慈濟傳播人文志業基金會
カナダの山火事 悪い知らせも良い知らせも

彼女は大きな瞳を光らせて、微笑みながら、私の話を真剣に聞いていました。

私はしゃがんで、この六歳くらいの女の子に向かって、「愛の竹筒貯金箱にコイン一枚を入れましょう。自分や家族、そして世界中の人々を祝福しましょう。それはとても大切なことです。そして、いつかきっとあなたも愛のつまった貯金箱で人を助け、愛を広めることができるでしょう」と話しました。

「あなたは愛の貯金箱がほしいですか」、と聞くと、彼女は頷きました。そして私から竹筒を受け取ると、胸に強く抱きしめた。私は彼女の肩を抱いて、「あなたは今愛の力によって豊かになりましたよ」と話しました。

愛によって豊かになった女の子は、物質的にはほとんどすべてを失っていたのです。雨風をしのぐ家もありません。私はこの日、家族と一緒にエドモントンの急難救助協会の物資配付センターで日用品を受け取りにきた彼女に出会いました。

二〇一六年五月、カナダのアルバータ州で山火事が発生し、六月上旬までに延焼した面積は五十八万ヘクタール、およそ台北市二十一個分の面積を超えました。なかでもフォートマクマレー市の火災が最も激しく、火の勢いがなかなか収まりませんでした。被災地のほとんどは森林とはいえ、約二千四百棟の住宅が焼け、十万人以上の住民が強制的に避難させられました。

家が灰と化した事は、その人にとって瞬時に全てがなくなったのに等しいことです。緊急避難をさせられた住民達は、わずかな時間で重要な書類などをわしづかみにし、簡単に荷造りするしかありませんでした。アルバータ州の州都エドモントン政府は、エドモントン急難救助協会に委託し、寄付物資を募って物資配付センターを設置し、被災者に日用品を提供していました。

カナダのバンクーバーに在住する慈済ボランティアは五月十六日から物資配付センターに入り、寝具やタオルなどの配付を始めました。現地では朝晩は気温がかなり冷え込み、摂氏四度前後でした。台湾花蓮の慈済本部から緊急に四千本のエコ毛布を四回に分けて空輸し、逸早く被災者に温かさを提供しました。

愛の貯金箱は、子供には不思議な力を持たせました。大人達にとっては、いつかまた立ち直れると信じる自信を持たせる祝福となりました。私は「慈済ステーション」で物資を受け取った女性に、愛の貯金箱を紹介しました。彼女は最初私が募金を募っているのだと思い、「わかったわ」としぶしぶお金を入れようとしました。

「いえいえ、違うんです。この貯金箱はあなたに差し上げます。愛によって豊かになって、いつか立ち直ることができたら、この愛を広めてほしいのです」と私は慌てて説明を加えました。

彼女の表情はたちまちゆるみ、微笑がこぼれました。竹筒の貯金箱を受け取って、私に、「私は必ずそうなります。これは私の幸運の印ですから、大切に取っておきます」と話してくれました。そうです。私も彼女はきっと立ち直って愛を広めることができると信じています。

 

物資が不足していてもせめて心を明るくしたい

 

配付センターはいくつかの大きなステーションに分けられて、それぞれ違う種類の衣服や生活用品を配付していました。被災者は一つのステーションに着いたら手早く必要な物資を選んで受け取り、すぐに次のステーションに向かわなければなりませんでした。「慈済ステーション」で配付しているエコ毛布は柔らかく、被災者に大好評でした。

慈済ボランティアが毛布を両手で差し上げる際、「これはペットボトルをリサイクルして作ったのですよ」と紹介すると、みな驚いた表情を見せてくれました。

カナダが史上最大の山火事に見舞われて以来、物資の需要は想像以上に高まっていました。エドモントン市内では枕やタオルなどの日用品が不足していました。エドモントンの慈済ボランティア全員が市内を探し回り、十六軒の店で約三百個の枕を仕入れた日もありました。そのため、バンクーバーにある慈済カナダ支部は、知恵を絞って、複数の大手メーカーに枕とタオルを発注し、急遽配付センターに送りました。

しかし、品切れとなる場合がやはり出てきました。ある日の午後、在庫のタオルをすべて配付し終えた時のこと。私はある老婦人に付き添って、毛布と枕を受け取りに行きました。タオル受け取りのカウンターで伝えました。「悪い知らせがあります。バスタオルは今品切れです。でも、良い知らせもあります。フェイスタオルはいろいろな色がありますから、お好きなものを選んでいただけますよ」。老婦人はがっかりした様子でしたが、自分の好きな色のタオルが選べることには満足した様子でした。

あるアフリカ系の女性が何枚か違う色のフェイスタオルを選びました。私は寄付された椅子カバーを指し案内しました。「椅子カバーはいろいろな色があります。どうぞ好きなのを選んでください」と薦めましたが、彼女は悲しそうな声で、「私は椅子は持っていません」と答えました。少し喜ばせようとして、私はやや強気で彼女に言いました。「良い知らせは、無料の椅子カバーがあることで、悪い知らせは……」。彼女は大笑いして、「私が椅子を持っていないこと、ね」と冗談を言いました。

次のステーションに向かって歩いてゆく彼女の笑い声が響いていました。私は彼女の後ろ姿を見て、慈済ボランティアが被災者に渡しているものは、急用の物資だけではなく、愛や慰めや希望、励ましなど最も大切なものであることを、深く体得しました。

 
<慈済援助の統計>
 
配付した物資:
毛布5509枚、枕6014個、バスタオル6807枚、フェイスタオル12028枚
配付を受けた人数:
13,234人
NO.236