慈濟傳播人文志業基金會
教育で「実力」を養う
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックからすでに一年が過ぎた。世界各国で様々なワクチンが開発されて、接種も始まり、感染症が終息することを渇望している。しかしながら、新型コロナウイルスは絶えず変異し続け、世界秩序と生活様式は覆されてしまい、過去に戻ることが困難な状況にある。世の人々は速度をあげて未来世界に対応しなければならないが、教育の改革もその一つである。
 
今日の教育改革における重要な傾向は、「実力(competence)」を強調することである。不確定な未来に直面している今、次世代の問題解決能力と創造力の育成に力を入れる必要がある。専門性を身につけるだけでなく、それぞれの分野の枠にとらわれない見方をする必要がある。さまざまな分野の相関関係と補完性を広く理解し、融通性があるようになることである。
 
言い換えれば、知識を使って「何をするか」ということが大事である。どれほど多くの知識を持っていても、それが生活の役に立たないならば到底勝てないのと同じである。たとえば、将来多くの仕事が人工知能(AI)に取って代わられると予測する人がいる。しかし、AIは智慧で判断して問題を解決することはできない。人と機械の最大の違いは、人には独創性と反省能力が有るという点だ。
 
この他、学びたいという意欲を維持して成長を続け、個人の潜在能力を伸ばしてこそ、世情の変化により淘汰されずに済む。インターネットが発達し、現代人は世界のさまざまな情報にも簡単に触れることができるが、時代の趨勢の中で自分のスタイルを見失いやすいと言える。自己、他者、そして世界と共存していくためには日進月歩、「実力」を養う必要がある。
 
政府が支出する教育経費は年々増加しているが、大学生の休学や退学人数は数万人に達しており、その約四割が「志望に合わない」という理由を挙げている。学習塾業界のビジネスチャンスが止まることを知らないのは、保護者や学生の焦りを反映している。学歴社会というトレンドの中で、学歴と職業を切り離す試みは益々難しくなっている。
 
今月号の主題報道に、玉里慈済病院副院長の林志晏(リン・ジーイエン)医師の物語が載っている。彼は慈済大学医学部を卒業した後、偏境で医療を実践し、整形外科医になったが、その志は多くの人の価値感とは一致しなかった。彼は自分が医学部に進学した時の初心を思い出した。それは、患者の苦しみを取り除き、どの科の患者も平等に扱うことであり、たとえ患者の病状が彼の専門分野を超えていても、多方面から探求して解決しなければならないと考えた。
 
慈済科技大学を卒業した戴瑞瑩(ダイ・ルイイン)さんは、重病の父親を介護したことをきっかけに看護師を志した。彼女は学校の農業バイオ医療チームに同行して部落での訪問調査や部落民に農作物の販売促進を指導した経験から、農民の苦労を理解すると共に、将来、看護師になってからのより大きなビジョンも見出した。つまり、偏境に医療資源をもたらす手伝いをしたいと思ったのである。
 
初心は彼らが堅持し続け、困難を乗り越える原動力である。都市と農村の格差は大きいものの、彼らは名利に執着せず、日頃から「実力」を養った。そこには、知識を良い目的に使いたいという情熱、利他的な思いやり、そして自身で人生の道を切り拓く理念がある。それは新世代の学生が学ぶに値するものである。
(慈済月刊六五一期より)
 
No.292