慈濟傳播人文志業基金會
最後のエンディング
 
年配の人に、人が亡くなったところに行かず、霊柩車に会ったら離れるようにと教えられました。でも、人間はみな生老病死に直面するものです。正信、正念があれば良い機会に出会えます。感謝を表し、思いやりある言葉を告げ、またはお詫びを言い、別れのあいさつをしましょう。
 
救急センターの集中治療室にいる患者の家族は、緊張と恐怖でどうしたらいいのか分かりません。看護師は私ががん患者の緩和ケア病棟でのボランティア経験があることを知っていたので、家族を慰めてほしいと言いました。
患者のベッドに近づくと、大勢の家族がおばあちゃんを囲んでいましたが、誰もが黙りこくっています。私はおばあちゃんに「こんにちは、ここは大林慈済病院です。分かりますか。おばあちゃんの家族はあなたのことを愛しています。みなさんがそばにいるからおばあちゃん寂しくないですよ」と慰めました。
私はおばあちゃんのざらざらの手を見ながら静かに言いました。「ほんとにきれいな手ですね。この両手はきっと家族のために苦労してきましたね」。すると、「そうですよ、妻は家族のために本当に苦労してきました。私はとても感謝しています」と家族の中の一人の男の人が言いました。「ほら、ご主人はあなたにありがとうと言いましたよ。家族にたくさん奉仕したことを感謝していらっしゃいます」
子供も孫もそばにいました。私はおばあちゃんに、「この子たちのお世話もしたのですか」と聞くと、大きな男の子が答えました。「そうです。ぼくが小さい頃からおばあちゃんがお世話をしてくれました」。何かおばあちゃんに話したいことがあればお話しなさい、とこのお孫さんに勧めました。すぐに孫は優しくおばあちゃんに言いました。「ありがとう、おばあちゃん。ぼくの面倒を見て育ててくださいました」
「おばあちゃんは今答えられないけれど、あなたたちからありがとうという感謝の言葉は確かに受け取ったと思いますよ。優しくおばあちゃんに話しかけて、しっかり感謝しましょう」。私は別れのあいさつをするように皆さんに勧めました。穏やかな悲しみのなかに時折笑い声も聞こえました。
学校の教師をしている娘が少し遅れて夫と一緒にやってきました。「おばあちゃんはすごいですね。先生という子を育てて、次の世代の教育もするのですね」と私が言うと、娘さんは「私も仏教を学んでいるのでよく分かります。でも、今私は落ち込んでいるので、話しかけないでください。そして、この部屋から出て行ってください」と言いました。
私は家族の気持ちを最優先すべきと思い、その場を離れました。ちょっと勇気がくじけたけれど、心の中ではやはりこの家族のことを気にしていました。数時間後におばあちゃんが亡くなったと聞きました。集中治療室のカーテンは閉められており、家族がおばあちゃんのご遺体を間もなく家へ連れて帰るのだろうと思いました。私はカーテンの外側を何回も行ったり来たりしてためらっていました。とうとう勇気を出して、静かにあいさつをして、カーテンを開け、もう一度ベッドのそばに来て腰を曲げておばあちゃんの顔を触りました。そして、「おばあちゃん、驚かないで。今世の縁はもう円満に終わりました。病気や痛みももうありません。ご家族がお家へ連れて帰ってくださいますよ」と優しく言いました。
私が亡くなった人を尊重し、恐がらないことを見たからか、娘さんの表情が変わりました。葬儀社の人がおばあちゃんを救急車に運ぶまで、私たちボランティアは静かに家族に付き添っていました。私は手を合わせて娘さんに言いました。「今お母さんのために念仏して下さい。正直に信じる力でお母さんのためにお祈りください」。すると、彼女は「分かりました」と答えました。
翌日、おばあちゃんの娘さんは死亡証明書を申請するため大林病院に戻って来ました。ちょうど折よく合ったので、私はあいさつしました。「お母さんのことは無事に終わられましたか」。すると、娘さんは「師姐、とても感謝します」と喜んで安心したように言いました。「実はもともと家族は長時間念仏する気持ちがなかったのです。でも、私は母のために念仏しました。数時間真剣に念仏して、最後に母の顔が笑っているように見えました」
「そうですよ、お母さんは良いところに行ったのよとご家族に伝えられたのでしょう。お母さんを祝福してください」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
人間は必ず生老病死に直面します。小さい頃、年配の人から、人が亡くなったところに行かず、霊柩車に会ったら離れるように、と教えられました。私も死に対して恐怖を感じたことがあります。慈済病院のボランティアに来て、年配の師姐からお話を聞いたり、訓練や研修から知識を吸収したりして、自分も正信、正念ということが分かるようになりました。良い機会をとらえて人を愛する心で良い縁を結ぶことが大事です。家族に悔いが残らないように、安心してもらい、死者の魂を慰め、適した時に四つのこと、すなわち「感謝を表し、愛の言葉を話し、お詫びを言い、別れのあいさつをしましょう」と話しました。
(慈済月刊五九五期より)
NO.237