雲林や彰化などの地方には、伝統的な竹組みの家が残っている。壁面が竹と泥で作られていて低コストな建築法は、豊かでない時代の台湾人を支え続けて来た技術を見ることができる。
ボランティア達は修繕する時にうっかり壊してしまわないよう、家主の許可を得て打ち合わせをし、細心の注意を払ってその原型を保つよう心がけている。そうすることで古い建物が伝える歴史という徳の芳香を受け継ごうとしている。
竹で骨組みを作った壁面を残しながら新たに鉄筋で補強すると、レトロとモダンの両方の要素を兼ね備えた建造物に生まれ変わったかのよう。
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台湾中西部彰化県の渓州に住む陳さん親子。「安心して住める」と、修繕された竹組みの家に大満足。ご近所も皆で工事の様子を見守ってくれたので、スムースに修繕が行えた。 |
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黒ずんだ竹を淡いオレンジ色に塗り替えると、家の表情に色彩が加わった。彰化県の二林にある旧呉邸。青い空の下に佇む趣のある古民家は、この地区の観光スポットにもなっている。
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屋根瓦の修復
伝統的な煉瓦造りの家では屋根瓦に穴があくと水が漏るので、瓦を取り除いてトタン屋根にするという手っ取り早い修繕方法もある。しかし中部の慈済ボランティアは、まるで外科医のように注意深く傷んだ箇所をいたわり、補填をして、この建物を救おうと力を尽くした。安易に義肢に取り替えたりしなかったのだ。
ボランティアたちは屋根瓦の職人に頼み、伝統的な工法で瓦を補填したあと防水措置を強化してもらった。すでに数十年の齢を重ねた古い家屋をそのままに、瓦の姿も百年の歴史を持つ技術をもって蘇らせたのである。台湾の伝統建築の美学を保存した事業といえるであろう。
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古民家の瓦は歳月には勝てず、度重なる台風の襲来もあって傷みが激しい。雲林にあるこの家は、壁は朽ち果ててはがれ落ち、屋根は雨漏りだらけなので、床にいくつもバケツを置いて水を受けている。もっとひどい箇所は屋根にビニールをかけて雨をしのいでいる。 |
室内は快適に
台湾は近代的な高度成長を遂げたとはいえ、まだまだ地方には貧困層が存在し、生活するのに最低限の設備を供えていない住居が多い。居住空間も狭く、片づける観念もなく、日々の健康にも影響している。
慈済ボランティアは住居の修繕を援助しながら、その家の空間に合わせて必要な家具を取り寄せる。例えば外食に頼らず自炊できるようにガスコンロを設置したり、冬に冷たい水で入浴しなくていいように湯沸かし器を設置したりするのだ。また、三世代が同居している家庭では子供の数も多いので、希望を聞きながら修繕の際に部屋の間仕切りをするなど、プライバシーが守られるよう配慮する。
修繕を重ねる間で大切なことは、そこに住む人たちと互いに心を通わせながら幸せの形を実現していくことなのである。
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雲林県の四湖に住む曽さんは、幼い頃から重度の下半身麻痺を患い、数十年間床の上をはって移動する生活を続けて来た。就学することもかなわず字も読めない。しかし明るく純朴で正直な彼は、電動車椅子に乗ってお寺で金紙を売りながら自力で生活している。慈済ボランティアが彼のために家を修繕した時は、便器の高さを調節し、室内をバリアフリーにするなど、生活しやすいようにした。 |
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