慈濟傳播人文志業基金會
電気工事職人は施療団の後ろ盾

一級電気工事士の黄金受さんは慈済の施療活動にとってなくてはならない人だ。

歯科診療椅子、照明灯、漢方薬の棚……必要なものは何でもとりつけてくれる。

医療スタッフが全身全霊で診察に専念でき、患者は安心してケアを受けられる。

北区人医会の水電架線組のボランティア黄金受さん。金門県の烈嶋郷、烈嶋観光センターで行った施療で、故障した歯科治療の機器を直している。
(撮影/游錫璋)

家の門口に並べられたいろいろな金具の部品。家主が電気工事の仕事に携わっていることを物語る。しかし、ほこりを被っているのを見ると、長い間使用していないようだ。「私は半ばリタイア状態で、よほど知り合いの人でなければ、仕事を受けないんですよ」と、基隆地区慈済ボランティアの黄金受さんは少し申し訳なさそうに話した。

妻に先立たれてからずいぶん経つ。一人娘は南投県埔里に嫁ぎ、七十近い黄金受さんは基隆の百福団地に一人で住んでいる。健康そのもので、奉仕することを楽しみとして少しも孤独を感じない。

慈済人医会のスタッフは、山間部や海岸に住む貧困者に施療を行っている。そんな時、黄金受さんは施療会場の水や電気の配線を請け負い、診察に必要な器材や設備をとりつける作業に誠心誠意取り組んでいる。

  

移動式シャワー車をホームレスのために考案

 

一九九六年十月、発足したばかりの人医会の医療奉仕活動で、黄金受さんは支援ボランティアの一人として参加した。一九九六八年一月、北区人医会は、台北万華にある龍山寺で第一回のホームレス施療を行った。旧正月の前で、ボランティアたちは散髪のサービスを企画したが、設備がないため髪を洗うことはできなかった。

散髪した後のホームレスの様子を見て、北区慈済人医会の総幹事、呂芳川さんが、「髪を洗ってあげられたら、彼らはさっぱりする上に衛生的だけれど」と言ったものの、お湯と設備を準備するのは到底困難なことと思っていた。

黄金受さんはこの言葉を聞くと、自信満々に「安心して私に任せて下さい」と言って、固い信念で洗髪するための改装工事を始めた。

彼は、湯沸かし器や大小様々の部品を回収して準備を整えた。施療はいつも同じ場所で行うわけではないため、湯沸かし器を固定できないので、簡単に壁にかける。それを水道に繋いで、取りつけたガスの栓をひねると、熱いお湯が滔々と流れ出て、理容師は洗髪をすることができた。

困難を克服し、ホームレスたちは身なりを整えて医師の診察を受けることができた。しかし彼はこれで満足できず、自腹で発電機と加圧モーターと簡易貯水槽を買い、ボランティアたちと中古のトラックを改造して「移動シャワー車」を造った。

荷台をプラスチック板で二間のシャワールームに仕切って天井にシャワーを設置した。床部分にはステンレスを使っているので錆びる心配がなく、シャワーの後の水を溝に流す管を取りつけた。ホームレスたちは寒い日には熱い湯でシャワーを浴び、体だけでなく心まで温められるだろう。

黄金受さんの移動シャワー車は、汐止市や花蓮や台東の原住民族への施療や、華江橋雁鴨公園のホームレスへのサービス、さらに北区人医会の大型施療活動に大きな力を発揮した。十年前に洗髪できる設備を作ろうという発想を思いついたことを振り返って、「自分が持っている、水道や電気の工事の技能を活用して、施療を受ける人たちのために尽くせるのはうれしい。自分の能力を出し切ることができた」と満足そうに笑っていた。

次第に熱心な医療スタッフが多く加入するにしたがって、慈済人医会の施療の診療科と項目はますます多岐にわたった。水と電気の供給設備がないような施療会場では、自分が電線を設置しなければならない。水道電気工事のプロである黄金受さんは、水電架設組をつくってその責任を担うことにした。

さまざまな施療活動の環境に応じて、水電架設組は常に変わる問題を解決し、医療スタッフが順調に施療に専念できるため、なくてはならない重要な役割を担っている。

施療する中で歯科の設備は最も複雑なうえに場所をとる。歯科診療で使われている大型の治療椅子を施療の現場に運ぶことは不可能だ。始めた頃は患者をビーチチェアに寝かせて、医師は腰を屈めて治療をしていたが、三人も治療すると歯科医は腰や背中が痛くて仕方がない。

黄金受さんはそんな医師の苦労を見かねて、医師と患者が安心して使用できる持ち運びができる治療椅子を作ることにした。まず、近所の歯科クリニックを訪ねて詳細に構造を観察し、自分で椅子を起したり寝たりしてみた。家に帰って家にある道具を使ってサンプルを作成し、何度も修正を重ねてついに完成した。

移動診察椅子の外観はビーチチェアのようだが、分解して特製の箱に収め、持ち運びがしやすいようにした。施療の現場で組み立てると、高低の調節が効く歯科診療椅子になった。彼は、「異なる患者の体重を考慮して、構造の上では堅固なステンレスを使っています。医師は患者の体格の状態に合わせて手動で高低を調節できます。また、治療を受ける患者の安全も確保されます」と言う。

診察椅子の問題は解決したが、治療の時に助手が懐中電灯で照明の角度を調整しているのを見て、黄金受さんの脳裏に浮かんだのは診察灯のイメージだった。

家に帰ると、早速道具箱の中から部品を探し出して製作にとりかかった。プラスチックの管、電線、電源のスイッチ、強力なクリップなど。最後に懐中電灯を取りつけると、歯科照明灯が完成した。黄金受さんの手から、今度は照明灯が生まれた。

次の施療の時、照明灯を診察椅子に取りつけてみると、プラスチックの管は軟らかすぎて、照明灯が真っすぐに立たず、理想的な効果を発揮することができなかった。

彼は気を落とすことなく、帰宅すると一度また一度と改良を重ねて、終に成功した。改良後の電灯は下の部分を堅い管に改良して、台座に強力なクリップで診療台にとりつける。懐中電灯をLED電灯に換えてその先に拡大鏡を取りつけると、光線が口の中に集中して、患者は受診の時目が眩しくない。

照明の問題が解決したと思ったら、黄金受さんはまた新たな問題を発見した。歯科診療の時、口を洗う水が必要になる。施療の現場ではペットボトルに水を入れて使っているが、足りない時はボランティアがその都度運んでいた。

施療の現場では水を引くことは不可能だ。そこで彼は、レストランに置いてある営業用の五ガロンのコカコーラの大きな容器を思いついた。そして、彼はコカコーラの大型容器を調達してくると、それを洗って消毒し、容器の蓋に二つの穴を開けた。一つは圧力孔、一つは水の出る孔でその上に圧力機を取りつけた。歯科医が軽く足元の板を踏むと、容器の中の気圧が変化して水が流れ出す。医師は診療所の設備とあまり変わらないと驚き、その巧みな出来栄えを絶賛した。

黄金受さんが設計した移動式薬箱は、すべての薬瓶に穴があいている。漢方の調剤師は整然とした台で効率よく薬を調剤できる。(撮影/陳李少民)

すぐれた技はボランティアの利器

 

黄金受さんの細やかな思いやりと観察は、人医会の人々が必要とする物を小型器具で一つひとつ作り出した。それによって医師たちの負担が軽くなり患者の治療に集中することができた。

謝金龍医師は、「黄さんは施療の時、器材の配置などの準備作業から後始末まで全部一人でやってくれます。また、必要な器材を面倒がらずに作ってくれるのです。人医会になくてはならない後ろ盾です」と言った。

黄金受さんは若い頃のことを思い出す。若いうちに何か技術を身につけなければと、職業訓練所に水道電気技師訓練の志願書を出して、将来この職で家族を養おうと思っていたのだ。しかしこの技能が後にボランティアの利器になるとは思いも寄らなかったと、黄金受さんは笑って言う。

「この世に生きている以上、生き甲斐を探し出せたことはとてもうれしい。最高に幸せです。私は慈済人医会でそれらを見つけました」と嬉しそうに言った。

 
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