慈濟傳播人文志業基金會
トルコに安住を得て

トルコとシリアの子供たちの心に善の種子を植えよう。

将来、彼らが成長した暁に、言葉や文化の違いを超えて、

愛と善で対立をなくし、その循環が永遠に続くために。

 

二〇一一年三月、シリアで内戦が勃発して以来今日に至ってもまだ平和が訪れる兆しは見えない。千日以上も難民は戦火を逃れるため、様々な手段を使って近隣国への避難を試みている。平和な世界にいる私たちは、戦争がいかに残酷なものか想像するのは難しい。

テレビの前に座ってこのニュースを見ていた私は、彼らのために何かしてやりたいと思う一方、何もできない無力感に襲われ、ただ彼らが無事にヨーロッパに逃れられるように祈っていた。

昨年の十月十六日から二十三日にかけて私の生活に変化が起きた。慈済シリア難民支援団に参加してトルコに行くことになったのだ。トルコではシリア難民を温かく抱擁して慰め、彼らの苦しみに耳を傾け、彼らと共に涙を流し、涙を拭った後、一緒に歌を歌いながら手話を披露すると、彼らの顔に笑みがこぼれ笑い声までが起こった。

台湾から十三時間のフライトを経て、私たちは十七日の早朝五時にイスタンブール空港に到着した。空港からメナハイ小中学校へ直行し、時差もすっかり忘れ、配付の準備に没頭した。私たちが到着する前に配付活動の段取りをすべてしてくれた胡光中、余自成、周如意各氏の慈済ボランティアに感謝した。彼らは長年にわたってトルコで奉仕している。

この度も彼らは種々の困難を乗り越えて、トルコのサルタンガジ市長と教育局長に学校の教室を提供してくれるようお願いしてくれた。シリアの臨時教職員が作成した授業計画を難民の子供たちに行い、台湾慈済基金会が学資援助を提供することになっている。トルコ人、シリア人、台湾人の間のイスラム教と仏教の壁のない誠心誠意の交流は、身内のように親しかった。

この度の難民配付は三つに分かれている。

一、メナハイ小中学校の児童にクレヨン、鉛筆、ボールペン、鉛筆箱とクラスごとにボール、積み木、フリスビーを配付する。

二、千五百世帯のシリア難民に米、砂糖、食用油など十六種類の生活物資と現金カードを配付する。

三、百五十二人の難民児童に家庭生活補助金を配付し、工場で働いていた賃金の肩代わりをし、子供たちを学校に戻らせた。これは前例のないことで、シリア人の父母は信じられず、やっと探し当てた仕事をやめるわけにはいかないと考えていた。学校を見にきて実際に目で確かめた後、補助金を申請した。

バイト児童の生活補助金配付の会場では、八歳から十四歳の児童や父母たちが壇上に上がって喜びを述べていた。

「私は一日十二時間の仕事をしていました。朝の八時から夜の八時まで働きづめで、トイレに行く時間はたったの十三分。動作がおそいと叱られたり殴られました。今は慈済からバイトの代わりの補助金を頂いて仕事をせずに勉強ができます。ありがとう慈済、ありがとう台湾」

「私は家にお金がなく、家庭を助けなくてはならなかったので学校に行かれず、とても悲しかった。これからこの貴重な機会を大切にして一生懸命勉強して成績で一番を取ります」

「私の娘は学校へ行きたかったが、家のため仕事をしなければなりませんでした。以前の学校では成績が良かったのですよ。今は慈済から八百リラ(約三万一千円)の助学金を頂き、勉強を続けることができます。とても慈済に感謝しています。アラーに感謝を」

「私の長男は二年半も早朝から夜遅くまで仕事に出かけて、とても心苦しかった。今は勉強の機会を下さってありがとうございます。この子が大きくなったら成功して、あなたたちのように人を助ける人になるよう願っています」

「私は妊娠して仕事を探せなかったので、息子が仕事をしなければなりませんでした。でも、今息子は学校に通い、私は安心して家にいることができます。主アラーのご加護があなたたちに賜るよう祈っています」

配付が終わって家庭訪問に行った時、どの家庭にも言い尽くせない悲しみがあった。十四歳のカサンの家に行った時、この子は私たちのためにコーヒーを入れてくれました。母親が心配そうに父親の病状を話しているのをそばで聞きながら、手の指先をもんでいるのを見て、この子もどんなにか心配しているか分かり、私の傍へきて座るように言って肩を抱きしめました。お別れの時、カサンは一生懸命勉強して、将来は技術者になって工場を持ち、家の大黒柱になって温かい家庭を築くのだと私たちに約束した。

 

慈済ボランティアがメナハイ学校のカサンという学生の家庭を訪問した。母親と一緒に病気の父を世話していることを聞き、ボランティアが抱擁して励ます。(撮影/李美儒)
 

 

配付をしている時、正午になると教育局長のとりはからいで、それぞれの学校の食堂で生徒達との交流があった。局長は私たちを、台湾からきたボランティア団体だと紹介し、続いて「慈済の竹筒歳月の記録」と難民をレポートした「星空の下に愛」というドキュメンタリーが放映された。

教育局長はこの機会にトルコの学生たちに愛の心を啓発し、彼らがシリアの児童に対して何ができるかと聞いた。学生たちは活発に手を挙げて、着られなくなった服をあげる、勉強を教える、おもちゃをあげる、彼らを愛する、などの発言が飛び出し、子供たちに愛といたわりの気持ちがあることが窺われた。

何年か後トルコの子供が成長し、シリアの子供も成長した後、言葉や文化の違いによる対立は解かれ、互いに排斥し合う状況はなくなるだろうか? 早くから子供たちの心に愛と善の種をまき、健やかに芽生えることができれば、愛と善がお互いの仇や恨みをなくし、愛と善の循環は永遠に続くだろう。シリア難民が日々安らかになり、トルコで安住を得て一家団欒の幸福に浴するよう祈る。

 
NO.229