新型コロナウイルス(COVIDー19)感染症が少し落ち着いて来た。今回の「ウイルス津波」の後に来るのは貧富の差が拡大した「経済津波」である。如何にして簡素な生活を送り、生計が困難に陥っている弱者を助けるかは、全ての人が直面する人生の課題である。
サーズ(SARS)が流行した十七年前に比べると、今は情報技術の普及により生活が便利になったことが感染症のもたらした衝撃を小さくしてくれた。例えば、仕事は在宅勤務で、学校はオンライン授業で対応でき、買い物や料理は注文すれば配達してくれる。インターネットの繋がりが人々の生活ニーズに応えるようになったのだ。
一方で自宅待機は社会の変化に翻弄される人々を生み出した。ネット操作の経験に乏しい高齢者や生活困窮者には利便さをもたらさないからだ。ネットを使わない職種に就いている人は失業や減給のプレッシャーに晒され、それにつれて生活と医療の面で不安を抱える家庭も増えている。
国際NGOのオックスファム(Oxfam)は警告を発している。緊急の生活支援措置を取らなければ、感染症終息後は世界の人口の半分近くが貧困に陥り、一部の国は三十年前の経済水準に戻るだろう。アメリカの哲学者ジュデイス・バトラー教授の鋭い指摘によると、ウイルスは差別なく誰にでも広まるが、富を追求する資本主義社会の風潮は、逆に差別を生み出す要因となり、人間の平等な価値を否定しているという。
感染が拡大している間、国内外の慈済人は様々な困難を克服し、輸送手段を募って医療や食品を含む防疫物資を六十数カ国に送り、同時に緊急支援措置を打ち立てた。例えば、證厳法師の指示の下に、慈済のケア世帯や生活が改善して既にケア世帯ではなくなった貧困家庭、外部から支援が必要と報告された人などを査定した後、経済、教育、家屋の修繕、生活用品や医療ケア等の援助を行っている。感染拡大が深刻なアメリカでは、失業者が一気に二千万人余りに上り、慈済人は防疫物資の不足している病院や診療所を支援するだけでなく、元受刑者を含めた人たちにも食糧を提供している。
本期の主題報道では、国内外の慈済人が感染予防に力を注いでいる様子を取り上げて詳しく紹介している。台湾のボランティアが引き続きケア世帯を世話すると共に、政府の在宅隔離者の電話訪問にも協力しているケースや、フィリピン等の東南アジア諸国では外出禁止令が出ている中、ボランティアは知恵を絞って貧困者に米などの食糧を届けている活動などがある。
また公共衛生体制の整備が遅れているアフリカ・モザンビークでは、ボランティアが政府の要請を受けて地域を巡回し、衛生教育を指導している。街で速乾消毒液やアルコール消毒液が手に入らないため、ボランティアは石鹸と水の入ったバケツを用意して正確な手洗い方法を教えたそうだ。
地方の実情に適した様々な感染予防における協力の中で、大衆の心が一つになり、利他の力を目の当たりにした。こうして新たな人間関係が示され、真の平等な互助が達成されて、新しい歴史の一ページとなっていく。
(慈済月刊六四三期より)
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