慈濟傳播人文志業基金會
環境保全は利益ではなく 地球の永存のため
資源の回収と分別は物を再生させるだけでなく、
高齢者にとって第二の春と言える。
慈済の環境保全は利益のためではなく、
環境破壊の速度を少しでも遅らせるためだ。
 
 
「環境保全に取り組む」という言葉は、慈済が二十八年来、たくさんの台湾ボランティアと共に作り出した「専門用語」である。「取り組む」という言葉が重要で、口ばかりで実践しないというのでは何の意味もない。
 
  
 
南投埔里に暮らす梁碧恋おばあさんは、今年で八十五歳になる。高等教育は受けていないが、知識よりも人としての道理をよく弁えている。朝食を食べ終えると毎日慈済リサイクルセンターで資源の分類作業を行う。おばあさんはこういう生活をもう二十年以上も続けており、この労働によって身体は健康で、知能も衰えていない。
 
梁碧恋おばあさんと同じく埔里に住む高齢の張家の三姉妹も、環境保全に取り組んで二十年近くになる。昔、雨の日に農作業をしていると、よく「不幸」だと感じたものだが、環境保全はすればするほど楽しく、身体が動くことを「幸せ」だと感じる。
 
台北内湖に住む高阿葉おばあさんは今年八十四歳、二十年以上の環境保全の経験があり、PE白(透明または白で無地)、PE花(色付きまたは柄あり)、PP白(透明または白で無地)、PP花(色付きまたは柄あり)、PP、PE水洗(汚れがあり、洗う必要あり)など、ビニール袋の種類を見分けるのはお手の物だ。おばあさんは字は読めないが、「リサイクルの達人」である。
 
こうした時間と手間のかかる細かな回収品の分類は、決して金銭のためではない。おばあさんたちは廃品回収で生計を立てている人と争うようなことはせず、回収するのは誰からも省みられない、売ってもお金にならないビニール袋やガラス瓶だ。
 
近年、慈済が回収するビニール袋の総重量はペットボトルを上回るようになった。慈済の回収品の種類や数量は、往々にして台湾社会の景気やリサイクル市場の動きを反映する。簡単に言えば、誰もやりたがらず、利益が出ないことほど環境保全ボランティアは熱心に取り組むのである。
 
こうしたシルバー世代の環境保全ボランティアは、リサイクルの複雑なメカニズムを理解しているわけではないが、しかし一つ一つの分類作業が「地球環境を大切にする」ことにつながるのだということを知っている。また「年を取ってもまだ役に立つ」という自己肯定感を持ち、老いて社会のお荷物となるのではなく、人生の価値を発揮し続けることができる。
 
「ゴミ」というものはない、利用されない「資源」があるだけだ、と環境保全の専門家は言う。新北市の慈済双和リサイクルセンターでは、近年大量のカセットテープ、ビデオテープを回収しているが、ボランティアたちはそれらをネジ、硬質プラスチック、軟質プラスチック、紙、PPフィルムなどに「大分解」する。多くの物はこのように「分解しなければゴミ、分解すれば資源」なのだ。
 
    

近所のリサイクルセンター

 
梁碧恋おばあさん、高阿葉おばあさんのような慈済環境保全ボランティアは、この二十八年間に台湾全国で九万人近くまで増えた。大小のリサイクルセンター、地域のリサイクル拠点は約九千ヶ所もある。
 
環境保全はすでに国際的な問題となっている。それは本質的に信仰、国境、年齢、言語を超えるものであり、敷居もないため、環境保全の理念に共感しさえすれば家の近所でも取り組むことができる。
 
新北市蘆洲区を例に取れば、同区の慈済ボランティアの八割が環境保全から入門したボランティアで、その後、より多くの社会奉仕活動に取り組むようになっている。環境保全に汗を流すことは、特に身体を動かす労働に従事する人々を引き付けるのであろう。彼らは単純に環境を大切にしたいと願い、また取り組むことに喜びを覚え、こうして途中で投げ出すことなくボランティアを継続している。
 
「環境保全に取り組むことは地球を大切にすることであり、子孫を大切にすることです。地球を愛し、人類を愛することなのです」。證厳法師の一言が皆を鼓舞し、日中時間のない人も、夜間に参加することができる。統計によると、慈済環境保全ボランティアのうち、六十五歳以上の高齢者の占める割合は約四割に上る。また会社員、研究者、更には前科者、ホームレスもおり、誰もが環境保全に取り組むことで新たな体験を得ている。
 
こうした環境保全旋風は台湾の奇跡と言っても過言ではない。證厳法師はこうした「大地の守護者」を特に愛惜し、平凡な庶民が仏の悟りを得ているという意味を込めて、彼らを「草の根の菩提」と呼んでいる。
 
三十年前、人々は経済発展に邁進し、環境破壊、環境問題を引き起こした。一九八八年、雑誌『タイム』の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に「危機に瀕した地球(Endangered Earth)」が選ばれ、この難題をどう解決すべきか世界中が考えるようになった。
一九九○年、證厳法師は台中の新民工商での講演へ赴く途中、夜市の屋台が撤収した後の通りにゴミが舞う光景を目にし、非衛生的で乱雑な環境を憂慮したことから、講演の際に「拍手をする両手で環境保全に取り組む」ことを呼びかけた。これが慈済環境保全の始まりであった。
 
環境保全は全ての人に関係しており、また誰もができることだ。慈済が環境保全を推進し始めた翌年の一九九一年、雑誌『遠見』はこれを「台湾最大の大衆運動」と評した。
 
 
 

環境保全上級版・根源から清らかに

 
二十年以上にわたる政府と民間組織の啓発により、台湾人のゴミの分類への意識や環境保全への自覚は向上した。今では多くの海外からの観光客は、台湾の街道が清潔であるという印象を持っている。
 
「根源から清らかに」という概念は證厳法師の分類・回収に対する上級版の呼びかけである。瓶や缶をリサイクルに出す際には各家庭でまずさっと洗い、その他のゴミや生ゴミが混入しないようにするのである。それは後続の環境保全ボランティアの整理やリサイクル業者の処理を容易にするためである。こうすることで環境保全ボランティアを労わり、リサイクルセンターの衛生を保ち、再生品の品質を高めることができる。こうした考えや方法は、環境保全作業の「精緻化」と言える。
 
目に見える環境保全を更に進化させたのが、「精神の環境保護」である。欲望を抑え、既に買ってある物、使用している物を大切にし、あまり使わない物、あるいは不必要な商品は買わないようにすることだ。現在の消費社会の趨勢を転換することは容易ではないが、少なくとも買い物の際に買い物袋や容器を持参することは難しいことではない。
 
さらに一歩進めると、精神の環境保護は菜食の推進へとつながる。統計によると、肉食に比べ、菜食は生産・製造過程の二酸化炭素排出量と水使用量がずっと少なく、物を大切にするだけでなく生命を守ることになる。菜食は衆生を保護する具体的な実践である。
 
長年天災・人災に苦しむ国に暮らす人々に比べ、台湾に住む人々は幸福である。證厳法師は日頃から平和に感謝し、行動で福を積むこと、日常生活には福を大切にし、福を造り出す多くの機会があることをボランティアたちに説いている。
 
 

デイケアで健康促進

 
慈済が「環境保全に取り組む」ことの意義は、「ゴミを分類し、リサイクルする」ことだけにとどまるものではない。慈済のリサイクルセンター、資源回収拠点は台湾全国の各地域に分布しており、きめ細かな回収を推進し、プラスチックを再生して衣類や靴、帽子、毛布などの繊維製品とし、環境保全意識を高める社会教育を行う以外に、「デイケア」と「地域長期ケア」の機能も合わせ持っている。
 
行政院衛生福利部は二○○五年から、「地域ケア拠点構築実施計画」の推進を開始し、地域運営、自主参加を基本精神に、民間組織が地域ケア拠点を設置し、地域で初歩的なケアサービスを提供することを奨励している。
 
政府の施策に先んじて、慈済リサイクルセンターはすでにデイケアの機能を発揮している。退職した高齢者や障害者が日中やって来て回収品の分類を行うことで、人と触れあい、気の合う仲間とおしゃべりをする機会が得られる。これは家族にとってよいだけでなく、本人にとってもよいことで、多くの人がリサイクルセンターが生活の意義を感じられる心のよりどころとなり、「人生の第二の春」に巡りあえたと述べている。
 
近年、一部の慈済リサイクルセンターは政府機関と提携し、正式に「地域ケア拠点」の名称を掲げ、高齢者の健康促進等のサービスを提供している。嘉義慈済大林病院の林名男副院長は、慈済リサイクルセンターの機能の深化は、サービス対象の拡大、長期ケアサービスという主旨において、衛生福利部の推進する長期ケア2.0目標と一致するものだと考えている。
 
證厳法師は、リサイクルセンターは高齢者に豊富な人生経験を発揮してもらう場所であり、また若者が教えを受ける場でもあると述べた。つまり高齢化社会にある台湾における、最良の「共に安心して年を取る」、「年齢を問わず共に学ぶ」地域拠点であるということだ。
 
 

世界から認められる台湾環境保全

 
慈済環境保全の「十指口訣(語呂合わせ)」の「瓶瓶缶缶紙電一三五七」とは、十種類のリサイクル品目を表しており、誰でも口ずさんで簡単に覚えられる。また證厳法師は慈済環境保全が台湾社会に影響を与えることを期待して「環境保全七化」も呼びかけている。
 
 
「リサイクル十種の合い言葉」とは何を指していますか?
答‥それは「瓶瓶缶缶紙電一三五七」のことです。最初の瓶はペットボトル、次の瓶はガラス瓶、三番目の缶はアルミ缶、その次の缶は鉄缶、紙は古紙類、電は電池と電灯を指しています。続く「一」は衣類、「三」は三C製品、「五」は金属類で「七」はその他の資源を意味します。
 
「環境保全七か条」とは何ですか?
答‥若年化、生活化、知識化、家庭化、心霊化、精密化、健康化により環境保全を推進することです。大地を浄化するにはまず自分の心身を清めることが大切なのです。(訳・明陛)
 
 
慈済リサイクルセンターは、目で見え手で触れることのできる堅実な運営方針が、二十八年の間に台湾の重要な環境保全の模範教材となり、さらに意図せずして「環境保全外交」も成し遂げている。多くの海外の来賓や環境保全の専門家がリサイクルセンターを見学に訪れ、台湾を知るきっかけともなっている。
 
台北市内湖の慈済リサイクルセンターを例にすると、慈済の環境保全の理念とモデルを学びたいと、外国人の見学回数は年々増加し、二○一八年十月末には約三百五十回、延べ一万人以上が訪れた。中でもシンガポール、中国からの来賓が特に多くなっている。
 
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(The Wall Street Journal)は二○一六年、「かつてゴミの島と言われた台湾が、現在では資源リサイクルの国際的な模範となっている」と報道した。近年、慈済ボランティアは幾度も国連の関連会議等、国際的なイベントに招かれ、慈済環境保全の経験と成果を紹介している。小さな台湾という島の環境保全意識は、広く海外の人々から認められている。
 
先日国連が発表した気候調査報告では、温暖化が今のまま進めば、二○三○年頃には摂氏一•五度という「温度上昇限度」を超え、回復できない地球の大災難を招くと述べている。つまり人類が温暖化を挽回する時間は、わずか十二年しか残されていないということだ。
 
三十年前、パーソン・オブ・ザ・イヤーとなった「危機に瀕した地球」は、今でも相変わらず問題の焦点である。こうした事態を招いた責任を、私たち一人ひとりが自覚しなければならない。
 
現実の状況から見ると、慈済の環境保全推進は「愚公山を移す」というたとえのようである。消費習慣、ゴミ廃棄の習慣が変わらなければ、リサイクルはゴミの増加の速度に追いつかない。
 
證厳法師は、環境保全問題は一つの県や市、国の問題ではなく、グローバルなものであり、慈済ボランティアが先頭に立ち、台湾から環境保全のモデルを示し、世界中に推進し、誰もが「共通認識を持ち、共に実践」してこそ人類の未来に希望を見出せると述べた。
 
 
回収物質換算図
環境保全ボランティアは地球を守るという前提のもとに、回収物の分類作業を多岐にわたって進めている。
その中の古紙類ペットボトルを例にとり、回収量を同等の物資に換算してみると:
慈済が1995年から2017年までに
回収した古紙類の総重量は
13億万6235万617KGで、
20年の大樹27,247,123株を救ったことになる。
 
 
ペットボトル
78本で、長さ230センチ幅180センチ
重さ1KGのエコ毛布一枚を作ることができる。2017年は国内外に合計97,174枚を提供した
 
 
台湾における慈済の環境保全拠点と資源回収所 分布と数
 
台湾では
環境保全拠点計286 箇所
地域の資源回収所計8, 626 箇所 
合計8,912箇所
2017年末現在の台湾の慈済環境保全
ボランティア総数は88, 254人
 
 
海外では
2017年末までに世界16の国と地域に
環境保全拠点561か所設置
地域資源回収所10, 267か所設置
環境保全ボランティア106, 299人が
リサイクル活動に投入している。
 
◎地域の資源回収所:地域の民衆は慈済の環境保全理念に同意し、慈済ボランティアの呼びかけに応じて、決められた場所で、定時に資源を回収して環境保全拠点に送り、物の寿命を延ばしている。
◎ 環境保全拠点:慈済の地域道場であり、各地域の回収所からの回収物が集まる場所である。なお一般大衆にも開放している。
 

各地に根ざす 慈済の環境保全

日常生活で発生するリサイクル可能な資源は決してゴミではない。慈済環境保全ボランティアは、「資源」を求めて台湾全国の街角、商店や市場、山や海岸に出没する。海外の慈済環境保全ボランティアが日頃行っていることも台湾と変わらない。
 
環境保全は自発的に取り組んでおり、一円たりとも労賃はない。一般庶民であるボランティアは、環境保全の尖兵として、悪臭を厭わず、嫌な顔をされてもその志を変えず、地球温暖化を少しでも遅らせようと日夜汗を流す。
 
現在の消費社会のゴミの量は膨大で、環境保全ボランティアの負担は増えることはあっても減ることはない。しかし人々が日常生活の中で分類に気を使うだけで、大衆の力がバタフライ効果を生み、環境を改善できるのだ。
 
 
 
 

価格ではなく 価値を重んじる

慈済リサイクルセンターで回収する品目は多様である。しかし大事なのは「量」や「利益」ではなく、より多くの人々に環境危機への自覚を促し、環境保全のための生活実践を呼びかけることだ。
 
回収する資源のうち、ガラス瓶、ビニール袋、紙製容器などは、売っても利益があがらないため、廃品回収業者も回収したがらない物だ。
 
こうした物品は実は資源であるにもかかわらず、市場での「価格」がないため回収「価値」のないゴミとされる。地球を愛する環境保全ボランティアがそれらを回収し、分類し、回収業者に買い取ってもらい再利用するのでなければ、燃やせるかどうか、有害物質を発生させるか否かにかかわらず、最終的にはゴミとして土に埋められるか焼却炉で処分されるしかないのだ。つまり環境汚染を次の世代へ伝えることとなるのである。
 
 
 
 

地域のリサイクルセンターは長期ケアの重要拠点

リサイクルセンターに到着すると、時にはついでに血圧を測ることもあり、それから椅子に座って資源を分類しながらラジオの法話を聞く。休み時間はお菓子を食べ、水を飲み、昼食を終えると引き続き分類を続けたり、読書会などの活動に参加したりする人もいれば、帰宅して一休みし、家族の夕食の準備をする人もいる。リサイクルセンターでのボランティアの一日はこんな風だ。
 
分類する回収品の品目は多種にわたり、力仕事もあれば細かい作業もある。シルバー世代の環境保全ボランティアの行動はゆっくりしているが、辛抱強さと根気は一流である。また脳血管障害の後遺症のある人や、行動不自由な人にとっては、環境保全がリハビリの一環となってている。
 
一日の労働を終えると、夜はぐっすり眠れる。地域の友人を作ることもでき、日頃から互いに労わり合い、誰かがリサイクルセンターに来なければ電話をかけて様子を尋ねる。よい事をすれば心楽しく、身体を鍛えることもでき、認知症のリスクを減らすことにもつながる。慈済リサイクルセンターはかねてより一貫して地域で長期ケアの機能と役割を担い続けている。
 
 
 
(慈済月刊六二五期より)
NO.266