慈濟傳播人文志業基金會
「大学という道」に進む前に
台湾では旧正月を迎える前に「大学学科能力測定試験(全国共通の大学入試)」が行われ、高校三年生は大学の志望学部への申請や、五月に行われる四技二専統一入學試験(高等専門学校生のための大学入試)の準備に追われる。
 
台湾は教育改革から二十七年が経ち、高校と大学の増設政策もあり、大学の合格率は一九九四年の四十四%から今では百%になった。若者にとって学士以上の学歴は既に基本条件となっている。
 
だが大学に進学しても、順調に行かない人は少なくない。教育部(文部科学省に相当)の統計によると、二〇一八年度で全国九十六万人余りの大学生(四技二専を含む)のうち、六万六千人余りが退学した。その四割近くは、望んでいた内容とは異なっていたことと成績不合格が理由だった。また、休学が終わっても復学申請をしなかった休学者が約五割を占めた。前期と後期に休学した延べ人数は、それぞれ五万六千人を上回った。
 
この何万人もの休学者や退学者の数は、大学に進もうとしている高校生によく考えてみるよう促している。自分の性格やしたいことが何なのか。また、今持っている基礎能力は選択した学部に対応できるのか。
 
これらの重要な問いに対して正しい答えはない。せっかくの高得点を無駄にしないために人気学部に進み、入学してから自分には合わないことに気づく人もいる。ある人は高校の成績は普通だったが、興味のある分野の学部に入った後、一気に伸びたそうだ。教育資源が普及した今、自分に適した方向を見つけ、大学で「高学力」を身につけるという考え方が、入試で高得点を取って名門校に入るよりも重要になっている。
 
台南慈済中学の姚智化(ヤオ・ジーホア)校長はこう指摘している。今、大卒の肩書きは既に就職の基本条件となっており、卒業後に自分の理想としている仕事に就くことは容易なことではない。これからの進学基準は、いかに自分が興味を持ち、且つ能力を発揮できる学部に行き、より良い専門知識と品格及び多様な才能を身につけるかだと言える。

中学校の校長が大学選びを教える

姚校長は、中学の段階から自分で模索し始め、高校では基礎学科をしっかり学ぶことを勧めている。そして、大学は社会に入るための基礎訓練の場であり、実力を高め、思慮深くなるように大学でしっかり学び、専門知識を増やして、視野を広げることが大切だ。
 
学部を選ぶ時、能力と興味の両方に合えばそれが一番良い。以前、大学の合格率は二〇〜三〇%程度で、大学に進学した人は全般的によく勉強し、十分な能力を持っていた。しかし、現在は合格率が百%になり、中には高校を卒業していなくても大学に合格する人もいる。それで、国立大学を含む多くの大学では、新入生に「補習授業」をして、基礎学力を向上させている。
 
かつて大学統一入試が「一回の試験で人生が決まる」のはおかしいと批判されたため、今のように多元的な入試制度になった、と姚校長は言う。二〇二二年以降の進学学力試験は「素養を基準にした」試験にするとのことである。殆どの保護者や生徒、教育現場の教師でさえ、その重点を把握するのが難しいと感じている。言うなれば、しっかりした基礎知識を身につけ、より多く問題解決の練習をして、普段から問題に立ち向かう自信と態度を養うことが必要であるが、それは短期間で学ぶことはできない。 
 
将来に向けて、学生は先ず基礎科目をしっかり勉強してこそ、大学の勉強をする能力ができるのである。同時に、興味のある学部或いは学部の学習内容に注目して、自分の興味や能力に適しているかどうかを確認した方がいい。やみくもに「第一志望」だけに向かって突き進まない方がいい。さもないと、大学に合格しても、勉強が苦痛になり、卒業できないことさえありうる。
 
一部の学部の定員は、就職市場のニーズに釣り合っていないのが現状で、将来について早めに考える必要があり、多様な能力と興味を培う必要がある。現在の用語にすると、「スラッシュ(英文の記号で「且つ」を意味する)」である。本来の学部以外に他の分野を勉強し、二つ目の専門知識を身につけることも悪くない選択である。
 
大学の選択に関しては、学校の理念、態度、評価に注意を払うべきである。入学手続き者数に加えて、職場での卒業生のパフォーマンスと評価は、大学で学生がどのような特質を身につけたかを意味しており、それも参考にすることができる。
 
姚校長はまた、大学の新入生をこう励ました。たとえ選んだ学部が期待通りでなくても、大学は人生で最終学歴ではないので、この四年間を自分が目指す方向への準備期間として活用し、将来、就職するか大学院で勉強する時、人に遅れを取らないようにすることが大切である。学習する習慣を維持し、善意と情熱で自分の人生に向き合って欲しい。 

人生を成功に導く「高学力」

台湾全土にある百五十余りの大学の中でも、慈済大学と慈済科技大学は「後山(中央山脈以東)」の花蓮にある数少ない大学で、当初は人文素養と医療人材を培うために設立された。両校とも何回か制度を変えながら昇格し、医療と人文社会領域にまたがる大学に発展した。
 
慈済大学と慈済科技大学の学生には、教師のサポートに加え、慈誠パパ、懿德ママが付き添っているほか、在学期間中に殆どの学生がボランティアを経験していて社会参加の頻度が高いため、感謝と努力、社会的弱者に対する思いやりという特質が身についている。
 
慈済大学の統計によると、慈大を卒業して内科、外科、産婦人科、小児科、救急外来などの重要な診療科に勤務している医療スタッフの四十五%が、積極的に東部や離島での奉仕に参加している。慈科大も創校三十数年来、数多くの看護師を育成してきたが、現在は農業や生体医学、健康促進及びセールスなどの分野でも、より多様な人材を育成している。両校の大学の優秀な学生の探究心と就職履歴、そして教師のサポートや意見は、大学を目指す高校生の模範と参考になるはずである。
 
時代は急速に変化しており、大学で学んだことが必ずしも職場に繋がっているとは限らない。「高学力」を身につけることだけが、「高学歴でも職がない状態」から逃れる道なのである。大学の四年間という時間は限られており、学習の機会は逃すと戻らない。学校を出て社会に入る前に、より良い生活基盤を築くために、大学で「大人」になることを学ぶ必要がある。
(慈済月刊六五一期より)
 
No.292