五月は心温まる感謝の月である。世界四十カ国で五百回を超える灌仏会が催され、仏の恩、父母の恩、衆生の恩に感謝した。三十万人近くの善念が集結し、人心を浄化し天下に災難がなくなるよう祈願した。
慈済は創立五十二年目に邁進している。ボランティアは僻地だけでなく、にぎやかな都会の片隅にまで分け入ってゆき、貧しい人や世の中から取り残された人々に寄り添っている。きらめく東方の真珠と言われる香港でも、ホームレスに寄り添っている。
香港慈済ボランティアは二○一四年からホームレスへのケア活動を展開している。初めは四カ所だけだった活動拠点は、今では二十カ所にまで増えた。香港の家賃や物価は絶えず上昇しており、多くの人は給料の大部分が家賃として消えてしまう。家賃が高いのに家は狭く、衛生環境が悪いので、街頭で野宿する人が増えている。
夜の帳が降りて商店街では次々に店じまいする頃、ホームレスは今夜身を置く所を探さねばならない。男性ボランティアを主とする思いやりチームも退勤後に集合して、ホームレスを探し、彼らの生活状況を理解して何を必要としているかを聞く。香港城市大学と非政府組織の統計によると、ホームレスは年々増加して、現在すでに千人を越えている。そのうち五十歳以上の中高齢者が多く、彼らの学歴は高くはない。中国大陸やベトナムからの出稼ぎ労働者で、約四割を占めている。中には、仕事で怪我をして働けなくなり、ホームレスになった人もいる。
故郷を離れ、衣食住もままならない大勢のホームレスは、健康上の問題も抱えている。彼らは病気に対する知識があまりないうえ、医療ケアを受けるのは容易ではない。努力して職を探しても、失業の期間が長かったため、益々社会に入るのが困難になっている。貧困から抜け出せず、そのストレスから、アルコールや薬物に依存する比率が高くなっている。
慈済ボランティアが訪問ケアに行くと、ホームレスの置かれた状況が厳しく、人々から軽蔑され、人々と付き合うことがほとんどないことを知る。また、炊き出しをしようにも、建物が密集しているため、火事が起きるリスクがあり、円滑な支援活動を行うことができない。
二年の間ホームレスと親しく付き合ってきたボランティアは、ホームレスと「思いやりホットライン」を立ち上げた。二十四時間彼らの電話に耳を傾け、また一緒に歌を歌ったりしている。
ホームレスの中には「班長」がいて、物資配付の状況を伝達している。ボランティアは食事を供給する以外に、病気の時は受診のため病院へ付き添う。ホームレスの中には感激のあまり、タバコを買うお金を寄付してくれたり、環境保全の活動に参加する人もいる。
ボランティアは「貧困をなくすためには金持ちを批判するのではなく、愛を拡大することが大事」と体得していた。ホームレスの人生は、誰にでも訪れる可能性のある無常をよく示している。だがたとえ貧しくとも、愛の奉仕という潜在能力が啓発されれば、小さな片隅で心が富む者として光を放つことができるのだ。
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