台湾の骨髄ドナー登録率は非常に高く、世界の模範である。
彼らは医療段階での恐怖に打ち勝って自ら苦痛を忍び、
見返りを求めず見も知らぬの患者を助け、患者とその家族に生きる希望をもたらしている。
統計によると、世界では三分に一人の割合で血液疾患と診断され、その中の一部の白血病患者は唯一骨髄移植して生き延びるしかない。残念なことにこの治療には医療技術の他、それ以上に人類の白血球抗原(HLA)のマッチングと同意するドナーがいなければならない。そのドナーはあなたかもしれない。
血液疾患患者の親族に適合するドナーが見つからない時、志願登録したドナーの血液データがある骨髄バンクが彼らの唯一の生存のチャンスとなる。一九九三年、慈済は政府の要請を受けて「慈済基金会骨髄寄贈データセンター」を設立した。台湾唯一であると同時に、アジアの骨髄バンクの先駆けの一つとして、全世界の中華系白血病患者の希望を担った。
二〇一五年末現在、全世界で二千七百万人弱が骨髄ドナーの登録をしている。世界の人口を七十億人として計算すると、二千三百万の人口を抱える台湾が四十万人のドナーデータが骨髄バンクに登録されていることは、優に世界平均の四・五倍に当り、ドナーの愛の密度の高さは世界の模範と言える。
慈済骨髄バンクはこの二十二年間に四千例以上の移植を行ってきたが、その中の三分の一は台湾の患者である。命の血縁は何と不思議なものか。その他は二十九カ国の患者が恩恵を受けた。
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二〇一五年、慈済骨髄バンクは三百七十五症例のマッチングと移植に成功した。言い換えれば、平均して毎日、善意の人が顔も知らない血液疾患患者を救ったことになる。
今、世界では毎年、数万症例に及ぶ骨髄移植が行われ、白血病やリンパ癌及びその他悪性疾患患者に生存の機会を提供している。一般に言われてきた「骨髄移植」に於いて、幹細胞の出所は「骨髄幹細胞移植」、「末梢血幹細胞移植」または「臍帯血幹細胞移植」であるが、今では一般的に「造血幹細胞移植」という名称に統一されている。慈済骨髄バンクは二〇〇二年、名称を「慈済骨髄幹細胞センター」に改め、その下に免疫遺伝子実験室、臍帯血貯蔵庫、データバンクなどがある。
骨髄データバンクは常にアップデートする必要がある。それは登録したドナーが歳を取ったり、病気や他の原因で寄贈に適さなくなったりするため、最新のデータを入力する必要があるからだ。それ故、慈済は毎月、台湾全土で「骨髄ドナー登録活動」を展開して、絶えず若い人を募って、マッチングの成功率を高めようとしている。
データバンクは患者とその家族が新たな人生を切り開くきっかけを温存しているだけでなく、密度の高い大愛に満ちている。集められた小額の寄付金で高額な検査や一連の医療行為及び事務費用などをカバーしている。世界各国の団体で運営されているデータバンクは多かれ少なかれ政府から経費の補助を受けているが、台湾の慈済骨髄バンクは全部、民間組織と善意の寄付金で賄われている。
それだけに留まらず、最初の宣伝活動からマッチングした後の本人との連絡や寄贈するまでの付き添いなど諸々の作業は慈済ボランティアに任せられている。慈済「骨髄寄贈ケアチーム」はドナーと患者の双方が一連の過程を終えるまで付き添い、人助けするドナーは尊重の下に、続けて健康状態を追跡する。ボランティアは患者とその家族も世話し、仮に生活に支障をきたすようなことがあれば、慈済基金会にケース報告をし、家庭訪問後の評価を経て経済的な支援を提供する。
「慈済骨髄幹細胞センター」は大衆の支援と愛護を必要としており、そこで初めて血液疾患患者とその家族は希望を見出すことができる。
移植を受けた患者の声・黄采緹
私の血液には愛が詰っている
七年前、私が三十歳の時、突然、腹痛に見舞われて救急外来に行った時に白血球の数値が低いことが判明しました。血液腫瘍科で検査してもらったところ、急性骨髄性白血病と診断されました。私は頭が真っ白になり、病院の椅子にぼーっと三十分間も座って、これは夢なのだと自分を騙しました。タバコもお酒も飲まず、水泳の選手なのだから絶対にそんなことはない。心の整理がつかないまま、入院して治療を始めました。入院前夜に食事してから次の食事はその十四日後でした。というのも、高濃度のキーモセラピーを行ったため、丸二週間、吐き続け、ベッドから下りる力もありませんでした。
キーモセラピーを終えた後も再発し、医師は余命二ヶ月だが、骨髄移植すれば助かるかもしれない、と言いました。しかし、二人の兄の血液は私とはマッチングしませんでした。本当に幸運だったのは、私が慈済の有る時代に生きていたことで、慈済骨髄バンクでマッチングしたドナーが見つかったのです。しかし、ドナーが寄贈を拒否したと医師に告げられた時は天国から地獄に突き落とされたような感じでした。二人目のドナーが見つかり、その人は寄贈意欲がとても高かったのですが、健康診断した時に糖尿病に罹っていたことが分り、不適格となりました。そして、やっと三人目とマッチし、移植が成功しました。
この数年間、この病気で四百二十三日も入院していました。自分で排泄物を処理することもできず、便座のある椅子を使うしかありませんでした。七十歳になる父が私の便器を清掃するのを見て、肉体的な苦痛だけでなく、精神的にも心理的にも苛まれ、苦しみました。
八回の入院で、キーモセラピーと骨髄移植を行いましたが、二度、生命を危ぶむほどの感染症に罹った他、一度は大がかりな頭部の手術を行いました。時々、生きて退院できるのだろうかと思いました。その過程で、絶望的になり、病床から両親に別れを告げたこともありました。
生命はカウントダウンしており、シートベルトをせずにジェットコースターに乗っているようなもので、無常が追いかけて来るのをつくづく感じました。こういう病気を通して、患者が助けを待つ気持ちと肉体の苦しみを理解しました。今、私の体に流れる赤血球や白血球、血小板にはドナーの愛が詰っています。私は愛を伝える者として終身、ドナー登録を呼びかけるボランティアになり、慈済ボランティアと歩みを共にし、あらゆる所で人助けの理念を分かち合いたいと思います。
慈済は毎月、異なった県や市で骨髄ドナー登録活動を行っており、ボランティアは街頭で道行く人々に宣伝し、呼びかけています。あなたにも善行するチャンスが訪れた時、それを拒否しないでください。拒否されるのは助けを必要としている人たちなのですから。
移植の過程は辛くて危険性もあるが、数多くの患者は最大限、努力して生きる望みを託しています。彼らを慰めるだけでなく、行動に移すことで、彼らに生きる僅かな望みを探す手伝いをしましょう。年の瀬を迎えるに当たり、私は相手の身になって、生死の境を彷徨っている人々が健康を取り戻し、退院して家で年越しの団欒ができることを期待しています。 (資料の提供・人文真善美ボランティア)
┃骨髄寄贈三部作┃
1.ドナー登録活動の情報に留意
造血幹細胞は感染症に対抗する白血球と酸素と養分を送る赤血球、血液凝固の機能を持つ血小板とに分けられる。血液疾患患者の骨髄は造血の働きが弱く、生命に危険を及ぼす。造血幹細胞移植とは、健康な造血幹細胞を患者の体内に移植することによって、新たに健康な血液細胞と免疫系統を作り出す。
もし、街頭で「骨髄寄贈・人の命を救えて自分には無害」と書かれたプラカードをもった慈済ボランティアを見かけたら、近々、その地区でドナー登録活動が行われることを意味している。それに参加する前に、自分で符合するかどうか評価してみるとよい:
1、満十八歳から四十五歳までの人。
2、家族の同意を得られる人。
3、来場時は写真付きの身分証明書を携行し、別の連絡先二人の氏名と連絡方法を提供できること。
4、B型肝炎ウィルスキャリアまたは高血圧、糖尿病、ヘモグロビンが異常に少ない人は寄贈者と患者の双方の健康に配慮して不可とする。
2.ドナー登録活動に参加する
活動会場ではドナーや患者及び専門医療人員が解説している。詳細を理解した後、人類白血球抗体(HLA)の検査で十CCの採血を行い、造血幹細胞データバンクに登録する。データの保存期間は五十五年で、マッチングして人助けするチャンスが訪れる可能性がある。ドナー登録した人で、連絡方式が変った場合は自主的に慈済に変更届をしてもらえれば幸いであり、マッチングした時に直ぐに連絡が着き、いち早く治療することができる。
台湾では、血液疾患に罹るとマッチングするドナーを探すことが困難な人の部類が幾つかある。客家人と先住民及び移住者の子孫であるが、それらに関連した部類の人は積極的に登録してもらいたい。
3.造血幹細胞の寄贈
慈済造血幹細胞センターは移植する病院から申請があると直ちにマッチング対象を探す行動に移る。もし、初期的なマッチング符合者が見つかれば、慈済「骨髄寄贈ケアチーム」のボランティアがドナーを訪問し、一連の過程を説明する。即ち、ドナーが再度血液検査を行い、それが適合すれば、健康診断に進み、その後は患者の病状に合わせて寄贈の準備をする。
最近は多くの場合、「末梢血幹細胞寄贈」の方式を採用している。寄贈する五日前から毎日、顆粒球コロニー刺激因子(GーCSF)を注射して、骨髄より末梢血へ多量の造血幹細胞を送り出すようにする。採集過程は血小板を献血する時に類似しており、片方の腕の血管から採血して分離器に送り、造血幹細胞を収集してからその血液をもう片方の腕の血管に戻す。所要時間は六時間から八時間である。
患者が非親族間骨髄移植を行う場合、ドナーからの採集関連費用は十一万元である。しかし、患者が経済的に困難である場合は、慈済基金會に費用の補助を申請することができる。
患者の健康状態はドナーにとってとても気になることだが、疾患の種類やキーモセラピーを受けた回数、年齢などの要因によって移植の成功率は変わってくる。ドナーの無私の奉仕が患者に最大の希望をもたらす。
(慈済月刊五九0期より)
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