慈濟傳播人文志業基金會
高齢者が支えるリサイクル拠点
慈済のリサイクル拠点は、まるで都会のオアシスのように人々の注目を集め、活気づいている。回収資源を繊維に再生するリサイクル作業に取り組んでいるのは、シルバー世代のボランティア達だ。彼らは社会に対して責任を果たし、奉仕したいという思いで繋がっている。
 
●新北市慈済双和リサイクルセンターの日常風景。ボランティアが果物用の緩衝材を分類している。
 
早朝七時、取材に出かけるバスの中で聞こえてきた二人のお年寄りの会話に、私は耳を傾けた。
 
そのうちの一人は、窓の外を眺めながら少し寂しそうに語っていた。「妻がこの世を去ってから、子供達が用意してくれた家に住んでいたんだが、一人で住む家はがらんとして寂しさが募って仕方がなかった。それからは嫁の申し出で同居することになって、孫の世話をした。大変だったが、孫達には笑いと楽しみをもらっていたよ。
 
その孫も成人し、忙しさも一段落した。すると突然あの気の遠くなるような寂しさが涌き上がってきたんだ。食事なんてどうでもいい、家でやることがない……という気持ちになってね。」
 
台湾の高齢者は人口の十四%に達し、高齢化社会が始まったと言える。現在六十五歳以上のシニアと呼ばれる世代は、一九四六年から一九六四年の「戦後ベビーブーム」に誕生した人々だが、台湾の主要な産業が農業から商工業へ移り変わる時代に、経済を支える中心的役割を果たしてきた。医療技術の進歩により寿命も伸びている現代に退職を迎え、家庭での責任も一段落し、まだまだ体も健康を保っている彼らが、これから生き甲斐のある生活を送るにはどうしたらよいだろうか?
 
また、人との交流が少ない都市の中で、高齢者が社会から取り残されて孤独に陥らないようにするには、どうしたらよいのだろうか?
 

環境保全ボランティアの日常

 ‧自宅に近いリサイクル拠点に通う。時間は自由。
 ‧昼には炊き出しボランティアが作った菜食弁当が出る。
 ‧医療ボランティアが在駐している拠点では健康相談を受け付ける。
 ‧読書会や運動能力測定などの行事に参加できる。
 
双和リサイクルセンターを訪れた。まず老婦人が手押し車を押すのが見え、その周囲には銀髪をたたえたボランティア達が手を振ってくれている。みな早足でかくしゃくと動き回っているのに驚かされた。
 
老婦人について私に説明してくれる人がいたので、はっと我に返る。彼女は毎朝五時、自宅近くの市場で段ボールを回収し、手押し車に積んでここまで持ってくるそうだ。七時まで作業をし、それからもう一カ所の回収拠点で資源分類をするという。両方に友人がいるからなのだそうだ。
 
新北市の中和区と永和区は合わせて「双和」と称される。台湾経済が構造転換を図った一九六〇年代、農村の人口が都市へと流出したが、その多くが中南部の農民であった。彼らは台北市近郊の双和、板橋、三重地区に定住したため、その地区の人口は増加の一途をたどった。内政部の統計によると、永和区は台湾全土で人口密度が最も高い行政区である。彼らが高齢化するにつれ、双和地区の老化指数も百%を越えたのだ。
 
慈済が資源回収を行うようになった一九九〇年代、消費経済が引き起こす環境汚染を阻止しようと環境保全運動が国民の間で広まり始めた。人口密度が高く仕事の煩雑な都市部では、すでに退職した高齢者達が資源回収の主力になっていった。「環境保全を実行すること」はすでに彼らの生活の一部になっていると言えよう。
 
回収車は毎日双和地区の回収場所を巡回し、一日当たり平均十台分の資源ゴミがここへ運び込まれる。すると即座に分類作業が始められ、リサイクルできる物とできない廃棄物に分けられる。回収物をためておくと収集がつかなくなるからだ。
 
●センター内はペットボトルなど8つのゾーンに区切られ、年長者は分類作業に没頭している。自分の好きな時間に来ればよく、集中した静かな姿が見られた。
 
センター内部はペットボトル、古紙及び廃棄家電類など八つのゾーンに区切られている。果物用緩衝材のゾーンでは、ボランティア達が緩衝材に無造作に張りついているビニールテープをはがし、埃をはたき落として一つ一つたたんでいた。すべて手作業なので人手が必要である。回収価格は低いが、環境を汚染するゴミがこれで一つ減ることになる。
 
月曜日から金曜日までの平日の昼間は、毎日百名を超すボランティアが集まるのだが、そのうちの三分の二は七十~八十歳の高齢者だという。大部分の人はここから遠くない場所に住み、自分の好きな時間に来ているそうだ。
 
ボランティアはマイ食器を持参する。チーム毎にまとまって昼食の申し込みをし、食器を収納棚に置いておくと、炊き出しボランティアがよそってくれるのだ。
 
年長者という立場もあってか、「チェックはいらないよ。私たちはボランティアだから勤務時間は関係ないんだ」などと言って困らせることもあるが、ボランティアが熱心に説明するので、彼らに免じて記録を残すことに応じた。
 
案内所にはボランティアのスケジュールや、ここでの作業内容が書いて貼ってある。高齢のボランティア達への配慮である。また、その傍らには血圧測定コーナーが設置され、慈済人医会の医療ボランティアが交代で詰めている。ここで血圧を測るとそのデータは台北慈済病院のデータベースへ送られるのだそうだ。医療ボランティアはいつも高齢者の健康に留意している。
 
●血圧測定コーナーには医療ボランティアが交代で常駐している。血圧の測定や服薬指導、病院受診の手助けまで行う。この地区の高齢者にとって健康管理の最前線となっている。
 
医療ボランティアが薬の飲み方を指導することもある。看護師を退職して医療ボランティアとなった張敏如さんは、高齢者の多くが糖尿病や血管の慢性疾患を抱えていて服薬が不可欠なのに、その知識は十分とは言えないという。人と話す時には折りをみて「薬物の体への影響」などを話題にするそうだ。話を聞くと薬害怖さに突然服用をやめる人も出てきてしまった。「不定期に服薬することは、かえって病状にマイナスの影響を与えてしまいますよ」と張さんは説明を加えた。
 
長期にわたり活動をともにすることで親しみが生まれると、高齢者も自分の薬を医療ボランティアに見せて相談するようになった。誰にも言えなかった不安を訴える人も出てきたので、必要に応じて医療ボランティア会が病院受診の手伝いをすることもあるそうだ。血圧測定コーナーは高齢者の健康管理の最前線となっている。
 
午前十時、ここでは五〜十分間の健康体操が行われる。回収作業に没頭している高齢者に、起き上がって体を動かすことを勧めるためである。長時間座り続けて低血圧にならないよう、トイレ休憩や水分補給も必要だ。
 
十一時四十分になると、ボランティアは片付けを始め、食堂へ向かう準備を整える。
 
午後は順に帰って行く人もあり、新たに集まってくる人もある。毎週水曜日の午後は、慈済人医会のボランティアによって養老学校が開かれているので、バランス感覚を磨く活動などに参加することができる。金曜日には読書会があり、仏教の教典を学ぶこともできる。
 
小中学校や団体が参観に訪れる時には、ボランティアがガイドを勤めている。取材に行ったこの日も中学生のグループが訪れていた。ガイドがビデオテープを開けて中のテープを取り出す様子を見つめていた。パソコン世代の子供達は、もう触れることのない物に興味津々の様子で、場内に歓声が響いた。しかし、高齢者達は振り返ることもなく、作業の手を止めることもしなかった。念仏を唱える時間になると、センターには静けさが広がった。

【ようこそ、昔なじみを見に来て】

 双和リサイクルセンター  

 新北市中和區中山路三段41號  

 02ー82281628

NO.248