仏法は骨髄と化し、慧命を永らえさせ、世の中の人々を益して、恵を与えます。
法髄移植に力を尽くそう
「時間が経つにつれて、生命は日に日に残り少なくなっていきます。いくら長寿だと言っても、いつかこの世を去らなければなりません。ですから、限りある人生を大切にして、命の価値を高めましょう」
海外から訪ねてきた慈済ボランティアとの談話で、上人はこのように話しました。そしてこう続けました。「私は最近よく『法華経』を説法しています。過去の生生世世によい因縁を積み重ねたから、『法華経』の微妙な法の真髄を得て、ありがたいことに、現世で説法ができるようになったのです。この因縁をしっかり把握して、法髄を移植することを心がけています。仏法を胸に、日常生活にこの機能をよく働かせて、仏法が各地に広まって伝わっていくことを願っています」。
仏法の教えを実践した多くの慈済人は、生活は貧しいながらも心の豊さが人生の方向を変えました。「自ら自分を変えて、真心を込めて人のために尽くす。これこそ法髄の移植が成功した証なのです」
決意があれば、成し遂げられないことはありません。「すでに菩薩道を歩むと志を立てたのですから、心のなかに誓願があっても、怨みにとらわれない心境を確立してほしいのです。そして、自分の心はどういう状態にあるのかを見極め、『怨』を捨て、『願』だけの心を蘇らせるのです。それに、ちょっとした気まぐれで、菩薩行を怠って慧命に影響を及ぼすようなことは、決してないように」と上人は強調されました。
「ただ熱意だけを以て慈済の隊列に身を投ずるのでは足りません。もし『戒、定、慧』や『聞、思、修』を修行でしっかり身につけていないと、ちょっとしたもめごとで心にわだかまりが生じ、前へ進めなくなってしまうからです」と上人は教え諭されました。
「仏法との因縁を断ち切ってはなりません」。上人はくれぐれも言いつけられました。「法をしっかりのみ込まないと、人に対して先入観や疑念を抱きやすくなります。仏法の真意を深く理解すれば、度量が広くなり、奉仕したことに対して見返りを求めたりしません。また、些細なことで悩んだり、心を囚われたりすることもないのです」
「人を助けられる人になることは、最も価値のある人生です。さらなる菩薩道への精進の念を高めましょう」と上人は、皆を励まされました。
「生きた経典」を体得
「出家とは、世俗の家を出て、如来の家に入ることを意味します。身も心も、『辞親割愛』の文字通りに、世俗と自分の家族から切り離さなければなりません」。剃髪の日をまもなく控えた八名の近住女(精舎に住み込んでいる出家前の修行者)と談話しました。「もう出家をすると発心したのですから、一心に仏道を修行するように。虚心になって仏法を聞き、法の真髄から得られた智慧に基づいて一切の生きとし生けるものが幸せになるように尽くしましょう。そうすれば、自分を産んでくれた両親へのご恩に報いることもできるのです」と上人は諭されました。
「出家した当時、私は二つの大事なことをしました。まずは『心を閉ざす』ことです。世俗のドアを閉ざしたのも、天下のために尽くしたい一心だったからです。次が『身を閉ざす』ことです。慈済の活動だけに勤めるように決心したからです。一途に『仏教のため、衆生のため』に尽力してきました」。
精舎に住む常住僧侶たちは、日ごろ自力更生を維持するために働きますが、ボランティアが精舎に来ると、その食事や宿泊の支度でいっそう忙しくなります。精舎での生活は確かに多忙ですが、出家せずに俗人として家庭に入れば、煩悩も尽きないのではないでしょうか。「出家修行の長所とは、私的なつまらない悩みがなく、ひたすら天下のために尽くすことができるということです。衆生のことを憂慮しても、自分の心は安らぎで落ち着いていられるのです」
各地から精舎を訪ねてきた人々に、常住僧たちは通り一遍ではなく真心を以ておもてなしをします。上人は、「日常生活においては『誠正信実』という自分の本分を守って、信念を貫くべきです。また、『慈悲喜捨』の心持ちで世間の衆生のために奉仕するように」と諭されました。
世のために尽くしながらも仏法を聞くことを忘れてはなりません。すでに心には具わっている法を実践するように。「人間関係に悩んだり、時間を浪費するのは実に惜しいことです。法の奥底まで理解した上で、真心を以て接触した一人ひとりの心意気に感じて、生きた経典のような相手の真実、豊かな人生を体得しましょう。このようにして、仏法を法髄と化し、自分の慧命を潤わせ、法の細胞が増えるように」と、上人は皆を励まされました。
すでに修行をすると発心したのですから、もし無明やつまらない悩みを取り除かないまま、法を聞くことも怠れば、せっかく結んだ良い因縁が無駄になるでしょう。上人は「このかけがえのない修行の因縁を把握して実践し、心の中にある悩みや苦しみを取り除きましょう。そして、命の価値をもっと高めていくように」と諭されました。
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