フランス・パリで行われた国連気候変動枠組条約第二十一回締約国会議(COP21)の共同宣言で、地球の気温上昇を二度以内に抑え、できれば1.5度以内に抑えることを目標に定められた。
慈済が同会議に参加するのはこれで三回目であり、「行動に移そう。気温の上昇による災難をくいとめよう」と訴えた。
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パリ会議のメーン会場の外には195の参加国の旗が立っている。各国の元首とNGOの代表が一堂に集まって地球の温暖化問題で共通認識を模索する。
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会議は十一月三十日から十二月十二日までフランスのパリで開かれた。慈済基金会はNGOとして、ポーランド・ワルシャワで開かれたCOP19、ペルー・リマで開かれたCOP20に続き、三年連続招請を受けて同会議に参加し、今回初めて会場で記者会見を行った。
慈済ボランティアは会場に宣伝ブースを設置し、世界中のボランティアが愛の奉仕をしていることを知ってもらうため活動内容を展示したほか、英語、フランス語、ドイツ語の字幕が入った證厳法師の講演ビデオ「地球と共生する」を放映、この会議を機に人々が環境保全を行動に移すよう呼びかけた。
百九十五カ国がこの重要な会議に参加し、うち百八十五カ国がCO2削減と省エネに関する協定会議に参加した。そして、百五十カ国の代表が十一月三十日と十二月一日の会議で宣言の内容を発表した。それは史上初めて参加国全ての国が温室効果ガスの排出削減に合意し、「史上最も煩雑かつ影響力のあるグローバルな協定」を結んだのである。COP21で採択された協定は二〇二〇年に発効となる。
慈済の環境保全が国際舞台で認められた
「私たちは気候の変動に直面して何をしたらよいのか。地球のために何ができるのか。證厳法師は行動でもって『地球と共生する』姿勢を表す必要があると言っています」。慈済米国総支部の曾慈慧副執行長が記者会見で慈済の気候変動に対する努力を語った。
慈済基金会は国連NGO加盟団体として招請を受け、今回初めて正式に会議への参加登録を行った。記者会見を四回、シンポジウムを一回行ったほか、テレビ局の生中継インタビューなどを行ったため、各国のメディアが関心を寄せ、ロイター社やヨーロッパニュースが報道した。
記者会見では台湾、アメリカ、インドネシアから参加した慈済ボランティアが、慈済の長期的な環境保全活動の成果と方法を説明すると共に、来場者に「自然を愛し、良縁を結ぶ」考え方、すなわち、異常気象による災害が頻発する今、慈済がどのような着実かつアイデアに満ちた方法で災害支援を行っているかを紹介した。
中でも十二月四日に行われた三回目の記者会見は少し特殊であり、宗教の違いを超えたものだった。同席したカトリックの明愛基金会の代表者が、慈済の活動により多くの企業が参加してほしいと訴え、プロテスタントの代表も、世界の人々が月に一回断食をし異常気象による食糧不足に呼応し、今後どうすべきかを考えようと呼びかけた。慈済基金会代表は改めて各宗教団体に二〇一六年一月十一日から始まる世界素食運動に参加するよう呼びかけた。
同日、慈済基金会とユネスコ傘下のフィリピン地球を救う基金会とワシントン気候学術基金会が共同でシンポジウムを開催した。慈済ボランティアは、仏教の生活教育の観点から自らどのように行動すれば天災を減らせるかを考えていると説明した。南半球の代表は気温上昇に伴う海面の上昇がすでに島国に脅威をもたらしていることを挙げた。また、アフリカからの代表は森林の乱伐によって森林に危害が及び、生態系に影響が出ていることを説明した。
国連副事務総長を退任したばかりのユンケラ博士は、今回の会議で策略調整役を担当し、「過去の会議と異なるのは、フランス政府が温室効果ガスの排出削減を約束するだけに留まらず、具体的な方針まで示していることです。私たちは数多くの覚え書きに調印し、発展途上国が必要とする資源を獲得できるよう手助けするつもりです。慈済も含めてNGOが参加し、気候の変動にいかに対処するかを討論しているのはとても喜ばしいことです」と話した。
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慈済基金会は3年続けて同会議に参加しているが、2015年に初めて他の宗教団体と共に記者会見に臨んだ。左から「信仰と科学の結合」(United Planet Faith & Science Initiative)の創設者スコット・スチュアート、インドネシア多民族センター(CDCC)主席のディン・シャムスディン博士、慈済米国総支部の副執行長曾慈慧、大愛テレビ気象アンカーの彭啓明。
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NGO展示会場には200のブースが並んでいるが、他にも数多くの団体が参加を望んでいる。それ故、主催者側は参加者に共同で参加する方法を提案した。慈済はユニセフに属する「地球を救う会」及び気候変動学術会と共にブースで展示している。慈済は福慧ベッドと毛布を展示した。「地球を救う会」はフィリピンの子供が天災で家を無くした光景が描いた絵を展示した。(攝影・林志勇)
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全世界同時に「素食し、殺生しない」運動を推し進める
百五カ国を超える代表が慈済の環境保全教育ブースを訪れた。ボランティアは英語やフランス語、ドイツ語、中国語で慈済を紹介した。
十二月二日正午、慈済台湾の代表である彭啓明、慈済アメリカの裘曜陽、慈濟シエラレオーネ災害支援担当責任者スティーブン・フォンバが会議専属のウェブテレビ局(COP21 WEB TV)のインタビューを受け、慈済が開発した多機能折畳式ベッド(福慧ベッド)を紹介した。その災害対策用品はアフリカからの代表に大いに讚称された。
スリランカのメディア代表は慈済ブースを五回も訪れ、福慧ベッドの設計者が生命尊重の配慮をもってこのベッドを開発したことに対して、深く敬服していた。国連の事務員であるイブンサラは、福慧ベッドが病院や遠隔地に適していると言い、耐用年数に関心を示した。
会期中、千百十人が慈済基金会の推し進める「素食し、殺生しない」キャンペーンに署名した。それは誰でもウェブサイトで署名できる。曾慈慧によると、多くの人は一年の初めに願をかけるので、一月十一日をキャンペーンの開始日と決め、一年に一日だけ道徳的な飲食の日を定めるようにしてもらうのだ。そこから次第に一月に一日、一週間に一日、そして最後には毎日菜食するのが目標である。一から無量が生まれ、無量は一から始まるのである。
また、会議スタッフのメリン・イングリッドは素食運動に署名し、同僚にも参加を呼びかけた。彼女は慈済フランスのボランティアと意見交換するために連絡先を交換しあった。これからもっと多くの人の飲食習慣を変えたいと思っている。
フィリピン環境保全部長であるオーガスタも慈済のブースを訪れ、回収したペットボトルから再生された慈済の毛布を持ち帰り部署の人と分かち合いたいと言った。慈済は二〇一三年の台風ハイエンの際に真っ先に支援に駆けつけ、日当を払って被災者自身による町の清掃活動を展開した。「被災者は多くの物を失いましたが、慈済は国際災害支援によって物資の支援を提供したに留まらず、彼らに自分たちの価値を取り戻す手助けをしてくれました」とオーガスタは話す。
気候の変動に対して一人ひとりが何かをすべきであり、素食も一つの環境保全活動の一環なのだ。「地域社会への関心に回帰すべきであり、考え方を変えて地球を護る精神を呼びかければ、気候変動の問題を解決することができると思います」
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2013年、台風ハイエンはフィリピンに重大な被害をもたらした。暴風は沿岸都市を襲い、巨大な船をも海岸に押し上げ、1万人以上の犠牲者を出した。温暖化で温められた海水は台風の勢力を強めた。気候の変動はより頻繁に極端な気象と災害をもたらす。それによって生態系は悪化し、社会は不安定になるだろう。(攝影・莊慧貞) |
温暖化を抑えるには生活習慣から始める
会議の主席を務めたローラン・ファビウス仏外相は、今回の会議を成功に導いた立役者の一人である。二〇一四年にはペルーにスタッフを派遣し、積極的にCO2排出大国と話し合った。
二〇一五年の会議では、「気候変動に対する生活の変革は自分から始める」という概念が生まれた。会場には発泡スチロールや紙コップはなく、ゴミの量は昨年の会議の三分の一になっていた。もっと改善する余地はあるにしろ、今回は最も系統だった人道的な会議であった。グリーンライフ・パビリオンでは人力パソコン充電器や手動ジューサーなどが展示され、人々に日常生活の習慣を適度に変えるだけで、温暖化を抑える力になりうることを教えている。
それよりも重要なのは、政府が地球の温暖化を重視し、協力して実行に移すことである。会期中の十二月九日にフランス議会では全会一致である法案が通った。それは浪費を抑えるために、スーパーマーケットは賞味期限間近の食品を寄付するか飼料や堆肥に再生することを義務づけ、売れ残った食品の廃棄処分を禁じたものである。
ユモゲーラ博士によると、二〇一五年のパリ会議で大まかな方針が決まり、二〇一六年にモロッコで開催される会議でより多くの生活に密着した個別案件が出てくることに期待している。慈済は二十五年前から環境保全活動を始め、宗教と環境保全、科学、教育、人道、健康的な飲食の促進などを融合させてきたが、その成果がより多くの国に重視されることを期待している。
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東京の夜景。世界の半分の人口が都市に集中しているが、エネルギー消費で排出される二酸化炭素は都市が7割を占めている。とくに商業地での排出元はエアコンや照明である。もし、人々が生活習慣や考え方を変えることができれば、それが温暖化抑制力になり得る。(攝影・楊舜斌)
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【地球の現在と未来】
・二酸化炭素は地球を温暖化させている主な温室効果ガスである。
・大気中の二酸化炭素の濃度は2015年に過去最高を記録した。
・2015年の世界の気温は科学者が記録を開始してから最も高くなった。
・過去百年の間に地表温度は1度C上がっている。
・二酸化炭素を排出し続け、気温が上昇し続ければ、海面が上昇して沿岸都市は埋没し、三割程の動植物が絶滅する。また、台風の強度が増したり、真水が減少したりするようになり、気象難民が大量に発生する。
・国際連合国際防災戦略事務局(UNISDR)の報告によれば、過去20年間に気候と関係した災害発生の頻度は増え続け、60万人以上の生命を奪うと同時に数十億人が影響を受け、230兆円相当の損失を出している。
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