦、子供が就職したあと実家で一人暮らしをするお年寄りが急激に増えているのを感じ、住環境の改善は事故の発生を減らすだけでなく、身体機能の低下に対応できることに気付き、三年前に「安心居住修繕団」を設立して一歩踏み込んだサービスを提供するようになった。
 
慈済は住居改修奉仕を推し進め、地域ボランティアが各地に深く入り込むことで、一人暮らしのお年寄りや弱者世帯の生活が安全になるだけではなく、もっと多くの同じ志を持った若者や修繕が得意な職人の方にも知ってもらい、一緒に地域社会に関心を持つようになってほしいと考えている。
(慈済月刊六四六期より)
NO.287