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人々に交じってはじめてどうやって貧困を支え、苦しんでいる人を助けることができるかが分かります。心して苦しみの原因を理解すれば、自ら警戒心を持つことができるのです。
因縁果報に警戒心を持つ
三月二十五日、志業体の管理者たちは事務報告の時に「長期ケア」の話に及びました。上人は、「時代と社会の変化に伴ってこの世には違った種類の苦しみが生まれています。実際に群衆に交じり、観察して初めて貧困を支え、苦を助ける方法を理解することができ、それと共に理に適った行動が取れ、そこから欲念を打ち破って心を開き、社会で無私の奉仕ができるようになるのです」と言いました。
幸運と良縁に恵まれて生まれた人は平和な環境で成長しますが、それを当たり前のように思い、この世の苦しみを理解していません。機会があれば、慈済人たちと一緒に家庭訪問したり、独居老人の世話をすれば、この世にはまだ、こんな苦しい人生があることを知り、自然と慈悲心が起きて苦難に喘ぐ人に手を差し伸べると共に、彼らの苦しみの原因を理解し、自分にも警戒心を持つようになるのです。
また、上人は慈済創設時のことに言及しました。当時、台湾民衆の生活は全般的に裕福でなくても心は非常に単純で、社会には数多くの人が支援を必要としていることを知っており、一日に五十銭貯金すれば人助けができることを聞くと、皆、喜んで呼応しました。今は数十年前に比べて生活は格段に良くなりましたが、心の持ちようは変わってしまいました。大衆に善行することを呼びかけても、今の世の中には既に貧困者は存在しないから奉仕したくないと思う人が数多くいます。しかし、実はそういう人に出会っていないだけで、存在しないのではありません。
一昨日、静思生活キャンプの修了式で各国の実業家たちがアフリカのサイクロン・イダイによる大災害を目にしました。アフリカ慈済人が視察時に撮影した苦難の様子の映像が流れ、「貧困者が貧困者を支援する」感動的な事実を知ったことで慈悲心を啓発され、自発的に慈済人と共に支援に行きたいと申し出ていました。上人は因縁果報の仏教道理で以て、福は自分で作るもの、業は付いて回ることを教え、福のある人はその福を享受するだけではなく、絶えず奉仕することで福を作らなければいけないと開示しました。そして、一歩踏み込んで、福を作って享受する考えを飛び越え、見返りを求めない奉仕をするこの世の菩薩になれば、心は軽やかで自在になり、慧命は成長するのです。
衆生の仏性が現れる
アフリカの慈済人は少人数で広大なサイクロン被災地を支援していますが、被災者数が多く、様々な困難に直面しています。二十六日、花蓮本部はアメリカの黄思賢師兄、アフリカ・モザンビーク、ジンバブエの慈済人とネット会議を行いました。その時、上人は慈済人に視察と支援の苦労を感謝すると共に健康に気を付けるよう念を押しました。
昨年、南アフリカのボランティアが初めてマラウイを訪れた時、チンゴンべ部落の酋長は初め、側から冷たい目で見ていましたが、やがてボランティアたちが誠意で以て村民の世話をしているのを見て徐々に態度を軟化させ、遂にはボランティアとして一緒に貧しい村民を支援するようになりました。
今回の災害発生後、以前に結ばれた縁が大きな効果をもたらしたのです。南アフリカの潘明水師兄が多国籍支援チームを引き連れて災害の視察と配付を行った時、酋長は村民を動員して酷く損壊した村民の家の再建を手伝いました。上人は報告動画を見て、「村民たちは自分も被災しているのに、喜んでもっと大変な人の手伝いをしています。その村には衆生の仏性が現れており、誰でも菩薩道を歩むことができることを示しています。とても感動しました。このマラウイの人たちは世話するに値し、彼らともっと深く良縁を結ばなければいけません」と大いに称賛しました。
南アフリカの慈済人はマラウイに災害支援に行くだけでなく、毛布と蚊帳などの物資をモザンビークとジンバブエまで運んで支援しました。異なった宗教の団体とも協力し合い、アフリカ各国の慈済ボランティアは「合和互協」という慈済の精神でこの三カ国の災害支援に臨んで欲しいと上人は言いました。中でも南アフリカのボランティアは一番多いので、経験が豊富であっても更に励み、機会を逃さず若い世代は出来るだけ参加し、それだけでなく責任を担って若者が若者に悟りを開かせるようにすることが大切です。
ジンバブエもモザンビークも被災地は慈済人の住んでいる地域からは遠く、交通も不便で、道路はぬかるんでおり、移動は困難を極めました。モザンビークのディノ師兄たちは北に千キロ余りのところを訪れました。また、ジンバブエの朱金財師兄とボランティアたちは車にパンと浄水剤などの物資をいっぱい積んで、十数時間掛けて被災地にたどり着きました。
「視察と緊急支援の後は後続の支援活動を行わなければなりません。その道のりは長く、やらなければならないことはたくさんあるのです。この世の菩薩道はとても長く、皆が大きな願力を持つと共に堅い意志と健康な体で広く人間菩薩を募り、より大きな力を結集して広く遠く歩むことで、苦難に喘ぐ衆生に最も必要としている支援を与えなければなりません」と上人が言いました。
(慈済月刊六三〇期より)
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