近年、台湾は高齢化社会に歩み入り、高齢者問題がさまざまな場面で討論されている。政府は今後十年間の福祉計画を立て、今年から実施している。少子化と高齢化の強烈な対比に、国民は心構えを持ち、臨機応変に対応する必要がある。
伝統的な社会観念では、年長者は家庭や社会で尊敬され、智慧の象徴、文化の伝承者と見られてきた。農業や手工製造業が主な産業であった時代、年長者の経験を次の世代に伝授し、指導する役目を担ってきた。
だが、工業化と資本経済が進むにつれ、生産力について新たな定義が生まれた。体力、気力は年と共に老化、退化し、新しい知識に追いつくことはできない。年をとることイコール非生産力になる。さらに現代は衛生環境と医療が進歩し、人の寿命が長くなり、「老人の社会問題」はマイナス面の印象を与えている。
しかしながら證厳法師は、大衆に「老いては宝」であることを呼びかけ、年長者は無上の生命能力を発揮することができるとおっしゃっている。
彼らは若い頃や壮年期には社会に貢献し、家庭をつくって子供の養育に専念した。成長した子供はその後、社会の中堅を担っている。仕事からリタイアし、家庭を世話する責任を完了した後は、人生の黄金時期に突入して、余暇を自己成長の勉強やボランティア活動に使い、その豊かな人生経験と智慧を以て社会に貢献している。
今号の特別報道に登場する七十歳以上の年長者たちは、送ってきた人生はそれぞれだが、今は自由自在に日々を送っている。人生において闊達な信念を体得し、芸術や創作の趣味を培って心霊世界に昇華している。さらにボランティア活動では思いやりを世に撒布し、身寄りのない弱者に寄り添って世話をしている。
さらに年長者は慈済環境保全ボランティアの主力になっている。彼らは毎日地域の回収所で回収物を分類している。働くことに力を注いで活力を保ち、また環境に清らかな空気をもたらし、高度経済成長で発生した台湾のゴミ問題を緩和している。
お年寄りたちはボランティアをしているうちに、社会から排斥されているという失望感や健康が衰えたと感じる心配が減少していると、今回の特別報道で学者たちは指摘している。また年長者として社会に参与し、豊かで多元的な風を吹き込み、人生の智慧の伝承に活躍していることに感動させられる。
報道に出てくる貞霞さんは、本当の老後の支えとは何なのかと自分に問う。それは今の一刻を無駄にせず、奉仕をし続け光を放ちながら安らかに老いていくこと、「老いては宝」と言われるような生き方をすることと考えている。
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