人は行く先々で、汚染をもたらしている。
自然とこの世に危機をもたらしている。
人心の浄化に努めなくてはならない。
善の流れから始めるだけでなく、
法輪を天下に向けて回さなくてはならない。
人々に善の心があれば災難は遠のく。
養成委員と慈誠隊(男性の慈済委員)の「ルーツを尋ねる精神研修会」が始まり、各地のボランティアが次々に精舎に帰ってきました。一人一人にこれまでの人生のことを聞いていると、困難にぶつかることは避けて通れなくても、正しい方向を見つけ、この道を歩めば光は見えるものなのだと教えられます。こうして歩くだけで、あらゆる煩悩や人と比較する心が変わり、心から脱皮して新しい人生を迎え、未来に向かって発心立願することができるのです。
真理に出会うのは困難なことです。怠惰、傲慢心や信心喪失の時には、法を聞いても信じられなければ、仏法の門を潜ることは出来ません。『法華経‧方便品』の中に、法華会上で、舎利弗尊者が大衆を代表して、仏に説法をお願いし、三請、三止(三度願い、三度とも断られた)後、仏陀が始めようとした時、そこにいた五千人が、以前説いたものと何ら違いはないと思い、最高の礼をつくして退場しました。
『法華経‧化城喩品』で述べているように、大衆が導師に従って険しい道を進み、真実の境地に近づいた頃、導師はそこに城を作り出して人々を休ませました。しかし、「歩いてきた道はこんなにも険しく、やっと化城に着いたが、この先まだ遠いのだろうか?それより引き返した方がいいのではないか」と思う人がいました。ガイドの導師は順序だてて説得しました「もう直ぐです。宝のある場所はもう近いのですよ」と励ましながら前進しました。
この時の境地は輝いているものです。それで私は常に、道を敷いて切り開くよう言っているのです。慈済は半世紀前に「竹筒歳月」を始めたことから道を敷き、困難ながらも一本の菩提大道を切り開きました。益々多くの慈誠と委員が私と共に平坦な道を敷いて、絶えず人間菩薩を招き入れ、四大志業と八大法印を成し遂げ、今では遍く世界の五大大陸に慈済人がおります。
もしもこの人間の路を歩いてこなければ、菩薩のレールにたどり着くことはできませんでした。ですから皆さんが慈済との縁を大切にするだけでなく、精進するよう願っています。研修とルーツ探訪が終わった後は、認証を受けることになります。そして、自分の使命を理解して道心を堅いものにすべきであると『方便品』に言われているように、肝心な法の核心に迫った時に退席してはなりません。
私は新たに慈誠と委員になる人達に私自ら認証を授けることを大切に考えています。それは天下の使命を一人ひとりの肩に乗せ、人々にもまた責任を担ってもらうことになるのですから。「一つの種子より無量が生じ,無量もまた一より生じる」と言われるように、認証を授ける任務を果たすため私も大変努力しており、日々自分を励まして、一歩ずつしっかり歩いています。
今の私は、話しをするだけでも大変苦労しますが、私には言い尽くせない慈済人や慈済の出来事があります。日々感謝しており、皆が慈済精神を社会に広めて人々の苦痛を取り除き、また菩薩たちが衆生を済度していることに感謝します。皆が初心を忘れることなく、あなたを慈済に招き入れた人を忘れてはいけません。共に道を切り開き、敷いた人間菩薩の道を大切にし、互いに感謝し、尊重し合うことで、この愛の力を代々に亘って伝えていきましょう。
気候の変動が心配になる。
最も恐ろしいのは心の台風であり、
波風もないのに大災禍を引き起こす
十月中旬、台風十九号が猛烈な風と雨を伴って東日本を襲い、河川が決壊して被災後の復旧活動がとても大変なものになっています。同じ頃、米国とオーストラリアで重大な森林火災が発生し、甚大な災害をもたらしました。
天災は予期し難く、滔々たる風雨が押し寄せ、科学技術が如何に発達しても、人は天に勝ることはできません。気候の変動はもちろん気掛かりですが、最も恐ろしいのは心の台風です。風がなければ波は立たず、人心の偏りと情緒不安定による衝突が影響し、些細なことでも重大な災禍になりかねません。
世界各地で発生している天災や人災を見て、自分たちの平安に感謝すると同時に、警戒心を高めなくてはなりません。その実、この世の至るところに危機が隠れているのに、なぜ欲望と快楽の中で彷徨っているのでしょうか?人の行く先々で汚染がもたらされ、人類の未来が心配されます。やはり、人心の浄化に努め、人心と人生の方向が偏ることなく、善の流れと法輪が絶えず世の中で回り続け、一人ひとりに善の心があれば、災難は遠のきます。
自ら身をもって励み、互いに広め合い、一人が一つの家庭に影響を及ぼし、一つの家庭が地域に影響し、地域が社会に影響を与えれば、誰もが心穏やかになり、日々社会に幸福をもたらすことができます。皆さんの精進を祝福しています。
(慈済月刊六三六期より)
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