時間を大切にして
善行の意志を堅固にしよう
愛の温もりで、凍てつく寒さを和らげよう
亜熱帯の台湾が猛烈な寒波に襲われました。平野部の気温がなんと摂氏零度以下にまで下がり、台湾の至る所で凍ったように感じられました。精舎の後方の山頂にも雪が積もりました。
上人は二十一日間の行脚を経て精舎に戻られました。朝会の時、「今回の寒波の威力はすごいものでした。寒いという感覚を通り越して、体が凍えかたまった状態なのです。台湾でさえ厳寒の厳しさを味わっていたのですから、ましてやもっと寒い地域では、貧しい人は耐えられるでしょうか」と上人は心配されました。
「高い山に雪がたくさん降ると、珍しい雪景色を一目見ようと多くの人が訪れます。そのような時に、街角で寒さに喘ぎながら耐えている貧困者たちは、この寒波から逃れられる暖かい居場所を見つけたい一心でした」
各地の慈済ボランティアは、冷たい風雨を耐え忍びながら、街角のホームレスのケアに奔走していました。台中の名誉董事チームでは、温かい食物や生薑汁、マフラー、毛布などを自らホームレスの元へ歩いて配って回りました。同行したソーシャルワーカーは彼らに、「寒波の間は収容センターで過ごすように」と説き勧めました。台南のボランティアは、人医会と人安基金会と手を組み、町の地下道に住むホームレスに施療を行いました。そこでは、多くの人が風邪気味のようで、医者の診療を受けており、薬剤師が薬を配るなどの迅速な支援ができました。
また、高雄の人医会は実業家のボランティアと一緒に高雄県内の甲仙の山間部に入り、独居老人に施療をしたり、住まいを清掃したりしました。さらには屋根の雨漏れを修繕し、部屋の壁塗りなどを行いました。
「台湾はまさに愛と善が満ち溢れた島です。慈済ボランティアは、私心をなくして素直に路上生活者のように困っている人たちのために、愛を込めて支援に携われることに感謝したいのです」と上人はおっしゃいました。
今回の災難は極端な気候変動がもたらしたものだと思います。この事実を私たちにはもはや無視してはなりません。「人びとは無私の精神をもっと高め、地球を愛し、苦しむ人を思いやるようにするべきです。そうしなければ、世の中における人と人との情は薄くなり、冷淡になったり、また自分の意思に逆らうものを恨んだりすれば、もっと深刻な災難になりかねません」
いまだに状況に気づかず悠々自適に過ごしている人は大勢いるようです。「人々はもっと心を清めるべきです。いつもみなに言っていた『急がなければ』、『地球を救おう』という言葉が、私の痛切な訴えなのです」と上人は心配そうに諭されました。
自分自身が手本を示し
善の家風を後世に伝える
台北のボランティア、八十歳の陳阿秋さんとその妻七十歳の陳呉雪さんは、一男七女の子供を授かりました。二人は墓守りの仕事をしてきました。また、そのかたわらに日雇いの仕事をしたり、田んぼの農作業をしたりして十人家族を養い、生活には決して余裕はないのですが、一家は苦しみを感じず平穏に暮らしていたのです。一九九三年に慈済に出会いました。以来二十三年間、彼らは善を行い寄付するため、毎日三百元(約千円)を貯金することを心に決めました。また、仕事場では環境保全活動として廃棄物を回収したりもしました。息子さんは物分かりもよく、両親の教えを心にして、タバコや酒や檳榔などの悪習に身を染めませんでした。そのうえ両親の善行を見習って、就職してからもお金を貯めては寄付したのです。
陳阿秋さんは長年背骨が横に傾いた持病に苦しんでいましたが、昨年十一月に台北の慈済病院で手術を受けました。ようやく回復した陳さんは、年末の祝福会に夫婦揃って檀上に立ち、長年の苦しみを楽にしてくれた医師に厚く感謝の意を述べて、その喜びと感動を絶やさず笑顔で表していたのです。
「親が自ら手本を示せば、子供も自ずと親の行いを真似していくのです。陳さん一家の生活にはどれほどの辛労があったでしょうか。そして慈済の活動においても、さまざまな不都合なことがあったことでしょう。でも彼らはそうした困難から逃げ出さず、受け止めていく決意を固めて、日々喜んで奉仕していました。ここまでやり遂げられた秘訣は、『心を寛仁に、考えを純粋に』との心持ちでしょう」と上人は、嬉しく諭されました。
桃園にある高齢のボランティア、九十歳の黄洪栖さんは、七十五歳の時に慈済委員(慈済の幹部ボランティア)になりました。慈済委員になった時、自分に残された奉仕できる時間は限られていると自覚しているのです。ですから毎日積極的にボランティアの活動に打ち込んでいました。早朝の三時半に家を出て地域の道場へ通い、朝の勤行を通して法の薫りに浸ります。それから、道場での清掃作業や食事作りに尽くして、充実した一日を過ごされました。
「慈済の菩薩道は、年齢を問わず誰でもが、愛と能力を限りなく発揮して果てしない奉仕ができるのです。だから奉仕するうちに智慧が開き、定まった力を得て、正しい人生の方向に邁進して行きます。たとえ日々忙しくとも心は愉しく、元気よく大地のため、そして人びとのために奉仕するのです」と上人は、時を大切に善用する年配のボランティアたちを褒めたたえられました。真に「時間経済学」の模範です。
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