香港のビクトリア港には有名なライトアップショーがある。毎晩八時に両岸の四十を超える摩天楼が鮮やかに灯り、大勢の観光客を魅了する。
しかし、それがどんなに明るくても、社会の暗がりにいる人たちに人生の道を照らし出すことはできない。繁栄した華やかな香港は「東洋の真珠」と呼ばれている。
不動産価格は天にも昇る勢いで高騰し、貧富の格差は非常に大きい。人々には生活のプレッシャーが重くのしかかり、数値が異常に高いPM2・5のように、きらびやかな色彩に暗い影を落としている。
買い物天国の国際都市

香港から深圳に通じる地下鉄が開通してから、中国人が香港を訪れるのが一層便利になった。
四月二十九日から五月一日のメーデーにかけて連休が始まり、人の波が尖沙咀廣東道に溢れ、世界のブランド品の旗艦店の入り口には中国人観光客の行列ができていた。
家賃を払えない時代

九龍旺角の西洋菜街の壁には不動産の広告のビラが所狭しと貼られているが、経済的に力の無い人々は部屋を借りることもできず、道端で寝起きしている。
不動産価格の高騰は香港人を苦しませている。大卒の平均月収は一万一千香港ドル(約十五万円)で、十坪ほどの一DKアパートの家賃は月七千ドル(約十万円)である。
皆、生活が大変な中、学歴がなく、技能を持たない労働者に至っては家賃を負担できないため、野宿するしかなくなる。
立錐の地の争奪
中環地下鉄駅前の歩道橋は、ビルの上から見るととても小さく見える。香港は土地が狭くて人口密度が高いため、海を埋め立て、建物を上へ上へと高くする。
建物が隙間がないぐらい立ち並び、蜂の巣のような窓はサイズを大きくした戸棚のように見える。一人当たりの平均居住面積は四・二坪である。
押しつぶされた人生

七十三歳の黄さんは二坪大の部屋で生活している。ほかに「劏房」と呼ばれる所も多くの低所得者が暮らす場所である。
「劏」という字は広東語で「分割する」という意味で、供給が需要に追いつかない状況下、住居を細かく仕切り、二坪大の部屋に分割して貸し出している長屋である。居住空間は卓球台二つ分の大きさしかない。
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