アンジェリーは珍しい小児の脳卒中を患った。
昏睡状態から目が覚めた後も勉強を続けたいと願うアンジェリーのために、医療チームは教師、慈済ボランティアと提携して全力でサポートした。
そして、期末試験に受かり新学期には五年生になる
十一歳のアンジェリーにとって、学校に行って友達に会うことが最大の幸せだった。台湾での数カ月の闘病生活の後、彼女は笑顔を取り戻しインドネシアの慈済大愛小学校に帰ることができた。
彼女は生まれた時に血管壁が薄い異常があり、全治することは容易ではないが、学校へ行くことはあきらめていなかった。二○一六年の三月二十五日、キリスト復活祭の朝。顔を洗って家族と教会へ行く用意をしていた時、突然全身の力が抜けて右半身の感覚がなくなり、転んでしまった。母親のチン・ショウリンさんがその音を聞きつけて駆けつけ、床に転がっている娘を抱き起こし、バスタオルにくるんだ。
アンジェリーの家はジャカルタ大愛村から近い住宅地にある。チンさんは近くにある慈済大愛医院の救急救命室にアンジェリーを連れて行ったが、あまりに重症だったためチェンカレン総合病院に行くように言われた。病院で検査した結果、左脳の血管が破れて出血していることが分かり、小児脳卒中と診断された。チンさんは十年前に息子が脳の病気で亡くなったことを思い出した。そして今、娘も……。チンさんはアンジェリーさんがいる集中治療室に入る勇気がなかった。
チンさんは事実を受け入れられず、深い絶望の谷底に落とされた感覚だった。教会の礼拝を終えた友人たちが病院に駆けつけて、「必ずよくなりますよ」と励ましていた。
チンさんは娘のそばを片時も離れずに見守り、神に奇跡を起こしてほしいと祈っていた。アンジェリーは集中治療室の病室に入ってから九時間後、突然右足を動かし曲げることができ、舌も出せるようになった。しかし医師は転院してさらに進んだ治療を受けるようにと勧めて、チンさんは再び絶望感に襲われた。
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家で休養中、病気を引き起こした血管の画像を見るアンジェリー。
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救命線の輪が繋がった
一家の友人のロバートは心配して、慈済大愛小学校のフレディー校長に相談し、校長がすぐに慈済ボランティアに知らせた。
慈済ボランティアの張建中はその連絡を受けると、楊碧露に知らせた。彼女はサディア私立病院の神経医師ゴナマンさんに頼み、その夜の中にアンジェリーはサディア私立病院に転院し、本格的に治療が始まった。
母親はこの縁がつないだ援助によって、希望を見出すことができ、「とても感謝しています。神のお導きによって慈済はアンジェリーに希望の道を開いて下さいました」と言った。二日後、慈済ボランティアの陳桂雄が病院へ見舞いに行った時、ボランティア全員で一家を支援する計画を立てていた。
ゴナマン医師は、脳卒中の原因はさまざまで、良くない生活習慣、寝不足やストレスなどがあるが、アンジェリーの場合は生まれた時からの血管異常が原因で、彼が初めて出会った小児脳卒中患者だと言った。
アンジェリーが昏睡状態から覚めないのは、左脳の出血範囲が広いためで、まずうっ血を取り除いてから、左側の頭蓋骨を取りはずして脳腫圧を低く押さえ、状態が改善した後、さらに手術をして頭蓋骨をもとに戻すという二段階の治療をすることになった。
命の危険がある手術だが、母親は医師を信じてその決定に従った。三月三十一日に手術を始め、左頭蓋骨を腹部に取りつけた。手術後、自宅で療養を取り、五月十七日に再度手術して左頭蓋骨をもとに戻した。
四月と五月の期間、アンジェリーはボランティアの陳桂雄に付き添われてリハビリと言語訓練を受けた。陳桂雄は、アンジェリーは病魔に打ち勝とうとの堅い意志を持った子だと気づいた。声が次第に大きくはっきりしてきて、歩行の進歩も早いと褒めた。
リハビリの間に、母が勉強を続けるかと聞くと「私は勉強をして五年生に上がりたい。留年するのは嫌」と答えた。右手ではまだ字を書けないが、補習したいと強く希望していた。校長に相談すると、承知して担任の蘇先生をアンジェリーの自宅に補習に行かせることにしてくれた。
蘇先生はアンジェリーの熱心な学習態度に感心して、自宅で期末試験を受けさせてくれ、アンジェリーは優秀な成績で無事合格した。二○一六年六月二十二日、母に付き添われて優秀な成績表を受け取り、来学期から五年生になる。
この日、母親は「アンジェリーの病気を治して下さったお医者様たち、慈済の熱心なお世話、なかでも治療費を支援してくれたことに感謝しています」と感動して言った。
二○一六年七月十八日、インドネシアの大愛小学校の始業式が行われた。生徒たちは親に付き添われてにぎやかに校門をくぐっていた。アンジェリーも父親と五年甲組の教室に入った。彼女の将来の希望は、優秀なコックになることで、その夢に向かって前進している。医師や学校の先生方、慈済ボランティア、そして家族は、アンジェリーの生命力と堅い意志力に心を動かされ、これからも全力で支持していくことだろう。
(慈済月刊六00期より)
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担任の先生がアンジェリーの自宅へ来て補習をしてくれた。
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慈済ボランティアの陳桂雄は、長期に亘ってリハビリに付き添い励ましてきた。 |
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治療期間中なのに、慈済大愛小学校で熱心に授業を受けるアンジェリー。優秀な成績に両親は安堵している。
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